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日本企業のIT活用とデジタル化 - IT活用実態調査の結果から

第15回 IT費用の内訳 -新規開発への支出はどのくらいか

2024/05/30

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株式会社野村総合研究所では、2003年より毎年、売上高上位の国内企業約3000社を対象に「ユーザ企業のIT活用実態調査」を実施しています。この連載では、最新の調査から、いくつかの設問をピックアップして集計結果をご紹介します。日本企業のIT活用動向を知るとともに、自社のデジタル化および情報化の戦略を考える一助としてご活用ください。

注目される調査結果のエグゼクティブサマリーはこちら

前回は、日本企業において、IT投資予算の対売上高比率がどのくらいの水準にあるのかを示しました。
今回は、日本企業が、どのような用途でITへの支出を行っているかを検証してみましょう。IT活用実態調査では、ITへの支出を新規開発、保守・エンハンス、運用の3つに分けて、その内訳を尋ねています。

新規開発費用
新しいシステムの開発に係わる費用。人件費、ハード購入費用、ソフト購入費用など。※システム全体を再構築するような場合を含む
保守・エンハンス費用
既存のシステムの修正や、再構築には至らないような機能拡張に係わる費用。人件費、ハード保守費用、ソフト保守費用など。
運用関連費用
上記以外の費用。
システム運用費、ヘルプデスク維持費、センター設備・ネットワーク維持費、クラウドサービス利用料など。

IT費用への支出(2022年度実績)を、上記の3つに分けて内訳を尋ねたところ、「新規開発費用」は回答企業の平均値で30.1%でした。また「保守・エンハンス費用」は34.3%、運用関連費用は35.7%でした(図1)。企業は、新しいシステムの開発よりも、既存のシステムの維持に多くの費用を使っていると言えます。

図1 IT費用の支出割合

n=309

また、これらの3分類のそれぞれについて、2023年度の予算の2022年度の実績に比べた増減を尋ねたところ、新規開発費用については「増加」と回答した企業が47.9%で、「減少」と回答した企業は7.4%に過ぎませんでした。保守・エンハンス費用や運用関連費用についても、増加と回答した企業の割合が減少と回答した企業の割合を上回っていますが、その差は新規開発費用において最も大きくなっています(図2)。デジタル化の潮流の中で、ITへの支出を新しい価値を生み出す方向に振り向ける上で、新規開発を重視するのは自然な流れだと言えるでしょう。

図2 IT費用の目的別2023年度予算の2022年度実績からの増減結果

n=309

ここで、企業が新規開発の費用をどのように賄うかを考えてみましょう。IT投資の総額を大きく拡大できるなら、その中で新規開発への支出を増やすことに問題はありません。新規開発への支出増加と、既存システム維持への支出増加を両立させる企業も多いと考えられます。しかし、限られた予算の中で新規開発への支出を確保するなら、既存のシステムの維持に対する支出をできるだけ抑制することが望ましいと言えます。
そこで、保守・エンハンス費用が増加した企業と、減少した企業に分けて、新規開発への支出が増加した割合を比較してみましょう。保守・エンハンス費用が増加した企業では、新規開発費用が増加した割合が64.7%であるのに対し、保守・エンハンス費用が減少した企業では、その割合が85.3%となっています(図3)。同様に、運用関連費用が増加した企業と、減少した企業を比較すると、新規開発費用が増加した割合がそれぞれ58.5%と85.7%となっています(図4)。運用関連費用が減少した企業についてはn数が少ないことに注意する必要がありますが、概ね同様の傾向が見られます。ITへの支出を新しい価値を生み出す方向に振り向ける上では、既存のシステムを維持していくための費用を見直し、その費用を抑制していくことが重要であると言えそうです。

図3 新規開発費用の増減(保守・エンハンス費用が増加した企業と減少した企業の比較)

図4 新規開発費用の増減(運用関連費用が増加した企業と減少した企業の比較)

注)図中の構成比については小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計をしても100にならない場合があります。

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第16回 IT費用の内訳 -どのような用途に使われているか

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執筆者情報

  • 有賀 友紀

    システムコンサルティング事業本部

  • 坂口 恵理

    ITマネジメントコンサルティング部

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