トランプ大統領がFRBクック理事の解任を表明
26日の東京市場で、10年国債利回りは1.63%まで上昇した。これは、2008年10月以来、17年ぶりの高い水準だ。
長期国債利回り上昇のきっかけとなった要因は主に3点ある。第1は、トランプ大統領が、米連邦準備制度理事会(FRB)のクック理事を、住宅ローン申請書類に関する不正行為を理由に解任する考えをSNSに投稿したことだ。トランプ大統領がFRBへの支配を強め、今後、トランプ大統領が望む金融緩和が進むとの期待が強まった。金融緩和期待が高まり、短期国債の利回りは低下したが、5年以上の中長期国債の利回りは上昇した。政府介入によって過度な金融緩和が実施されれば、それはインフレリスクを高めることになる、との見方が背景にある(コラム「トランプ政権による強権的なFRB支配の動きと金融市場でのトリプル安のリスク:トランプ大統領はクック理事を解任と発表」、2025年8月26日)。
ちなみに、クック理事は現時点でトランプ大統領の解任を受け入れない考えを示しており、提訴を検討している。実際、トランプ大統領がFRB理事を解任できるかどうかは法的に不透明であり、なお混乱が続く可能性がある。米国での国債市場の動揺の影響が、日本の国債市場にも及んでいる。
長期国債利回り上昇のきっかけとなった要因は主に3点ある。第1は、トランプ大統領が、米連邦準備制度理事会(FRB)のクック理事を、住宅ローン申請書類に関する不正行為を理由に解任する考えをSNSに投稿したことだ。トランプ大統領がFRBへの支配を強め、今後、トランプ大統領が望む金融緩和が進むとの期待が強まった。金融緩和期待が高まり、短期国債の利回りは低下したが、5年以上の中長期国債の利回りは上昇した。政府介入によって過度な金融緩和が実施されれば、それはインフレリスクを高めることになる、との見方が背景にある(コラム「トランプ政権による強権的なFRB支配の動きと金融市場でのトリプル安のリスク:トランプ大統領はクック理事を解任と発表」、2025年8月26日)。
ちなみに、クック理事は現時点でトランプ大統領の解任を受け入れない考えを示しており、提訴を検討している。実際、トランプ大統領がFRB理事を解任できるかどうかは法的に不透明であり、なお混乱が続く可能性がある。米国での国債市場の動揺の影響が、日本の国債市場にも及んでいる。
フランスの政治情勢が混乱
第2は、フランスの政治情勢の混乱により、フランス国債の利回りが上昇していることだ。26日にはフランス10年国債利回りは5か月ぶりの水準まで上昇した。
フランスのバイル首相は、2026年予算案に約440億ユーロ(約7兆5,500億円)規模の財政再建計画を盛り込む方針を示し、国民議会(下院)で支持を求めた。しかし、財政再建計画には経済活動の活性化を狙い2つの祝日の廃止が盛り込まれており、野党から強い批判が出ている。
そこでバイル首相は25日、国民議会で9月8日にバイル首相率いる内閣の信任投票を実施すると突如発表した。これは大きな賭けである。下院は与党が少数であることから、投票が否決される可能性が高まっており、内閣は崩壊の危機に瀕している。
ロンバール財務相は26日に、バイル首相が率いる少数与党政権が来月に崩壊した場合には、国際通貨基金(IMF)がフランスの財政運営に介入せざるを得なくなる可能性があると警告した。
こうした政治の混乱と財政再建への失望から、フランス国債の利回りは大きく上昇している。その影響が日本の国債利回りを押し上げている面がある。
フランスのバイル首相は、2026年予算案に約440億ユーロ(約7兆5,500億円)規模の財政再建計画を盛り込む方針を示し、国民議会(下院)で支持を求めた。しかし、財政再建計画には経済活動の活性化を狙い2つの祝日の廃止が盛り込まれており、野党から強い批判が出ている。
そこでバイル首相は25日、国民議会で9月8日にバイル首相率いる内閣の信任投票を実施すると突如発表した。これは大きな賭けである。下院は与党が少数であることから、投票が否決される可能性が高まっており、内閣は崩壊の危機に瀕している。
ロンバール財務相は26日に、バイル首相が率いる少数与党政権が来月に崩壊した場合には、国際通貨基金(IMF)がフランスの財政運営に介入せざるを得なくなる可能性があると警告した。
こうした政治の混乱と財政再建への失望から、フランス国債の利回りは大きく上昇している。その影響が日本の国債利回りを押し上げている面がある。
植田総裁のジャクソンホール会議での発言
第3は日本銀行の利上げ観測という国内要因だ。8月23日に植田総裁がジャクソンホール会議で行った講演で、高い賃金上昇率の持続性に前向きに発言したことが、金融市場の早期利上げ観測を高め、長期国債利回りの上昇を後押ししている面がある。
ただし、「賃金には上昇圧力がかかり続けると見込まれる」という総裁発言は、従来の認識と異なるものではない。日本銀行はそれを前提に追加利上げの方向を明確に示唆してきた。今回の発言によって利上げのタイミングが特に早まったと考える強い根拠はないだろう。
日本銀行は、関税が、内外の経済、金融市場に与える影響をなお見極めているところだ。米国での7月雇用統計で示された雇用情勢の弱さについては懸念しているだろう。
ただし、「賃金には上昇圧力がかかり続けると見込まれる」という総裁発言は、従来の認識と異なるものではない。日本銀行はそれを前提に追加利上げの方向を明確に示唆してきた。今回の発言によって利上げのタイミングが特に早まったと考える強い根拠はないだろう。
日本銀行は、関税が、内外の経済、金融市場に与える影響をなお見極めているところだ。米国での7月雇用統計で示された雇用情勢の弱さについては懸念しているだろう。
トランプ政権の利下げ、ドル安政策の可能性が日本銀行の金融政策にも影響
さらに、トランプ大統領によるFRBへの政治介入が、日米の長期国債利回りを押し上げるとともに、ドル安円高傾向を生じさせていることも、日本銀行に利上げを慎重にさせる要因だ。こうした状況の下で日本銀行が利上げに踏み切り、長期国債利回りの上昇と円高進行を後押しすれば、株価の大幅下落も伴い、日本経済に悪影響を生じさせてしまうためだ。
フランスの政治・金融情勢の不安定化は一時的要因である可能性が考えられるが、トランプ大統領によるFRBへの政治介入は一時的では終わらないだろう。それは、利下げを通じたトランプ政権のドル安政策につながってくる可能性もある。そうなれば、急速なドル安円高が日本銀行の利上げの障害となり得るだろう。
一方でベッセント財務長官は、日本銀行の政策が後手に回っているとして、日本銀行の利上げを促すような発言もしている。それは逆に日本銀行の利上げを促す要因だ(コラム「ベッセント米財務長官が日銀の金融政策は後手に回っていると異例の発言:トランプ政権は日米金融政策の修正を通じたドル安政策に進むか」、2025年8月14日)。
このように、日本銀行の政策は、トランプ政権の関税の影響に加えて、関税政策に続く利下げ政策、そしてドル安政策の影響をこの先、大きく受ける可能性があるだろう。
フランスの政治・金融情勢の不安定化は一時的要因である可能性が考えられるが、トランプ大統領によるFRBへの政治介入は一時的では終わらないだろう。それは、利下げを通じたトランプ政権のドル安政策につながってくる可能性もある。そうなれば、急速なドル安円高が日本銀行の利上げの障害となり得るだろう。
一方でベッセント財務長官は、日本銀行の政策が後手に回っているとして、日本銀行の利上げを促すような発言もしている。それは逆に日本銀行の利上げを促す要因だ(コラム「ベッセント米財務長官が日銀の金融政策は後手に回っていると異例の発言:トランプ政権は日米金融政策の修正を通じたドル安政策に進むか」、2025年8月14日)。
このように、日本銀行の政策は、トランプ政権の関税の影響に加えて、関税政策に続く利下げ政策、そしてドル安政策の影響をこの先、大きく受ける可能性があるだろう。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。