衆院選後も日本銀行への利上げけん制は控える姿勢か
2月18日の第2次高市内閣発足後の記者会見で、高市首相は経済政策方針の説明に加えて、金融政策についても言及した(コラム「高市内閣2.0のスタート:消費税減税実現に向けた多くの課題」、2026年2月19日)。高市首相は昨年10月の政権発足直後の記者会見で、「財政政策と同様に金融政策の方針も政府が決める」として、日本銀行の金融政策に対する政府の関与を明言していた。
しかしその後は、高市首相の日本銀行の利上げけん制姿勢が円安と物価高を助長したことや、トランプ政権からも円安を助長する日本銀行の利上げけん制姿勢を諫める発言がされたことなどを受けて、金融政策に関与する姿勢を修正していった。そして「政府と日本銀行が強く連携し、十分な意思疎通」をしたうえで、「日本銀行には2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現に向けて適切に金融政策を行うことを期待する」といった、従来の政府の公式見解をなぞる発言をするようになった。
ここで高市政権は、安倍政権と同様に日本銀行に対して金融緩和を望む持論を後退させる柔軟性を発揮したのである。この柔軟性は、この先、金融市場の財政悪化への懸念に配慮して、積極財政姿勢を修正することにつながる可能性もあるだろう。
衆院選で自民党が歴史的大勝となり、政権が世論の強い支持を受けたことで、高市首相が再び日本銀行の利上げをけん制する姿勢に戻る可能性も考えられた。しかし、今回の記者会見の発言から判断すれば、そうしたことは起こらないようだ。
しかしその後は、高市首相の日本銀行の利上げけん制姿勢が円安と物価高を助長したことや、トランプ政権からも円安を助長する日本銀行の利上げけん制姿勢を諫める発言がされたことなどを受けて、金融政策に関与する姿勢を修正していった。そして「政府と日本銀行が強く連携し、十分な意思疎通」をしたうえで、「日本銀行には2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現に向けて適切に金融政策を行うことを期待する」といった、従来の政府の公式見解をなぞる発言をするようになった。
ここで高市政権は、安倍政権と同様に日本銀行に対して金融緩和を望む持論を後退させる柔軟性を発揮したのである。この柔軟性は、この先、金融市場の財政悪化への懸念に配慮して、積極財政姿勢を修正することにつながる可能性もあるだろう。
衆院選で自民党が歴史的大勝となり、政権が世論の強い支持を受けたことで、高市首相が再び日本銀行の利上げをけん制する姿勢に戻る可能性も考えられた。しかし、今回の記者会見の発言から判断すれば、そうしたことは起こらないようだ。
利上げへの難色姿勢は今後も
ただし今回の記者会見での高市首相の金融政策に関する発言には、「コストプッシュではなく賃金上昇を伴った2%の物価安定目標」との表現が加えられた。この部分は、高市首相の持論を反映している。つまり、「物価上昇率は高いがコストプッシュ型の悪い物価上昇であり、その結果、景気情勢は引き続き厳しい。そうした中で、物価上昇率の上振れのみを理由に日本銀行が利上げを進めると景気が悪化し、デフレからの完全脱却も遠のいてしまう」ことを、高市首相は引き続き懸念しているだろう。
この点から、高市首相が局面局面で日本銀行の利上げに難色を示すことは、今後も考えられ、それが利上げの時期を遅らせる可能性があるだろう。物価上昇率の下振れ、景気情勢の変調、円高傾向などは、高市首相が日本銀行の利上げを水面下でけん制する条件となるだろう。
この点から、高市首相が局面局面で日本銀行の利上げに難色を示すことは、今後も考えられ、それが利上げの時期を遅らせる可能性があるだろう。物価上昇率の下振れ、景気情勢の変調、円高傾向などは、高市首相が日本銀行の利上げを水面下でけん制する条件となるだろう。
第2回会談についての発言は植田総裁と示し合わせたか
こうした考えは、2月16日の植田日本銀行総裁との2回目となる会談で高市首相が植田総裁に改めて伝えた可能性もあるだろう(コラム「日銀の植田総裁と高市首相が2回目の会談:衆院選後に高市首相の金融政策への姿勢は変化するか」、2026年2月16日)。
18日の記者会見では、この会談についての質問も記者から出た。高市首相は、この会談は定期的なものであり、一般的な経済、金融の意見交換をしたもの、と説明した。この点は、16日の植田総裁の説明と全く同じである。さらに、「具体的な内容については言えない」との説明も両者同じであり、事前に発言を示し合わせていた可能性が高い。この「言えない」ことが何であるかは分からない。
18日の記者会見では、この会談についての質問も記者から出た。高市首相は、この会談は定期的なものであり、一般的な経済、金融の意見交換をしたもの、と説明した。この点は、16日の植田総裁の説明と全く同じである。さらに、「具体的な内容については言えない」との説明も両者同じであり、事前に発言を示し合わせていた可能性が高い。この「言えない」ことが何であるかは分からない。
審議委員の人事が金融政策に与える影響は軽微
この点については、金融政策に関する議論に加えて、もう一つ可能性として考えられるのは、日本銀行の審議委員の人事ではないか。野口委員は3月31日に、中川委員は6月29日にそれぞれ5年の任期が切れる。政府は25日にも両者の後任人事案をまとめて提示することが見込まれている。そして、その人事が日本銀行の金融政策に影響を与えるかどうかは、金融市場の関心事となっている。しかし実際には、影響は軽微となるだろう。
野口氏は金融緩和に積極的ないわゆるリフレ派の学者だ。アベノミクスを継承し、金融緩和を重視する高市政権が発足したことで、野口氏の後任は再びリフレ派となる可能性が高い。その結果、政策委員会の金融政策決定には中立的となるだろう。
中川氏は金融政策姿勢では中立的と考えられる。中川氏が指名されたのは、証券会社出身と女性という2つの要素があった。政策委員にはもう一人女性の小枝氏がいるが、民間の取締役会で女性比率が趨勢的に高まってきていることを踏まえると、政策委員会の中で女性2人体制は維持されるのではないか。
証券会社出身の女性が中川氏の後任になる可能性があるが、証券会社出身でなくても金融界あるいは産業界出身の女性が指名されるだろう。リフレ派の女性は少ないことから、金融政策には比較的中立的な女性が指名されると見られる。その結果、その人事が政策委員会の金融政策決定に与える影響は、やはり軽微となるだろう。
野口氏は金融緩和に積極的ないわゆるリフレ派の学者だ。アベノミクスを継承し、金融緩和を重視する高市政権が発足したことで、野口氏の後任は再びリフレ派となる可能性が高い。その結果、政策委員会の金融政策決定には中立的となるだろう。
中川氏は金融政策姿勢では中立的と考えられる。中川氏が指名されたのは、証券会社出身と女性という2つの要素があった。政策委員にはもう一人女性の小枝氏がいるが、民間の取締役会で女性比率が趨勢的に高まってきていることを踏まえると、政策委員会の中で女性2人体制は維持されるのではないか。
証券会社出身の女性が中川氏の後任になる可能性があるが、証券会社出身でなくても金融界あるいは産業界出身の女性が指名されるだろう。リフレ派の女性は少ないことから、金融政策には比較的中立的な女性が指名されると見られる。その結果、その人事が政策委員会の金融政策決定に与える影響は、やはり軽微となるだろう。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。