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次回利上げは今年12月が有力か

日本銀行は24日に、1.0%への政策金利引き上げを決めた6月15・16日の金融政策決定会合における「主な意見」を公表した。金融政策についての記述では、今回の利上げを支持する意見が多い一方、今後の利上げペースについて決定的な材料は示されていない。
 
早期利上げに前向きな意見としては、「可能な限り早く中立金利に近づけていく必要がある」「中立金利は2%程度と考えられ、これを念頭に数か月に一度のペースで、経済・物価・金融情勢を確認しつつ、都度、検討していくことが望ましい」の2つである。これらは従来、早期利上げを主張してきた審議委員2名の意見と考えられる。9月の会合では、最大2名の審議委員が利上げを主張する可能性があるだろう。
 
6月の決定会合での利上げは、非執行部の審議委員が早期利上げに傾いたことで促された珍しいケースと考えられる。非執行部主導で再び利上げが実施されるとしても、それは早くて今年10月ではないか。筆者は現時点では、今年12月の利上げが有力と考えている(コラム「イラン情勢改善下で総裁不在の日銀は追加利上げを決定:執行部と非執行部の軋轢が続き12月に追加利上げ、ターミナルレートは1.75%と予想」、2026年6月16日、「日銀副総裁記者会見:慎重な答弁で次回利上げの明確な材料は示さず」、2026年6月16日)。

政府は引き続き利上げに否定的か

今回の主な意見で特に注目しておきたいのは、政府代表者の発言だ。財務省は「政策金利の変更については、市場等に丁寧に政策趣旨を説明し、今回の変更が経済・物価に与える影響等を丁寧に点検していただきたい」、内閣府は「今回の利上げにつき説明責任を果たすとともに、過度な景気変動が生じた場合には主体的かつ適切な対応が重要である」としており、利上げが経済に与える悪影響を懸念していることを表明している。
 
政府は、表面的には日本銀行の金融政策判断を尊重する姿勢をとっているが、こうした発言からは、利上げに否定的な姿勢がうかがえる。今後も日本銀行の執行部は、政府からの利上げけん制を受けることが考えられる。今回の利上げに際し、執行部は事前に政府側に対して、審議委員が利上げに傾き、会合での多数決による決定は避けられない見通しであることを説明した可能性がある。

今後の金融政策方針について2つの相矛盾する方向性

今回の対外公表文では、先行きの金融政策運営方針から「実質金利が極めて低い水準にある」との表現が削除された。これは、政策金利が相当程度引き上げられ、中立金利に接近してきたことで、今までのように非常に低い金利を半年に1回のような一定のペースで引き上げるという政策方針が見直されたことを示唆するだろう。今後はなお不確実な政策金利の中立水準を探りながら、従来以上に経済、物価、金融情勢に注意を払いつつ慎重な利上げを模索する局面に移行していくことになる。
 
他方で今回の会合では、基調的な物価上昇率が2%の「物価安定目標」を超えて上振れていくリスクが初めて指摘された。基調的な物価上昇率が目標水準を下回っている状態ではそうしたリスクを警戒する必要がなかったが、目標水準に接近してきたことで、そうしたリスクにより配慮が必要になったとの説明だ。
 
そうしたリスクが顕在化すれば、利上げのペースを上げる、あるいは大幅な利上げを通じて基調的な物価上昇率が目標水準を上回ることを回避する必要が出てくる。こうした考えは、物価情勢次第では従来よりも速いペースで政策金利を引き上げる可能性を示すものだろう。
 
このように、今回の会合では、今後の金融政策方針について2つの相矛盾する方向性が示された。前者を重視する傾向が強いのは執行部、後者を重視する傾向が強いのは非執行部となるのではないか。執行部と非執行部との金融政策姿勢の違いは、今後も続き、それが金融政策の見通しの不確実性をかなり高めている。利上げをけん制する政府との調整もまた、その不確実性を高める要因だろう。

プロフィール

  • 木内 登英のポートレート

    木内 登英

    金融ITイノベーション事業本部

    エグゼクティブ・エコノミスト

    

    1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。