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日本政府観光局は4月15日、3月の訪日外客数を発表した。訪日外客数は3月も全体としては比較的安定した増加が続いたが、イラン情勢を受けて中東からの訪日客数は大幅に減少した。今後は、原油価格高騰や原油不足の打撃を大きく受けるアジア地域からの訪日客数が落ち込み、インバウンド需要の低下が日本経済の逆風となるだろう。
 
3月の訪日外客数は前年同月比+3.5%となり、3月としては過去最高を更新した。イラン情勢悪化の影響は、この数字にはまだ明確に表れていない。ただし、イラン情勢を受けて航空便の運休・減便の影響があった中東地域からの訪日客数は、前年同月比-30.6%と2月の同-7.5%から大幅に悪化した。
 
中東地域からの訪日客数は、2026年1-3月期で全体の0.4%、そのインバウンド需要(訪日外国人の旅行消費額)は全体の0.7%に過ぎないため、日本経済への悪影響は限られるだろう。しかし、今後については、原油価格高騰や原油不足の打撃を大きく受けるアジア地域からの訪日客数が落ち込むことが予想される。
 
中国政府の渡航自粛要請の影響で、中国からの3月の訪日客数は前年同月比-55.9%と筆者の想定を大幅に下回っている。今後は、それに加えて、他のアジア地域からの訪日客数、インバウンド需要が大幅に落ち込む可能性があるだろう。アジア諸国からの訪日客によるインバウンド需要は、1-3月期に全体の6割以上であることから、その経済への影響は大きい。
 
内閣府の3月景気ウォッチャー調査では、ガソリン価格上昇によって国内客が鈍ることを、ホテルが警戒していることが示された(コラム「イラン情勢を受けて大きく悪化した景気ウォッチャー3月調査」、2026年4月9日)。4月以降は、アジア、中東からのインバウンド需要の落ち込みの影響が表れてくるだろう。
 
重要なのは、インバウンド需要の落ち込みの打撃を受けるのは、宿泊業だけではないということだ。観光庁のインバウンド消費動向(2026年1-3月期)によると、インバウンド需要(訪日外国人の旅行消費額)の36.7%は宿泊費であるが、それ以外に25.2%が買い物代、22.9%が飲食費、10.1%が交通費、5.1%が娯楽等サービス費である。イラン情勢の影響で、アジアからの訪日客数が減少すれば、かなり幅広い業種にその悪影響が及ぶことになる。
 
さらに、4月から5月にかけては、ナフサ由来の製品価格が大幅に上昇し始める。それは、国内個人消費にかなりの打撃となるだろう。筆者の試算ではナフサ由来の製品の価格上昇によって、家計(4人家族)の年間負担額は2万2,500円から3万5,100円上昇する(コラム「ナフサ由来製品の価格上昇と家計負担額の新たな試算:年間2.3万円~3.5万円」、2026年4月7日)。
 
イラン情勢の影響は、訪日外客数も含め、4月以降の各種経済指標に本格的に表れてくるだろう。

プロフィール

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    木内 登英

    金融ITイノベーション事業本部

    エグゼクティブ・エコノミスト

    

    1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。