2週間の停戦で合意か
トランプ米大統領は、イランがホルムズ海峡を再開しない場合、米国東部時間4月7日午後8時(日本時間4月8日午前9時)にイランの発電所・橋などのインフラを大規模に攻撃するとしていた。しかしその直前になってトランプ大統領は、「イランがホルムズ海峡の完全かつ即時、安全な再開に同意することを条件に、イランへの爆撃と攻撃を2週間停止することに同意する。これは双方による停戦となる!」とSNSに投稿した。
これによって米国によるイランへの大規模攻撃はとりあえず回避された。仮にイランの原油設備などが大規模に破壊され、その報復としてイランが湾岸周辺国に攻撃をし、原油設備などが広範囲に被害に遭えば、中東地域の原油供給が一段と減少するとの観測から、原油価格は大幅に上昇するリスクがあった。
8日の東京市場で日経平均株価は一時2,800円を超える大幅高となった。また、1ドル160円前後に達していたドル円レートは158円台まで円安の修正が進み、政府によるドル売り円買い介入の可能性は目先については低下した。
これによって米国によるイランへの大規模攻撃はとりあえず回避された。仮にイランの原油設備などが大規模に破壊され、その報復としてイランが湾岸周辺国に攻撃をし、原油設備などが広範囲に被害に遭えば、中東地域の原油供給が一段と減少するとの観測から、原油価格は大幅に上昇するリスクがあった。
8日の東京市場で日経平均株価は一時2,800円を超える大幅高となった。また、1ドル160円前後に達していたドル円レートは158円台まで円安の修正が進み、政府によるドル売り円買い介入の可能性は目先については低下した。
2週間の停戦後の状況は不透明
WTI原油先物価格は、1バレル116ドル台まで上昇していたが、2週間の停戦合意の報道を受けて下落に転じた。それでも足もとでは1バレル96ドル台と依然として高い水準にある。これは、ホルムズ海峡の船舶の通航が正常化するかどうかについて、原油市場はなお強い疑念を持っていることを反映しているのだろう。
まず、トランプ大統領はイランがホルムズ海峡を再開することを条件に、イランへの爆撃と攻撃を2週間停止するとしているが、イランがホルムズ海峡の再開に明確に合意したかどうかは良く分からない。
イランのアラグチ外相は声明で「2週間の間、イラン軍との調整を通じてホルムズ海峡の安全な通航が可能になる」と指摘しており、イラン側もこの条件を受け入れたようにも見える。
しかし、軍事力でホルムズ海峡を事実上封鎖しているのは、最高指導者直属の革命防衛隊であり、それがホルムズ海峡再開という条件を受け入れたかどうかは良く分からない。
また、トランプ大統領は、イランから10項目の提案を受け取ったとし、それは「交渉の土台として機能する内容だ」と説明している。しかしその内容は明らかにされていないうえ、米国がそれを受け入れるとは言っていない。
仮に米国とイランが2週間の停戦を実施し、その間、ペルシャ湾内に停留している外国船舶がホルムズ海峡を通って自国に戻ることができるとしても、2週間の停戦後の状況が明らかにならない限り、新たな船舶を、ホルムズ海峡を経由してペルシャ湾内に送り、原油等を輸入することは安全面からできないだろう。
さらに、イエメンの親イラン武装組織フーシ派が参戦したことで、紅海ルートでの原油供給も遮断されるリスクが残されている。
まず、トランプ大統領はイランがホルムズ海峡を再開することを条件に、イランへの爆撃と攻撃を2週間停止するとしているが、イランがホルムズ海峡の再開に明確に合意したかどうかは良く分からない。
イランのアラグチ外相は声明で「2週間の間、イラン軍との調整を通じてホルムズ海峡の安全な通航が可能になる」と指摘しており、イラン側もこの条件を受け入れたようにも見える。
しかし、軍事力でホルムズ海峡を事実上封鎖しているのは、最高指導者直属の革命防衛隊であり、それがホルムズ海峡再開という条件を受け入れたかどうかは良く分からない。
また、トランプ大統領は、イランから10項目の提案を受け取ったとし、それは「交渉の土台として機能する内容だ」と説明している。しかしその内容は明らかにされていないうえ、米国がそれを受け入れるとは言っていない。
仮に米国とイランが2週間の停戦を実施し、その間、ペルシャ湾内に停留している外国船舶がホルムズ海峡を通って自国に戻ることができるとしても、2週間の停戦後の状況が明らかにならない限り、新たな船舶を、ホルムズ海峡を経由してペルシャ湾内に送り、原油等を輸入することは安全面からできないだろう。
さらに、イエメンの親イラン武装組織フーシ派が参戦したことで、紅海ルートでの原油供給も遮断されるリスクが残されている。
残される日本の原油供給不足リスクと経済の下振れリスク
実際、高市首相は7日の記者会見で、5月に米国からの原油輸入は前年比約4倍まで調達が拡大する見込みであり、ホルムズ海峡を経由しない代替ルートでの原油の輸入は4月に前年比2割以上、5月に過半の調達に目途が立った、と説明している。
ただし米国からの原油輸入の拡大には幾つかの制約もある(コラム「高市首相は年を越えて原油の供給を確保できるめどがついたと説明:電力・ガソリン消費の自粛要請には依然慎重」、2026年4月8日)。
他方、ホルムズ海峡を経由しない代替ルートでの原油調達には、パイプラインを使ったサウジアラビア産の原油を購入する紅海ルートが含まれているとみられる。ホルムズ海峡を経由した原油の供給は日量2,000万バレル程度とされる一方、紅海ルートでのサウジアラビア産の供給は日量500万バレル程度と、ホルムズ海峡経由分の4分の1(25%)程度に留まる(コラム「フーシ派参戦でホルムズ海峡の代替ルートが閉ざされ原油価格がさらに上昇するリスク」、2026年3月30日)。
政府は、5月時点で従来の過半が調達可能としている代替ルートの国別の内訳を示していないが、米国からの輸入は15%程度、紅海ルートからの輸入が従来のホルムズ海峡経由の輸入の約4分の1として24%程度、他の代替ルートと合わせて合計で50%超と推察することも可能だ。
しかし、既に述べたように紅海ルートはいつ遮断されるか分からない状況だ。日本の原油調達については依然として不確実であり、供給不足のリスクが残されている。
これは日本経済の大きな下振れリスクでもある。この点に配慮すれば、日本銀行が4月の決定会合での利上げを見送る可能性も十分に考えられるのではないか。2週間の停戦合意を受けて、足もとで円安が修正されていることも、利上げの見送りが1ドル160円を大きく超える円安のきっかけになってしまうという日本銀行の懸念を緩和させるだろう。
ただし米国からの原油輸入の拡大には幾つかの制約もある(コラム「高市首相は年を越えて原油の供給を確保できるめどがついたと説明:電力・ガソリン消費の自粛要請には依然慎重」、2026年4月8日)。
他方、ホルムズ海峡を経由しない代替ルートでの原油調達には、パイプラインを使ったサウジアラビア産の原油を購入する紅海ルートが含まれているとみられる。ホルムズ海峡を経由した原油の供給は日量2,000万バレル程度とされる一方、紅海ルートでのサウジアラビア産の供給は日量500万バレル程度と、ホルムズ海峡経由分の4分の1(25%)程度に留まる(コラム「フーシ派参戦でホルムズ海峡の代替ルートが閉ざされ原油価格がさらに上昇するリスク」、2026年3月30日)。
政府は、5月時点で従来の過半が調達可能としている代替ルートの国別の内訳を示していないが、米国からの輸入は15%程度、紅海ルートからの輸入が従来のホルムズ海峡経由の輸入の約4分の1として24%程度、他の代替ルートと合わせて合計で50%超と推察することも可能だ。
しかし、既に述べたように紅海ルートはいつ遮断されるか分からない状況だ。日本の原油調達については依然として不確実であり、供給不足のリスクが残されている。
これは日本経済の大きな下振れリスクでもある。この点に配慮すれば、日本銀行が4月の決定会合での利上げを見送る可能性も十分に考えられるのではないか。2週間の停戦合意を受けて、足もとで円安が修正されていることも、利上げの見送りが1ドル160円を大きく超える円安のきっかけになってしまうという日本銀行の懸念を緩和させるだろう。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。