FRBの本部理事の過半数がトランプ大統領が示した金融緩和積極派になる可能性
トランプ米大統領は25日に、住宅ローン申請書類を巡り不正を働いたとして、米連邦準備制度理事会(FRB)のクック理事を解任する考えを示した。これに対してクック理事の弁護士は、トランプ大統領にクック理事を解任する権限はないと述べ、訴訟を提起すると表明した。トランプ大統領は法廷闘争も辞さない考えを示している。
法廷闘争となれば時間がかかるだろうが、仮にクック理事が解任されれば、それはFRBの金融政策に大きな意味を持つ。トランプ大統領は既に2名の理事を指名している。さらに辞任したクーグラ―前理事の後任には、トランプ大統領の経済アドバイザーで金融緩和に前向きな前大統領経済諮問委員会(CEA)のミラン委員長を指名しており、上院の承認待ちの状況だ。
クック理事の後任にもトランプ大統領の息がかかった金融緩和積極派が指名されれば、米連邦公開市場委員会(FOMC)で金融政策決定に投票権を持つ本部理事7人のうち過半数である4人が、トランプ大統領が指名した金融緩和積極派に変わり、金融政策に大きな影響を与えることになる。まさに人事を通じたFRBへの政治介入となる。
法廷闘争となれば時間がかかるだろうが、仮にクック理事が解任されれば、それはFRBの金融政策に大きな意味を持つ。トランプ大統領は既に2名の理事を指名している。さらに辞任したクーグラ―前理事の後任には、トランプ大統領の経済アドバイザーで金融緩和に前向きな前大統領経済諮問委員会(CEA)のミラン委員長を指名しており、上院の承認待ちの状況だ。
クック理事の後任にもトランプ大統領の息がかかった金融緩和積極派が指名されれば、米連邦公開市場委員会(FOMC)で金融政策決定に投票権を持つ本部理事7人のうち過半数である4人が、トランプ大統領が指名した金融緩和積極派に変わり、金融政策に大きな影響を与えることになる。まさに人事を通じたFRBへの政治介入となる。
トランプ政権は地区連銀総裁の人事にも関与を検討
しかし、金融政策を決めるFOMCで投票権を持つのは、この7名の本部理事以外に12の地区連銀総裁の中から輪番で選ばれる5人(うち1人はニューヨーク連銀総裁で固定)がいる。地区連銀総裁はFRB本部理事とは異なり、ホワイトハウスの指名や上院の承認を受けずに選出されている。
地区連銀総裁の指名・再任の手続きは通常、9人で構成される各地区連銀理事会のうち、地元民間銀行代表を指すクラスAの3人を除いたクラスB(地元の企業経営者など)およびクラスC(FRBが選出)のそれぞれ3人と、FRBが最終的な責任を負っている。FRBは5年に1度、地区連銀総裁の再任の承認採決を行っている。ただし再任承認は形式的な手続きに過ぎない感がある。次回の採決は来年2月に予定されている。
トランプ政権はこの再任の承認プロセスに積極的に関与し、再任承認を条件に地区連銀総裁に金融緩和に賛成するように働きかけることを検討しているとされる。
地区連銀総裁の指名・再任の手続きは通常、9人で構成される各地区連銀理事会のうち、地元民間銀行代表を指すクラスAの3人を除いたクラスB(地元の企業経営者など)およびクラスC(FRBが選出)のそれぞれ3人と、FRBが最終的な責任を負っている。FRBは5年に1度、地区連銀総裁の再任の承認採決を行っている。ただし再任承認は形式的な手続きに過ぎない感がある。次回の採決は来年2月に予定されている。
トランプ政権はこの再任の承認プロセスに積極的に関与し、再任承認を条件に地区連銀総裁に金融緩和に賛成するように働きかけることを検討しているとされる。
中央銀行の政治からの独立は国民生活の安定にとって重要
このようにトランプ政権は、FRBの金融政策への政治介入を露骨に進めており、さらにエスカレートさせる方向だ。これに対して、中央銀行関係者からは強い批判が出されている。FRB副議長を務めたラエル・ブレイナード氏は26日、複数の地区連銀総裁を更迭してFOMCの構成を刷新しようとする政治的な動きは、インフレ率や長期金利を押し上げるリスクがあると警告した。
また、トランプ政権によるFRBへの不当な政治介入を念頭に、国際決済銀行(BIS)の新たな総支配人に就任したパブロ・エルナンデス・デコス氏は、中央銀行の独立性がインフレ抑制と人々の生活の安定に不可欠であると強調した。
政府による中央銀行の政治介入は、通貨の信認に大きな打撃を与え、金融市場を悪化させる。米国では既に、トリプル安の兆候が見られる(コラム「トランプ政権による強権的なFRB支配の動きと金融市場でのトリプル安のリスク:トランプ大統領はクック理事を解任と発表」、2025年8月26日、「トランプ政権によるFRBへの介入とフランス政治情勢が日本の国債利回りを押し上げ:日銀の利上げにも影響」、2025年8月27日)。そうした金融市場の不安定化は経済にもマイナスである。いずれは国民からの批判も浴びることで、政権にとってもプラスではない。
政府から独立した組織である中央銀行が金融政策を担い、物価の安定に努めるという仕組みは、政府が金融政策に関与したことでインフレが加速し、国民生活を悪化させたという歴史の教訓から生まれたものだ。中央銀行はこうした人類の英知によってつくられた組織であるとも言える。トランプ政権は、そうした歴史の重みを十分に理解する必要がある。
(参考資料)
“Trump Team Weighing Options to Extend Influence to Fed Banks(トランプ米政権、地区連銀への影響力強化へ選択肢検討)”, Bloomberg, August 27, 2025
また、トランプ政権によるFRBへの不当な政治介入を念頭に、国際決済銀行(BIS)の新たな総支配人に就任したパブロ・エルナンデス・デコス氏は、中央銀行の独立性がインフレ抑制と人々の生活の安定に不可欠であると強調した。
政府による中央銀行の政治介入は、通貨の信認に大きな打撃を与え、金融市場を悪化させる。米国では既に、トリプル安の兆候が見られる(コラム「トランプ政権による強権的なFRB支配の動きと金融市場でのトリプル安のリスク:トランプ大統領はクック理事を解任と発表」、2025年8月26日、「トランプ政権によるFRBへの介入とフランス政治情勢が日本の国債利回りを押し上げ:日銀の利上げにも影響」、2025年8月27日)。そうした金融市場の不安定化は経済にもマイナスである。いずれは国民からの批判も浴びることで、政権にとってもプラスではない。
政府から独立した組織である中央銀行が金融政策を担い、物価の安定に努めるという仕組みは、政府が金融政策に関与したことでインフレが加速し、国民生活を悪化させたという歴史の教訓から生まれたものだ。中央銀行はこうした人類の英知によってつくられた組織であるとも言える。トランプ政権は、そうした歴史の重みを十分に理解する必要がある。
(参考資料)
“Trump Team Weighing Options to Extend Influence to Fed Banks(トランプ米政権、地区連銀への影響力強化へ選択肢検討)”, Bloomberg, August 27, 2025
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。