フリーワード検索


タグ検索

  • 注目キーワード
    業種
    目的・課題
    専門家
    国・地域

NRI トップ ナレッジ・インサイト コラム コラム一覧 DX時代のITアーキテクチャー設計(1)DXの成否を分ける2つの要素とは?

DX時代のITアーキテクチャー設計(1)
DXの成否を分ける2つの要素とは?

2022/10/14

  • Facebook
  • Twitter
  • LinkedIn

DXを実現し、ビジネスを変革し競争優位性を高めることは、どの企業でも求められています。一方、DX時代に求められるシステムを構築するには、従来とは別の発想でアーキテクチャーを設計する必要があります。今あるシステムをどう置き換えていくのかも課題です。

そこで本記事では、野村総合研究所(NRI)で企業のDX化に向けてITアーキテクチャー構想の支援を担当する2名のシステムコンサルタント(齋藤、鶴田)により、DX時代のITアーキテクチャーを題材に、3回に分けて座談会形式でお届けします。第1回目は、DXに求められるITアーキテクチャーとは何か、従来システムとの違いや検討時のポイントについて解説します。

座談会メンバー

ITアーキテクチャーコンサルティング部 齋藤 大:
2008年、NRIに入社。金融系基幹システムの新規構築・エンハンスを経験。
2017年より、システム化構想・計画の策定やDXアーキテクチャー設計、PMO支援などのコンサルティング業務に従事。専門は、基盤を中心としたシステム化構想・計画立案。

ITアーキテクチャーコンサルティング部 鶴田 大樹:
2009年NRI入社。クラウドサービスや金融機関基幹向けサービスなどのシステム開発・エンハンス経験を経て、現在はシステム化構想・計画策定、PMO支援などコンサルティング業務に従事。専門はシステム化構想・計画立案と実行支援。

DX時代に求められるITアーキテクチャーとは?

――従来と何が異なるのか?

齋藤:
NRIでは、DX(Digital Transformation)を「企業が、データとAIやIoTを始めとするデジタル技術を活用して、製品やサービス、ビジネスモデルそのものを変革するとともに、業務やプロセス、組織、企業文化、風土をも変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義しています。

鶴田:
DX時代に求められているのは、お客様の要望をいち早く掴んで、それを素早くビジネスに反映していくことです。Amazonでは、10年前でも10秒に1回程度の頻度でシステムをリリースしていると言われていました。
一般的な企業にそこまで求められるのかという意見もあるかと思いますが、競争優位性を保つためには必然の動きです。それは最近のスマホアプリの頻繁なアップデートを見てもお分かりいただけるかと思います。

――DX時代に、ITシステムに求められる役割は何か?

齋藤:
従来のITシステムは、主に社内業務の効率化を目的として導入されてきました。人手で行っていた業務をコンピューターに代替させるというものです。しかしながら、最近は、インターネットやAI技術の発展に伴い、「顧客への価値の提供」という新たな目的が加わり、その方向性にどんどんシフトしています。

鶴田:
例えば、ここ数年コロナ禍でECサイトや動画配信サービスの利用が急速に伸びていますが、こうしたものは単にサービスを提供すればよいというものではありません。サービスの利用者がそのサービスをどう評価するか、利用者の声をいち早く取り入れて、改善を繰り返していかないと利用者が離れてしまう。そういう時代なのだと考えています。

DXで直面するアーキテクチャー上の課題

――DXを進める上で課題は何か?

齋藤:
DXへの取り組みにおける課題の一つは、レガシーシステムの改修です。レガシーシステムが足かせとなってDXに取り組めない企業が多いのです。2020年にNRIがJUAS(*1)と共同で行った調査では、8割の企業が「レガシーシステムの存在が、デジタル化への進展への対応の足かせになっている」と感じています。

  • (*1)

    JUAS: 一般社団法人日本情報システム・ユーザ協会。JUASは Japan Users Association of Information Systemsの略

鶴田:
レガシーシステムではシステム改修に時間と費用を必要とします。実際に支援したお客様の例では、老朽化したシステムの改修に数年の期間と数十億円の費用がかかったケースがあります。レガシーシステムについては様々な問題がありますが、アーキテクチャーの観点では、先ほどお話しした利用者の声をいち早く取り入れて改善を繰り返していくことが難しい状況であることが大きいです。

齋藤:
レガシーシステム単独の問題だけではなく、新しいシステムで新機能を開発しようとしても、レガシーシステムとの連携が進まずに機動的な開発が難しいという声も多数聞いています。

――レガシーシステムにどのように取り組めばよいか?

鶴田:
古いからといって、全てのシステムを刷新してしまおうと考えるのは早計です。費用対効果を考えると効果が出やすい部分に絞って刷新するのが現実解となるでしょう。では、効果が出やすい部分とは、どの部分のことなのか。私は、会社の事業戦略に沿った形で、ビジネス価値の高いものから取り組んでいくべきだと考えます。現行システムでビジネス部門からの要求にどの程度応えられているのかという観点で対象を決めるとよいでしょう。

齋藤:
何をもってビジネス価値が高いかは、企業の事業戦略によって異なりますが、一般的には、オンラインショップのような顧客に直結しているシステムはビジネス価値が高いといえます。一方、勤怠管理システムなど社内向けのシステムは優先度を低くしてもビジネスへの影響は大きくないでしょう。

DXの成否を分けるITアーキテクチャー設計

――DX時代のITアーキテクチャー設計に求められる要素は何か?

鶴田:
ITアーキテクチャー(デジタルアーキテクチャー)を設計する際に、重視すべき要素として、大きく2つあります。1つは「スピード・アジリティ」です。スピード・アジリティとは、市場や顧客の変化に合わせて迅速かつ柔軟に対応できるということです。

もう1つは「データ活用」です。企業が大きくなればなるほど、組織間でデータのサイロ化が起こりやすくなるため、組織の壁を越えて横断的にデータを使えるようにしていく必要があります。この2つの要素をITアーキテクチャーに落とし込んでいくことが重要です。

齋藤:
一方でレガシーシステムをどう扱っていくべきかを考える必要があります。既存システムが現状どうなっているのかを理解した上で、レガシーシステムの塩漬けなども考慮しつつ、DXで求められる要素とどう共存させるのかを考えていくべきでしょう。

まず、現状を可視化し、今後のあるべき姿をどう実現していくのかという「システム化構想」を策定する必要があります。

――システム化構想の上で気をつけたいことは?

鶴田:
DXに向けたシステム化構想では、従来とは全く異なる思考法をとります。従来は検討する際、まず現在のシステムの課題を洗い出し、現在の延長線上で構想を描いていくことが多かったです。しかし、DXでは既存業務の延長線上で捉えるべきではありません。DXでは、まず目指したい姿を描くことから始めます。そして、現在のシステムとのギャップを見極め、それをどのように埋めていくのかを考えるバックキャスティングの考え方をとるのがよいでしょう。

齋藤:
実際にご支援した経験から申しますと、DXのシステム化構想では、「ビジネス側の要求の変化にどう迅速に対応するか」がポイントになります。システムはビジネスのスピード感にあわせて作り替えていかなければならないのですが、従来のITアーキテクチャーでは、要件を受けてからシステム開発に着手しても間に合わないことがあります。ビジネス側の要件に対するシステム側の対応が遅れ、システムがビジネスの足手まといになりかねません。そうなってしまわないよう、変化に強いITアーキテクチャーに作り替えなければなりません。

鶴田:
どういう体制で構想を進めていくか、も鍵となります。DXのシステム化構想は、特定の1システムのみで実現出来るものではなく、全社横断の取り組みとなります。そのため、早い段階で経営層を巻き込み、一部の限定した活動としてではなく、全社のDXに対する取り組みの一つとして位置付ける必要があります。

まとめーDX時代のあるべきITアーキテクチャーとは?

鶴田:
DX時代では、社内業務の効率化ではなく、「顧客への価値の提供」を重視する必要があります。「顧客の要望」をいち早く掴んで、それを素早くビジネスに反映していくことが求められます。ポイントは「スピード・アジリティ」と「データ活用」です。今あるレガシーシステムの現状をしっかり把握した上で、この2つをバランスよく共存させていくことが望ましいです。

齋藤:
DXの実現にあたっては、「システム化構想」の策定が必要です。まず目指す姿を描き、そこから現状までのギャップをバックキャストして埋めていくというやり方で考えます。システム化構想は、どういう体制で構想を進めていくか、も鍵となります。

NRIではこうしたシステム化構想の支援として、「デジタルアーキテクチャー構想サービス」を提供しております。レガシーシステムをどう改善するかを含め、初期の検討段階から、設計・開発・運用までの全工程をワンストップでご支援できます。
https://www.nri.com/jp/service/scs/dx/digital_architecture

次回予告

今回は、DXのITアーキテクチャーの概要や課題、検討する上での重要となる2つの要素「スピード・アジリティ」と「データ活用」をご紹介しました。次回以降では、これらの要素を深堀していきます。 実際に導入を進めた企業が、進める上で生じた課題なども整理して、わかりやすくお伝えしていく予定です。

執筆者情報

  • 齋藤 大

    ITアーキテクチャーコンサルティング部

    エキスパート

  • 鶴田 大樹

    ITアーキテクチャーコンサルティング部

    エキスパート

  • Facebook
  • Twitter
  • LinkedIn

DXブログの更新情報はFacebook・Twitterでもお知らせしています。

新着コンテンツ