2回目の会談後の記者への説明は事前に擦り合わせていたか
2月24日の夕刻に毎日新聞は、2月16日に高市首相が日本銀行の植田総裁と会談した際に、追加利上げに難色を示していた、と報じた。複数の関係者によると、首相は追加利上げに難色を示し、「(2025年11月の)前回の会談の時より厳しい態度だった」という。
高市首相が追加利上げに難色を示したとしても、日本銀行の利上げが封じられる可能性は低い。しかし、高市首相の利上げけん制は水面下では今後も続き、それが日本銀行の追加利上げのタイミングに影響を与える可能性はあるだろう。
16日の会談後に植田総裁は、会談は定期的なもので一般的な経済、金融情勢の意見交換だった、とコメントした。しかし具体的な内容は言えないとした。その後、高市首相は記者会見で、ほぼ同様の発言を繰り返し、事前に両者が擦り合わせていたことがうかがえた(コラム「日銀の植田総裁と高市首相が2回目の会談:衆院選後に高市首相の金融政策への姿勢は変化するか」、2026年2月16日)。
昨年11月の1回目の会談後に植田総裁は、利上げの必要性を高市首相に説明し、高市首相がそれを受け入れた、との趣旨の発言をした。この発言を高市首相は問題視し、今回は会談の内容を話さないように、植田総裁にくぎを刺し、記者への説明を事前に擦り合わせた可能性があるのではないか。
高市首相が追加利上げに難色を示したとしても、日本銀行の利上げが封じられる可能性は低い。しかし、高市首相の利上げけん制は水面下では今後も続き、それが日本銀行の追加利上げのタイミングに影響を与える可能性はあるだろう。
16日の会談後に植田総裁は、会談は定期的なもので一般的な経済、金融情勢の意見交換だった、とコメントした。しかし具体的な内容は言えないとした。その後、高市首相は記者会見で、ほぼ同様の発言を繰り返し、事前に両者が擦り合わせていたことがうかがえた(コラム「日銀の植田総裁と高市首相が2回目の会談:衆院選後に高市首相の金融政策への姿勢は変化するか」、2026年2月16日)。
昨年11月の1回目の会談後に植田総裁は、利上げの必要性を高市首相に説明し、高市首相がそれを受け入れた、との趣旨の発言をした。この発言を高市首相は問題視し、今回は会談の内容を話さないように、植田総裁にくぎを刺し、記者への説明を事前に擦り合わせた可能性があるのではないか。
記者会見でにじみ出た高市首相の利上げへの難色
2月18日の第2次高市内閣発足後の記者会見で、高市首相は経済政策方針の説明に加えて、金融政策についても言及した。衆院選での自民党の歴史的勝利を受けて、高市首相が昨年10月の政権発足時のように、日本銀行の金融政策に対して強く介入する発言をするかどうかが注目された。
実際には、「日本銀行には2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現に向けて適切に金融政策を行うことを期待する」といった、従来の政府の公式見解を繰り返しており、政権発足直後のように、政府が金融政策の方針も決めるといった介入色の強い発言には戻らなかった。
ただしその記者会見での高市首相の金融政策に関する発言には、「コストプッシュではなく賃金上昇を伴った2%の物価安定目標」との表現が加えられた。この部分は、高市首相の持論を反映しているだろう。つまり、「物価上昇率は高いがコストプッシュ型の悪い物価上昇であり、その結果、景気情勢は引き続き厳しい。そうした中で、物価上昇率の上振れのみを理由に日本銀行が利上げを進めると景気が悪化し、デフレからの完全脱却も遠のいてしまう」ことを、高市首相は引き続き懸念しているだろう(コラム「衆院選後に高市首相の日本銀行への姿勢は変わるか:日銀政策委員の人事にも注目」、2026年2月19日)。
実際には、「日本銀行には2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現に向けて適切に金融政策を行うことを期待する」といった、従来の政府の公式見解を繰り返しており、政権発足直後のように、政府が金融政策の方針も決めるといった介入色の強い発言には戻らなかった。
ただしその記者会見での高市首相の金融政策に関する発言には、「コストプッシュではなく賃金上昇を伴った2%の物価安定目標」との表現が加えられた。この部分は、高市首相の持論を反映しているだろう。つまり、「物価上昇率は高いがコストプッシュ型の悪い物価上昇であり、その結果、景気情勢は引き続き厳しい。そうした中で、物価上昇率の上振れのみを理由に日本銀行が利上げを進めると景気が悪化し、デフレからの完全脱却も遠のいてしまう」ことを、高市首相は引き続き懸念しているだろう(コラム「衆院選後に高市首相の日本銀行への姿勢は変わるか:日銀政策委員の人事にも注目」、2026年2月19日)。
日本銀行の追加利上げけん制は水面下で
日本銀行の利上げをあからさまにけん制すれば、円安が進み、それは物価高を助長してしまう。また、昨年にはトランプ政権から、米国にとって都合が悪い円安を助長する日本銀行の金融政策への介入を諫められた。
これらを受けて、高市首相は日本銀行の追加利上げを公然とけん制するのはやめた一方、水面下でのけん制は今後も続けるのではないか。昨年の10-12月期の実質GDP成長率が下振れたことや、2月に消費者物価(除く生鮮食品)の前年比上昇率が1%台に下振れる可能性が高いことから、それらを理由に日本銀行の早期追加利上げを水面下でけん制する可能性がある。
これらを受けて、高市首相は日本銀行の追加利上げを公然とけん制するのはやめた一方、水面下でのけん制は今後も続けるのではないか。昨年の10-12月期の実質GDP成長率が下振れたことや、2月に消費者物価(除く生鮮食品)の前年比上昇率が1%台に下振れる可能性が高いことから、それらを理由に日本銀行の早期追加利上げを水面下でけん制する可能性がある。
追加利上げは年後半と予想
この点も踏まえると、金融市場で期待される4月の利上げの時期は後ずれするのではないか。筆者は年前半の追加利上げの可能性は低いと従来考えてきた。
この報道を受けて、先行きの政策金利を予想するOIS(オーバーナイト・インデックス・スワップ)市場で3月の利上げ確率は前週末の12%程度から6%程度に半減した。さらに為替市場では、1ドル155円程度から一時156円を超える円安となった。
25日には日本銀行の審議委員の国会同意人事も示されると見られており、今回の報道を受け、高市政権の日本銀行への姿勢を占う観点から、人事への注目度はより高まっている。
この報道を受けて、先行きの政策金利を予想するOIS(オーバーナイト・インデックス・スワップ)市場で3月の利上げ確率は前週末の12%程度から6%程度に半減した。さらに為替市場では、1ドル155円程度から一時156円を超える円安となった。
25日には日本銀行の審議委員の国会同意人事も示されると見られており、今回の報道を受け、高市政権の日本銀行への姿勢を占う観点から、人事への注目度はより高まっている。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。