片山発言は骨太ショックで調整した債券市場への口先介入との観測も
片山財務・金融担当相は7月10日の閣議後の会見で、骨太の方針の中で示された成長投資の成果を国民にどのように還元するか、との趣旨の質問に対して、「GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)をはじめとする年金基金に、日本の金融資産にさらに投資してもらう方向で後押しする方策を追求したいと考えている」と表明した。
GPIFは、国内外の債券と株式に25%ずつ等分に投資しているが、一定程度の投資比率の変動は認められている。
片山大臣の発言は、GPIFが国内の株式、債券、不動産などへの投資拡大を意図しているものと受け止められ、10日の金融市場では株高、円高、債券高の「トリプル高」が生じている。
骨太の方針では、政府による日本銀行の利上げ牽制とも受け止められる表現が盛り込まれる方向であるとともに、そこに盛り込まれる戦略17分野の官民投資が財政環境を悪化させるとの懸念が浮上していた。いわゆる「骨太ショック」である。これらは、長期金利の上昇や円安を促す。また、長期金利の上昇を受けて、足もとの日本株はやや軟調に推移していた。
片山大臣の発言は、特に上昇が顕著になっていた長期金利の安定を狙った「口先介入」とも受け止められている。発言の意図は実際には不明であるが、10日の10年国債利回りは一時0.1%ポイント程度低下するなど、金融市場に大きな影響を与えた。
GPIFは、国内外の債券と株式に25%ずつ等分に投資しているが、一定程度の投資比率の変動は認められている。
片山大臣の発言は、GPIFが国内の株式、債券、不動産などへの投資拡大を意図しているものと受け止められ、10日の金融市場では株高、円高、債券高の「トリプル高」が生じている。
骨太の方針では、政府による日本銀行の利上げ牽制とも受け止められる表現が盛り込まれる方向であるとともに、そこに盛り込まれる戦略17分野の官民投資が財政環境を悪化させるとの懸念が浮上していた。いわゆる「骨太ショック」である。これらは、長期金利の上昇や円安を促す。また、長期金利の上昇を受けて、足もとの日本株はやや軟調に推移していた。
片山大臣の発言は、特に上昇が顕著になっていた長期金利の安定を狙った「口先介入」とも受け止められている。発言の意図は実際には不明であるが、10日の10年国債利回りは一時0.1%ポイント程度低下するなど、金融市場に大きな影響を与えた。
トランプ政権は公的年金基金の海外投資拡大を円安誘導と批判
昨年9月12日に公表された為替に関する日米共同声明では、「年金基金などの政府投資機関は、リスク調整後のリターンと分散投資の目的で海外に投資を継続し、為替レートを標的にしない」という文言が盛り込まれた(コラム「日米の為替共同声明:トランプ政権の円安警戒はなお残る」、2025年9月16日)。
これは、米国財務省が昨年6月に公表した為替報告書における日本に関する以下の記述を繰り返したものである。「大規模な公的年金基金など政府系投資機関は、リスクを加味した収益や分散投資のために海外に投資すべきで、競争力を念頭に為替相場を目的にすべきではない」(コラム「米国為替報告書は日銀の利上げによる円安是正効果を評価:ベッセント財務長官のFRB議長起用でトランプ政権の政策は関税からドル安に軸足を移すか」、2025年6月13日)。
日本は公的年金基金の海外投資を通じて、事実上円安誘導をしているのではないか、との疑念をトランプ政権は引き続きいだいており、またドル高円安に不満を持っているとみられる。GPIF外貨建て資産の比率を下げ、国内資産の比率を高める方向でポートフォリオを見直せば、それはトランプ政権の意向にも沿ったものとなる。
これは、米国財務省が昨年6月に公表した為替報告書における日本に関する以下の記述を繰り返したものである。「大規模な公的年金基金など政府系投資機関は、リスクを加味した収益や分散投資のために海外に投資すべきで、競争力を念頭に為替相場を目的にすべきではない」(コラム「米国為替報告書は日銀の利上げによる円安是正効果を評価:ベッセント財務長官のFRB議長起用でトランプ政権の政策は関税からドル安に軸足を移すか」、2025年6月13日)。
日本は公的年金基金の海外投資を通じて、事実上円安誘導をしているのではないか、との疑念をトランプ政権は引き続きいだいており、またドル高円安に不満を持っているとみられる。GPIF外貨建て資産の比率を下げ、国内資産の比率を高める方向でポートフォリオを見直せば、それはトランプ政権の意向にも沿ったものとなる。
日本銀行の独立性尊重、財政健全化の観点から市場の信認を得る財政運営が重要
実際には、国民の年金資産を扱うGPIFが、政府の都合で運用資産のポートフォリオを見直すことは認められておらず、まだ適切でもない。政府が円安や債券安の流れを変えようとするのであれば、日本銀行の独立性を最大限尊重することや、財政健全化の観点から市場の信認を得る財政運営を心掛けることが王道となる。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。