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ポストコロナは、男女がともに子育てにも仕事にも前向きに取り組める社会に

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2021/07/30

今、子どもたちは、コロナ禍における二度目の夏休みを迎えています。新型コロナウイルスは子どもの日常にも大きな影響をもたらしてきました。長期休校、部活動や行事の中止・縮小などに加え、「ソーシャル・ディスタンス」によって人との触れ合いの機会が減るような生活が長期化し、子どもの心身の健康への影響も心配されています。ワクチン接種の加速でコロナ禍終息への期待が高まっていますが、一日も早く、子どもたちが日常を取り戻せることを願わずにはいられません。
今回は、私が、今の子どもたちが活躍する時代でもあるポストコロナの社会づくりに期待することをお話します。

コロナ禍で露呈した日本の男女格差

新型コロナ感染拡大で、非正規労働者を中心に雇用情勢が急速に悪化する中、その影響が男性に比べて女性により重くのしかかっている実態が明らかになりました。大きな打撃を受けた飲食、宿泊などの産業で働く人に女性が多く、またそうした産業に多い非正規労働者にも女性が多かったことが影響しました。失業やシフトの減少で生活が困窮した女性が少なくありませんでした。コロナ禍は、とりわけ雇用における日本の男女格差の存在を改めて浮き彫りにしたと言えるでしょう。
雇用における男女格差を生み出している原因のひとつとして挙げられるのが、日本の高度成長期を支えてきた「男性は仕事、女性は家事・育児」という固定的な性別役割分業意識の存在です。今、日本の世帯の様子は当時とは変わっています。一人親世帯や単身世帯が、そして女性も働き家計を支える共働き世帯も増えています。従前のように、男性の雇用を守りさえすれば、女性の生活も守られるだろうという認識は改める必要があります。

男女がともに、子育てにも仕事にも前向きに取り組める社会に

固定的な性別役割分業意識が日本社会に根強く残るというお話をしてきましたが、働き手の意識には既に変化が見えています。今、若い世代を中心に、仕事か家庭かの二者択一ではなく、仕事にも子育てにも前向きに取り組みたいとする人が増えています。私はこのような働き手を「フルキャリ」と呼んでいます(注)。これまでの世代にも「フルキャリ」志向の人はいたと思いますが、それを叶えることが難しい社会だったことで、仕事重視の「バリキャリ」か、家庭重視の「ゆるキャリ」かのどちらかを選ばざるを得なかったと言えるでしょう。
経済活動が回復すれば、日本の人手不足は再度深刻化するでしょう。出生率の低下も止まりません。ポストコロナ社会として目指す姿の一つは、今回のコロナ禍を機に、日本社会の根底にあった固定的な意識、それに基づいた制度や慣行を見直し、性別によらず、希望する人が過度な負担なく働き続けながら、ライフイベントを送ることができる社会だと考えます。このような社会づくりは、当事者たちの希望を叶えることだけにとどまらず、先に述べた人手不足解消、少子化克服にもつながり、全ての世代が今後も希望をもって暮らせる社会づくりでもあるのです。
夏休みと言えば「宿題」。子どもの未来のため、私たち大人に託されている宿題には早めに取り組み、早めに終わらせたいところです。

(注)暮らしにも子育てにも、仕事にもキャリアにも、意欲的に取り組みたいと考える働き手の総称。2015年に野村総合研究所が提唱。

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