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「DX相談ルーム」

デジタルリーダーとは?求められる人材と育成方法:デジタル人材編

2022/12/07

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デジタルビジネスを成功させるには、様々な専門性を持った人材の力が必要になります。例えば、プロダクトマネージャー、データサイエンティスト、AIエンジニア、UXデザイナーなどです。私たちは、このような人材を「デジタル人材」と呼んでいます。この中で、最も重要なポジションが「デジタルリーダー」です。多様なデジタル人材から成るチームをまとめ上げ、経営陣などの関係者を動かし、デジタルビジネスを成功に導く要となる存在です。デジタルビジネスの成功は、デジタルリーダーの手腕にかかっていると言ってよいでしょう。

今回のご相談は、この「デジタルリーダー」に関するご相談です。

「DX相談ルーム」では、DX推進担当者と、NRIのコンサルタントの対話を通じて、DXに関して、多くの方が抱く悩みや疑問にお答えしていきます。
※ 聞き手は架空の人物です。

聞き手:機械製造業大手A社 近藤氏
近藤氏は、製造業A社に勤務する中堅社員です。A社は消費者向けの製品を製造・販売している大手上場企業でしたが、消費者と直接つながるデジタルビジネスを展開していくことになりました。それを受けて、近藤氏は社長直属のDX推進部の配属となり、デジタルビジネス開発の推進担当者に任命されました。

話し手:コンサルタント 中川 裕貴
2012年、NRIに入社し、システム開発上流工程(構想、計画)、システム開発時のユーザ側活動(要件定義、業務移行、受け入れテスト)及び大規模開発PMO等のITコンサルティングに従事。現在はICTを活用した事業変革・新事業創造、IT/デジタル人材確保・育成、業務改革・業務改善などのコンサルティングに従事

Q1:デジタルリーダーは、外部から採用できるか?

近藤氏
ご相談したいのは、デジタルリーダーについてです。会社としてデジタルビジネスは初めてなので、社内に経験者はいません。そこで、外部から採用したいのですが、なかなかいい人材が見つかりません。

中川
デジタルリーダーはどの企業も欲しがっているので、難しいかもしれませんね。私は、外部から専門の人材を採用するよりも、社内で育成することをおすすめしています。

近藤氏
デジタルリーダーは専門職だと思うのですが、外部ではなく社内から探した方がよいのはどうしてでしょうか。

中川
本格的にデジタルビジネスを推進していくためには、従来の体制ややり方ではうまくいきません。新しいことをやるのですから、関係者のさまざまな利害を調整し、経営者を動かして、必要であれば、既存のビジネスモデルや組織、さらには企業文化まで変革することが求められるからです。
したがって、各事業の内容や位置づけ、社内の業務や利害関係、組織や文化を深く理解している社内人材の方がより早く活躍できるようになると思います。

外部から採用した場合は、これらを早く理解できるように支援してあげるのがよいでしょう。

近藤氏
確かにそうですね。でも、事業部にはビジネスがわかる人間はいますが、ITがわからない。一方、IT部門ではビジネスがわからない。ビジネスとITの両方というと、あてはまる人材がいないのです。

中川
おっしゃる通り、デジタルリーダーには様々な経験やスキルがあった方が望ましいです。確かに、すべての条件を満たす人材を社内で探すのは難しいと思われるかもしれません。でも、ある程度の条件を満たす人であれば、社内で育成すれば充分に戦力となります。

Q2:デジタルリーダーの候補者には、どういう人が向いているか?

近藤氏
具体的にどういうスキルや経験をもった人材が適しているのでしょうか?

中川
例えば、デジタルリーダーは、新規事業創発の際の「サービスデザイン」を主導する力が求められます。そのため、既存サービスの立ち上げを経験された方は候補者の一人となりえます。

また、多様なメンバーをまとめ上げ、チームの成果を最大化させることも求められます。サービス立ち上げの経験がなくても、自らの思い・ビジョンを語ることができ、メンバーとの信頼関係を構築できる能力に長けた人は活躍が期待できます。

近藤氏
そういった話であれば、社内でも心当たりがあります。ただ、彼らはこれまでデジタルとはかけ離れた仕事をしてきた人間ばかりです。大丈夫でしょうか?

中川
はい、大丈夫です。ただし、注意すべき点があります。それは、候補者の方の「デジタルマインド」の問題です。

近藤氏
デジタルマインドとは何ですか?

中川
デジタルマインドとは、デジタルビジネスへの興味・関心やモチベーションのことを指します。既存事業で成功体験がある人が、必ずしもデジタルに興味があるとは限らず、むしろ、担当になってはじめて意識されるケースの方が多いでしょう。

リーダーが、デジタルビジネスに対する興味や熱意を持っていなかったり、従来のやり方に固執したりしていると、成功は期待できません。リーダーになる人は、まず自分自身の意識を変えることから始めなければなりません。

Q3:デジタルリーダーの意識を変えるには?

近藤氏
でも、自分の意識を自ら変えるのは難しそうですね。リーダーの意識変革を促すためには、どのようなことを行ったらよいでしょうか。例えば、「このままでは会社が危ない」というような危機感を抱かせて、奮起させる方法がよいのでしょうか?

中川
そうですね。危機感を抱かせることは効果的です。ただ、ネガティブな感情だけでは人は動きません。「デジタルって面白い」というポジティブな感情も必要です。「これを使って社会や会社をこんな風に変えたい」というワクワクした気持ちを持たせることも重要です。

デジタルの面白さや可能性に気づいてもらうためには、デジタルを体感してもらうのが効果的です。デジタル技術が使われている機器やサービスに実際に触ってもらったり、デジタルビジネスの開発現場で採用されているデザイン思考やアジャイル開発を体験してもらったりする場を設けてはいかがでしょうか。

近藤氏
体験を通じて体で理解するということですね。

中川
手前味噌になってしまうのですが、NRIではデジタルリーダー育成研修を行っています。先ほど申し上げた「体験」を重視したものから、NRIのコンサルタントと一緒にビジネス開発の疑似体験するものまで行っています。

Q4:デジタルマインドはスキル習得よりも重要か?

近藤氏
お話を伺っていると、「マインド」はデジタルスキルの習得よりも重要な要素であるという印象も受けてしまいますが・・・どんなにやる気があってもスキルが伴わないとついていけないのではないでしょうか。

中川
デジタルビジネスの立ち上げは0→1を作る活動なので、マインドはなによりも重要です。様々な障害を乗り越えなければならないので、マインドがない人にはやりぬくことが困難だと思います。

近藤氏
では、マインドを持ったデジタルリーダーはどんなスキルを持つべきなのでしょうか。

中川
おっしゃる通り、デジタルリーダーには幅広いスキルが求められます。NRIでは、デジタルリーダーの要件を、ビジネス、テクノロジー、ヒューマンの3つの領域11のスキル(〇〇力)に整理しています。

Q5:デジタルリーダーはスーパーマンでなければならないのか?

近藤氏
ちょっと待ってください。これだけの要件を全て満たすなんて、まるでスーパーマンじゃないですか。

中川
確かに要件だけを見ていると、スーパーマン級のものを要求されているようにも見えてしまいますね。でも、ご安心ください。デジタルリーダーに求められる領域は広いですが、全部を専門家レベルまでマスターする必要はありません。
企業の目的やデジタルリーダーのミッションによって、必要とされるスキルの種類や程度が異なってくるからです。つまり、デジタルサービスを新たに開発したい場合、既存のビジネスで顧客満足度を飛躍的に上げたい場合、社内の業務プロセスを大きく変革したい場合などで、デジタルリーダーに求められるスキルは異なってきます。私たちがご支援する場合でも、それぞれの企業でどのようなデジタルリーダーが必要なのかを一緒になって考えるところから始めています。

近藤氏
少し安心しました。デジタルリーダー像を決めた後、どういった研修メニューを用意すればよいのですか?

中川
先ほど申し上げたデジタルリーダー研修では、デジタルビジネスの企画提案をやっていただきます。事業計画書を作成し、それらを経営陣に対して提案してもらいます。できるだけ現実に近い状況を用意することによって、参加者のスキルを高めていくのです。

研修ではありますが、ビジネスとして検討を進める可能性もあります。過去の研修では実際にそういう場面があり、非常に緊張感のある研修でした。

近藤氏
経営陣からも期待されているのですね。

Q6:デジタルリーダー育成に必要なバックアップ体制は?

近藤氏
デジタルリーダーを本気で育てようと思ったら、かなり大がかりなバックアップ体制が求められそうですね。

中川
はい、その通りです。事業部、IT、経営企画、人事など、様々な部門のサポートが必要になります。

近藤氏
なんと。それではもう、ほぼ全部門じゃないですか。

中川
そうですね。会社をあげて育てていくという姿勢が大切です。デジタルリーダーの場合、実際にビジネスを立ち上げ、運営していくことで自身も成長していきます。したがってある程度長い目で見守っていかなければなりません。

短期的な成果を求めるあまり、成長機会をつぶしてしまう例もよくあります。ビジネスにスピードは大切ですが、目先の結果だけを追い求めてしまうと、新しいビジネスの芽をつんでしまうことになりかねません。

Q7:デジタルリーダーを目指すがやるべきことは?

近藤氏
いままで、デジタルリーダーの選び方や育成方法について会社側の視点でお聞きしていましたが、リーダー自身がやっておくべきことは何かありますか?

中川
そうですね。いろいろありますが、まずデジタルテクノロジーの魅力や可能性を体感してみることですね。会社がなにかやってくれるのを待っているのではなく、自発的に新しいサービスや機器を使ってみたり、社外のコミュニティに参加して、デジタル化や新事業開発に携わっている人と出会って研鑽しあったりすることから始めるのがいいと思います。とにかく、異文化に触れて、日常業務では得られない刺激を受け、視野を広げることによって、既存の枠を超えるようなものの見方を身につけることです。そうやって、デジタルマインドとスキルを高め、提案して会社を動かすくらいの意気込みがあれば、どんどん成長できると思います。

近藤氏
おっしゃる通り、自分から動くことが大事なのですね。

中川
そうです。デジタル技術はあくまで手段なので、最新情報をいくら集めてもビジネスにはつながりません。いつのまにか、デジタルという手段だけが先行してしまう人が実に多い。デジタル体験をビジネスの課題解決に結びつけて考えることを常に意識してください。

近藤氏
耳の痛い話です。いつのまにか手段が目的化してしまう。私もそうならないように心がけようと思います。

中川
あと、デジタルリーダーを目指す上で必要なのは「仲間作り」ですかね。

近藤氏
先ほどおっしゃった、社外のコミュニティに参加して人脈を作ろうということでしょうか。

中川
今度は社内に目を向けて、自社の経営陣や事業部門などとの「仲間作り」です。

デジタルビジネスは、基本、様々な組織をまたぐテーマになります。それなのに、実績がまだないので、社内の協力が得られないことも多いです。デジタル活動の当初は反対してくる人、意味がないという人、無関心な人もいるかと思います。いえ、むしろそういう方の方が多いかもしれません。

近藤氏
つまり、自分自身のスキルや経験値をあげるだけではどうにもならないことなので、仲間の協力が必要だと、そういうことですか?

中川
はい。自分の思いを伝えるとともに、彼らの悩みにも寄り添いながら、社内に理解者や協力者を増やしていくという地道な活動も必要になります。

おわりに

今回は、デジタルビジネス立ち上げのキーパーソンとなるデジタルリーダーの育て方についてお話ししました。デジタルビジネスでは、従来のビジネスで成功したやり方や文化を破壊(ディスラプト)することも必要になります。会社は一気には変わりませんので、まず社員の間にデジタルマインドを浸透させることから始めてはいかがでしょうか。

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