「ペロブスカイト太陽電池」とは

発電層にペロブスカイト結晶構造を持つ化合物で製造された太陽電池です。
シリコン系太陽電池や化合物系太陽電池といった従来型の太陽電池と比べ、変換効率が同レベルでありながら、軽量かつ柔軟な素材であり、既存のシリコン系太陽電池が設置できなかった場所への設置が可能になることから、カーボンニュートラルの実現やGX(グリーントランスフォーメーション)の観点からも次世代太陽電池としての導入が期待されています。
ペロブスカイトとは、ロシア人科学者レフ・ペロフスキーが発見した灰チタン石(CaTiO3)という酸化鉱物のことであり、その結晶構造を指すこともあります。

ペロブスカイト結晶構造とペロブスカイト太陽電池

ペロブスカイトとは、ロシア人の科学者(鉱物学者)のレフ・ペロフスキー氏が発見した酸化鉱物(化学組成は CaTiO3)であり、その結晶構造はペロブスカイト結晶構造とよばれます。その名称は、ペロフスキー氏の名前から由来しています。
ペロブスカイト結晶構造を持つ化合物で発電層を作った太陽電池をペロブスカイト太陽電池と呼びます。

図表1 ペロブスカイト電池の構造とペロブスカイト結晶構造

ペロブスカイト電池の構造とペロブスカイト結晶構造

出所:経済産業省 資源エネルギー庁「日本の再エネ拡大の切り札、ペロブスカイト太陽電池とは?(前編)~今までの太陽電池とどう違う?」

ペロブスカイト太陽電池のメリット・デメリット

ペロブスカイト太陽電池の特徴として、①軽量で柔軟な素材特性から設置場所が多岐にわたる、②デザイン性や加工性が高いため用途が広い、③シースルー効果が高く低照度でも発電が可能、④原材料を国内で調達できることから安定的なサプライチェーンの確保が可能、⑤技術開発により将来的な製造コストの低減が可能といったメリットが期待できます。

  • 軽量で柔軟な素材特性から設置場所が多岐にわたる:
    軽量で柔軟な素材であることから形状がフレキシブルであり、壁面や曲面など耐荷重の大きくない場所への設置が可能。
  • デザイン性や加工性が高いため用途が広い:
    光透過性があるため、色を変更するなどデザイン性も兼ね備えており、モビリティへの搭載や建材への組み込みなど加工性も高いため広範な用途に使える。
  • シースルー効果が高く低照度でも発電が可能:
    低照度から高照度まで幅広い環境下での発電が可能であり、LEDのような室内光でも利用可能。
  • 原材料を国内で調達できることから安定的なサプライチェーンの確保が可能:
    原材料のヨウ素は日本が世界第2位の産出量であり、国内調達が可能。安定的なサプライチェーンを確保することによってエネルギー安全保障とカーボンニュートラルの両立につながる。
  • 技術開発により将来的な製造コストの低減が可能:
    塗布技術など製造技術のイノベーションによる設備投資の大幅抑制など、将来的な製造コストの低減の可能性が高い。

一方、耐久性に関しては開発の余地があり、耐用年数は10年程度といわれています。従来型のシリコン系の太陽電池の耐用年数が25~30年といわれていることを考慮すると、耐用年数がかなり短いことがデメリットになります。そのため、導入から撤去までにかかる総費用を運転期間中に想定される総発電量で割ることによって算出されるLCOEコストが高いことが課題になっています。(LCOEとは、Levelized Cost of Electricity(均等化発電原価))。

太陽電池の素材別分類と特徴

太陽電池は、素材別に主にシリコン系、化合物系、有機系に分類できます。次世代太陽電池として、日本国内で導入が期待されているものは、有機系の有機薄膜(OPV)とペロブスカイト(PSC)です。
有機薄膜(OPV)は、ウェアラブル装置、小型装置、室内での導入などが期待されていました。
ペロブスカイト太陽電池は、従来型のシリコン系や化合物系の太陽電池と同様の高い変換効率となっており、さらにシリコン系など組み合わせ方によっては、さらに高い変換効率が期待されます。

図表2 太陽電池の素材による分類と特徴

太陽電池の素材による分類と特徴

出所:産総研「太陽光発電技術」、富士経済「2023年版太陽電池関連技術・市場の現状と展望」ほか公開情報よりNRI作成

ペロブスカイト太陽電池の拡大余地 

ペロブスカイト太陽電池は、カーボンニュートラル実現のための新たな手段となることから、欧米や中国、日本でも開発が進んでいます。日本が世界でのシェアを拡大するためには、耐久性・安定性の開発はもちろん、塗装技術など日本が強みとする技術での量産体制の確立が必要となります。
前述したペロブスカイト太陽電池の特性を勘案すると、電池メーカーだけでなく、建設・不動産業界やモビリティ業界など多様な業界からの参入が期待されています。今後、ペロブスカイト太陽電池市場を成長させるためには、関連する業界が連携し、製造・設置・運用・廃棄の一連のサイクルを見据えた持続可能なビジネスモデルを開発することが必要になるでしょう。また、再生エネルギー導入促進など行政による制度設計も必要になります。