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PoCとは?

~新サービス検証の進め方~

2022/12/12

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DX時代といわれる昨今では、新サービスの本格開発をする前に、その効果などを検証する目的でPoC(Proof of Concept=概念実証)を行う企業が一般的になっています。一方、「どのように進めていいのかわからない」という悩みもよく聞きます。ついには、落とし穴にはまって抜け出せない状態になり「途中で挫折してしまった」ことも少なくないようです。

そこで、本記事ではサービス開発の現場でPoC支援を行っているコンサルタントが、「新サービスを着実に市場投入まで導くための」現場で役立つ実践ノウハウを2回にわたりわかりやすく解説します。

執筆者プロフィール

武内 麻里亜:
2010年野村総合研究所(NRI)入社。専門領域は不動産業界を対象とした新サービス検討支援、システム化構想・計画の策定支援、業務改革、PMO支援。顧客企業に寄り添った支援を得意とする。

はじめに

こんにちは、野村総合研究所のシステムコンサルティング事業本部の武内です。私は主に不動産業界のお客様に向けて新サービス開発のご支援を行っています。今回は、新サービスの検討を支援してきた経験を踏まえて、PoCの進め方をご紹介します。

PoCとは

新サービス開発では、まず新サービスの種となるコンセプトやアイデアを考え出します。ただアイデアの段階ではまだぼやっとしている点が多く、市場に出せる商品やサービスに育てるためには、多くのことを確かめたり、決めたりする必要があります。そのために行うのがPoC(Proof of Concept=概念実証)です。PoCは、新サービスのコンセプトやアイデアの一部を具体的な形にして、それを用いて新サービスの実現可能性を確かめる(検証する)という活動です。

PoCは、ITに限らず、映画製作や新薬の研究開発など様々な領域で使われてきた用語ですが、DXに取り組む企業が増えるにつれて、ビジネス現場での新サービス検討を進める際の検証活動をPoCと呼ぶことが増えてきました。

PoCの進め方

PoCは大きく2つのフェーズに分かれています。新サービスの何を検証するのか(検証項目)を設定するフェーズと、新サービスのコンセプトをユーザーにぶつけて、検証項目の実現性や期待できる効果を検証するフェーズです。

1)検証項目の設定

新サービスのコンセプトを検証する場合、通常、3つの観点から検証を行います。

①価値実証

ユーザーにとって価値があるかを検証します。検証項目には、利用してみたいか、利用者の問題を解決できそうかなどを設定します。

②技術実証

技術面・業務面・システム面などの仕組みの実現性を検証します。検証項目には、想定している仕組みでサービスが目標品質(画質、応答スピード、画像認識率など)を実現できそうかを設定します。

③事業性の検証

事業として収益が見込めるかを検証します。検証項目には、サービスの開発・運用にかかる費用、サービスの価格や需要量などを設定し、試算を行って投資対効果を確かめます。

検証項目の設定では、あるひとつの観点だけに偏らないようにしましょう。また、サービス開発の進み具合やその時の課題を踏まえ、どの観点で何を優先的に検証すべきかを決めることも重要です。例えば、初期段階で、ユーザーのニーズを満たすコンセプトかどうかが分かっていない場合、まず価値実証を行うのがいいでしょう。ユーザーにとって価値があることが確かめられたら、技術実証や事業性の検証を行って、サービスの実現性を確かめていきます。

ここでサービスを早くリリースしたいと急ぐあまり、3つの観点の検証を一度に行おうとしてはいけません。同時にやってしまうと、何のために検証して、その結果どうなったのかの因果関係があいまいとなり、判断しづらくなってしまうからです。螺旋階段を登るように、3つの検証を繰り返しながら、サービス案を改良していくのがよいでしょう。

2)検証の実行

検証項目を設定したら、次は実行フェーズに移ります。サービス検討初期段階では、プロトタイプを作成し、それをユーザーにぶつけて反応を見ながら繰り返し検証を行います。検証スピードを上げるため、サービス内容が伝わる紙芝居(ストーリーボード)やスマホアプリ画面のスケッチ(ぺーパープロトタイプ)など、手早くできるものを作ります。

後期になれば、実際にサービスを体験できるような本格的なプロトタイプを開発します。この段階になると、実際の売り物・売り場を準備して試験的に販売するといった、少し大掛かりな検証を行うこともあります。

例えば、「集合住宅の共用部で食品を販売するサービス」であれば、実際に商品を並べてテスト販売してみて、居住者の利用状況を分析したり、アンケート調査を行ったりします。想定した利用率や販売額を上回れば一定の事業性が検証できたということになります。また、結果が思わしくなく、アンケートで通信販売の方が人気が高ければ、通信販売型のサービスに切り替えて、検証を継続します。

ユーザーの反応を得た後は、検証結果を踏まえサービス案を修正し、次の検証へと進みます。

終わりに

いかがだったでしょうか?本記事では、新サービス開発にあたってのPoCの進め方を解説しました。

PoCの進め方には大きく2つのフェーズがあると説明しましたが、どちらのフェーズにおいても、目的と優先順位を意識しながら取り組んでいくことが大切です。Step by Stepで効率的に検証を進めていきましょう。

一方、これらをセオリー通りに進めていったとしても、途中工程でPoC特有の落とし穴にはまってしまうことがあります。次回は、どういう問題(落とし穴)が待ち受けているのか、それを回避するための実践ノウハウについて解説する予定です。

執筆者情報

  • 武内 麻里亜

    システムコンサルティング事業本部 産業ITコンサルティング二部

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