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党内の反対意見を押し切り消費税減税を閣議決定へ

自由民主党は3日に、税制調査会と社会保障制度調査会の合同会議を開き、来年4月から食料品の消費税率引き下げを2年間1%にする政府の基本方針を事実上了承した。5日にも党の政調審議会と総務会での了承を得て党内手続きを終え、閣議決定する方向だ。高市首相は4日の党役員会で、9月に税制改正大綱を決定し、秋の臨時国会に消費税減税の関連法案を提出する考えを示した。

3日の合同会議では反対意見も出されたが、反対派は発言を終えると退出し、最後はほぼ賛成派が残る中で了承されたとされる。ただし賛成派の間でも各種の問題点は認識されており、消極的な支持が多かったのではないか。反対意見を押さえつけるような強引な議論の進め方にも批判が出ている。

党内での主な反対意見

報道によると、消費税減税への主な反対意見は以下の通りだ。

【石破茂 氏】消費税減税の財源見つかっていない。社会保障費がさらに増えていくなかで、消費税減税は適切なのか。さらに検討を続けるべき。

【小渕優子 氏】食料品の消費税率1%案に大変大きな懸念を持っている。社会保障の財源をどう確保するのか。つけは次の世代に回ってくる。農家や小規模事業者への支援策も見えない。

【村上誠一郎 氏】消費税減税で円の信用は失われ、ますます円安になり物価高対策に逆行する。

【古川禎久 氏】消費税減税は党の公約ではない。党内で議論をやり直すべき。消費税減税は社会保障の財政基盤を揺るがす。財源の見通しがないまま減税を決めれば、市場からの信認を失い、国民生活に甚大な悪影響を与える。物価高対策としては、減税よりも給付による支援の方が中低所得者に重点的に対応できる。

古川氏は、単に反対姿勢を示しただけでなく、意見書を提出して、上記の論点を挙げて減税反対を明確に表明した。

金融市場の財政悪化懸念は強まる方向

消費税減税の主な問題点については、自民党内のこうした反対意見でほぼカバーされているのではないか(コラム「食料品の消費税率引き下げの安定財源確保は極めて困難」、2026年7月29日、「高市首相が食料品の消費税率引き下げ方針を正式に発表:財源は明示されず、財政悪化への懸念が一段と強まる方向」、2026年7月31日)。

財源確保の目途がほとんど立っておらず、また、2年後に食料品の消費税率を元の水準に戻すことができる保証がない。消費税率を元の水準に戻すことができずに、減税措置が恒久化する可能性を踏まえると、恒久財源に転換できるような安定した財源が確保されない限り、金融市場の財政悪化懸念は緩和されないだろう。

一方、消費税減税を赤字国債で賄うことはしない、という高市首相の約束についても、それが守られるかどうかについて、金融市場は懐疑的だ。日米協調介入によって、一時的に円安や債券安は抑えられている感もあるが、その効果は持続的ではないだろう。

消費税減税に伴う財政悪化懸念がさらなる円安を招けば、物価が一段と上昇し、物価高対策として位置付けられている消費税減税の効果を削いでしまう。それは、長期金利上昇とともに国民生活に逆風となる。

(参考資料)
「食料品消費税1%了承」、「『首相判断』減税押し切る」、2026年8月4日、日本経済新聞
「消費税減税 あすにも閣議決定」、「自民、議論幕引き」、2026年8月4日、読売新聞

プロフィール

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    木内 登英

    金融ITイノベーション事業本部

    エグゼクティブ・エコノミスト

    

    1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。