1.中東情勢緊迫化の影響で低迷した4~6月期GDP
4~6月期GDPは3四半期連続のプラス成長も内需は低迷
内閣府は8月17日に4~6月期のGDP(一次速報)を公表した。実質GDPは前期比+0.3%、前期比年率+1.1%と、3四半期連続のプラスとなった。しかしこれは、8月12日に発表されたESPフォーキャスト8月調査の年率+1.67%を下回った。
予想比で顕著に下振れたのは、前期比-0.0%と小幅マイナスとなった実質個人消費だ。事前予想では前期比+0.4%程度と堅調が見込まれていた。
実質設備投資も前期比—1.2%と2四半期連続でマイナス、実質住宅投資も前期比—0.5%と民間内需は総崩れの様相となった。
そうした中でも4~6月期のGDPがプラス成長を維持できたのは、外需の拡大による。内需の成長寄与が前期比-0.2%と3四半期ぶりにマイナスになったのに対して、外需は前期比+0.5%と上振れた。
しかし外需の上振れは、輸出の堅調によるものではない。実質輸出は前期比+0.5%と前期の同+1.7%から大きく増加率を低下させた。一方、GDPの控除項目である実質輸入が前期比-1.5%と大幅なマイナスとなったことが、外需の高い成長寄与を生じさせ、3四半期連続のプラス成長をもたらした。しかしこれは、経済活動への逆風の証でもある。
ホルムズ海峡の事実上の封鎖によって原油輸入が急減したことが、実質輸入を一時的に減少させ、成長率を押し上げた面があると考えられる。国家石油備蓄の取り崩しによる公的在庫投資の下振れによって、この石油関連輸入の減少による景気押し上げ効果は、一部相殺されているとみられる。それは、実質公的在庫投資の成長寄与度が前期比-0.5%と大幅なマイナスになったことから確認できる。
実質民間在庫投資の成長寄与度が前期比+0.3%となったことも、成長率を下支えしたが、これは、原油価格高騰の影響から実質個人消費や実質設備投資が下振れたため、後ろ向きの在庫投資の積み増し(売れ残り)が生じた結果と考えられる。
このように、4~6月期GDPは3四半期連続のプラス成長を維持したものの、中東情勢の悪化、原油価格高騰の影響を受けて経済活動は明確に悪化したことを統計全体では示している。
予想比で顕著に下振れたのは、前期比-0.0%と小幅マイナスとなった実質個人消費だ。事前予想では前期比+0.4%程度と堅調が見込まれていた。
実質設備投資も前期比—1.2%と2四半期連続でマイナス、実質住宅投資も前期比—0.5%と民間内需は総崩れの様相となった。
そうした中でも4~6月期のGDPがプラス成長を維持できたのは、外需の拡大による。内需の成長寄与が前期比-0.2%と3四半期ぶりにマイナスになったのに対して、外需は前期比+0.5%と上振れた。
しかし外需の上振れは、輸出の堅調によるものではない。実質輸出は前期比+0.5%と前期の同+1.7%から大きく増加率を低下させた。一方、GDPの控除項目である実質輸入が前期比-1.5%と大幅なマイナスとなったことが、外需の高い成長寄与を生じさせ、3四半期連続のプラス成長をもたらした。しかしこれは、経済活動への逆風の証でもある。
ホルムズ海峡の事実上の封鎖によって原油輸入が急減したことが、実質輸入を一時的に減少させ、成長率を押し上げた面があると考えられる。国家石油備蓄の取り崩しによる公的在庫投資の下振れによって、この石油関連輸入の減少による景気押し上げ効果は、一部相殺されているとみられる。それは、実質公的在庫投資の成長寄与度が前期比-0.5%と大幅なマイナスになったことから確認できる。
実質民間在庫投資の成長寄与度が前期比+0.3%となったことも、成長率を下支えしたが、これは、原油価格高騰の影響から実質個人消費や実質設備投資が下振れたため、後ろ向きの在庫投資の積み増し(売れ残り)が生じた結果と考えられる。
このように、4~6月期GDPは3四半期連続のプラス成長を維持したものの、中東情勢の悪化、原油価格高騰の影響を受けて経済活動は明確に悪化したことを統計全体では示している。
7~9月期GDPはマイナス成長か
中東情勢の悪化、原油価格高騰の影響は、7~9月期にはさらに本格化することが予想される。原油価格高騰による交易条件の悪化は、今後の日本経済に大きな逆風となるだろう。それを示唆したのが、前期比-0.4%、前期比年率-1.8%と大幅に悪化した4~6月期の実質GNI(国民総所得)だ。
輸入物価の上昇は、企業のコスト高、収益の圧迫を通じて4~6月期の設備投資を悪化させた面があるが、7~9月期には企業間で取引される原油関連財の価格上昇の影響が消費財に本格的に波及するため、個人消費も一段と悪化するとみられる。
その結果、7~9月期の実質GDPは前期比マイナスに陥る可能性を見ておきたい。
輸入物価の上昇は、企業のコスト高、収益の圧迫を通じて4~6月期の設備投資を悪化させた面があるが、7~9月期には企業間で取引される原油関連財の価格上昇の影響が消費財に本格的に波及するため、個人消費も一段と悪化するとみられる。
その結果、7~9月期の実質GDPは前期比マイナスに陥る可能性を見ておきたい。
長期景気拡大が終わる可能性はあるか
現在は、2020年5月を谷とする戦後最長の景気拡大期にあるとみられているが、中東情勢の悪化、原油価格高騰という外的ショックに見舞われ、その持続性に不安が生じている。国内経済は既に「グロースリセッション」の状態にあるものと考えられる。そうしたもと、さらなる原油価格高騰、円安進行による物価高、長期金利の上昇などの外的ショックが生じれば、国内景気は緩やかな後退期に陥る可能性もあるだろう。
一方、世界規模でのAIブームが日本経済を下支えする好影響も指摘されているが、4~6月期のGDP統計では、それを顕著には確認することはできなかった。実質設備投資は2四半期連続でマイナスとなった。また、米国を中心とするAI投資ブームは日本からの関連財の輸出増加を通じて日本経済にも一定程度の恩恵をもたらしていると見られる。しかし、それが主に表れる中間財、情報関連財はなお力強さを欠いている。むしろ輸出が堅調なのは、自動車、資本財といった従来型の輸出品だ(日本銀行の実質輸出指数による)。
一方、世界規模でのAIブームが日本経済を下支えする好影響も指摘されているが、4~6月期のGDP統計では、それを顕著には確認することはできなかった。実質設備投資は2四半期連続でマイナスとなった。また、米国を中心とするAI投資ブームは日本からの関連財の輸出増加を通じて日本経済にも一定程度の恩恵をもたらしていると見られる。しかし、それが主に表れる中間財、情報関連財はなお力強さを欠いている。むしろ輸出が堅調なのは、自動車、資本財といった従来型の輸出品だ(日本銀行の実質輸出指数による)。
2.本格化する物価高と原油高、円安のリスク
10月にかけて値上げの動きはなお強まる
帝国データバンクの「食品主要195社価格改定動向調査」によると、2025年9月以降、飲食料品の値上げ品目数は、前年同月比で一時減少傾向を辿っていた。2022年以降の急速な円安による輸入原材料価格の上昇を製品価格に転嫁する動きが、一巡してきたためと考えられる(図表1)。
この時期には、高騰していたコメの価格も低下しており、物価高による家計負担は相応に軽減されていた。
しかしそうした流れを大きく変えたのは、中東情勢緊迫化による原油価格高騰だ。原油価格高騰の影響はガソリンや電気代・ガス代などを除けば、数か月から半年程度で製品価格に多く転嫁されると考えられる。WTI原油先物価格は、今年3月に一気に1バレル110ドル台を超えた。その影響を受けて、飲食料品の値上げ品目数は7月から前年同月比で再び増加に転じたと考えられる。
この時期には、高騰していたコメの価格も低下しており、物価高による家計負担は相応に軽減されていた。
しかしそうした流れを大きく変えたのは、中東情勢緊迫化による原油価格高騰だ。原油価格高騰の影響はガソリンや電気代・ガス代などを除けば、数か月から半年程度で製品価格に多く転嫁されると考えられる。WTI原油先物価格は、今年3月に一気に1バレル110ドル台を超えた。その影響を受けて、飲食料品の値上げ品目数は7月から前年同月比で再び増加に転じたと考えられる。
図表1 飲食料品の値上げ品目数の推移


原油価格と為替が現状維持であれば11月にも物価の安定傾向が確認されるか
7月から9月が、原油価格高騰の影響から値上げの動きが本格化する時期と考えられる(コラム「秋にかけて値上げの動きが本格化:原油価格と為替が現状のままであれば11月以降値上げは徐々に沈静化へ」、2026年8月10日)。それ以降の値上げ、物価動向については、原油価格と為替動向に左右されるだろう。
原油価格が現状の1バレル70ドル台から80ドル前後、ドル円レートが1ドル160円前後で推移する場合、食料品の値上げ品目数は前年同月比で9月がピークになると予想される。
ただし、四半期の初めの月で値上げ品目数が例年多くなりやすい10月には、まだ消費者が値上げ増加の一巡を実感しにくいだろう。それを実感できるのは11月以降と見ておきたい。
このように、10月までは物価上昇率が高まり、家計の負担感が増す。これは、来年4月から予定されている食料品の消費税率の引き下げでは対応できないと考えられる。来年4月に予定される消費税率の引き下げは、物価上昇率の高まりによる家計負担増加が一巡した後のタイミングで行われることになるだろう。
原油価格が現状の1バレル70ドル台から80ドル前後、ドル円レートが1ドル160円前後で推移する場合、食料品の値上げ品目数は前年同月比で9月がピークになると予想される。
ただし、四半期の初めの月で値上げ品目数が例年多くなりやすい10月には、まだ消費者が値上げ増加の一巡を実感しにくいだろう。それを実感できるのは11月以降と見ておきたい。
このように、10月までは物価上昇率が高まり、家計の負担感が増す。これは、来年4月から予定されている食料品の消費税率の引き下げでは対応できないと考えられる。来年4月に予定される消費税率の引き下げは、物価上昇率の高まりによる家計負担増加が一巡した後のタイミングで行われることになるだろう。
コメの価格下落が家計の負担を一部軽減する
一方、当面、値上げの動きが広がる中で、唯一価格が下落して、物価高による家計負担増加を軽減するのがコメの価格だ。コメの価格は6月に前年同月比-8.7%と下落している(図表2)。在庫水準が高い中、当面は価格下落が続くだろう。9月から流通が本格化する新米は、前年比で4割程度下落する可能性がある。これは、消費者物価上昇率を0.25%程度押し下げる計算だ。
このように、コメの価格の下落の影響もあり、物価上昇による家計負担感は10月にかけて一時的に強まるものの、11月以降、年末にかけては軽減されていくと予想する。
ただし、今後原油価格の上昇、円安の進行が見られれば、家計負担感の軽減は年明け後にずれ込むことになるだろう。
このように、コメの価格の下落の影響もあり、物価上昇による家計負担感は10月にかけて一時的に強まるものの、11月以降、年末にかけては軽減されていくと予想する。
ただし、今後原油価格の上昇、円安の進行が見られれば、家計負担感の軽減は年明け後にずれ込むことになるだろう。
図表2 コメの価格と消費数量


原油100ドルで物価は0.45%上昇、年間家計負担は2万円に
原油価格が70ドル程度で安定していれば、春頃までの原油価格高騰の物価押し上げ効果は、今年7月から10月に顕著になった後、年末にかけては後退し、年内にも物価の安定が確認されることが予想される。
しかし原油価格が再び90ドル程度、あるいはそれ以上まで上昇する状態となれば、原油価格高騰を受けた物価上昇率の上振れは来年まで続いてしまう。実質賃金の低下が個人消費を悪化させる構図が、より長期化するだろう。
この先の原油価格について、90ドルと100ドルの2つのケースを想定したい。90ドルは、ホルムズ海峡とバベルマンデブ海峡の二重封鎖が数か月続くとの市場の観測を反映したもの、100ドルは半年、あるいはそれ以上続くとの市場の観測を反映したものとする。
以下の表(図表3)は、この2つのケースで、それぞれ実質GDP、物価(個人消費デフレータ)、年間家計負担額(4人世帯)への影響を試算したものだ(コラム「ホルムズ海峡とバベルマンデブ海峡の二重封鎖のリスク:原油100ドル定着で物価は0.45%上昇、年間家計負担は2万円に」、2026年7月27日)。
原油価格の上昇は、90ドルケースで実質GDPを0.17%、100ドルケースで0.26%押し下げる計算だ。経済には相応の打撃となる。他方で物価(個人消費デフレータ)は、それぞれ+0.30%、+0.45%押し上げられる。
一方、物価の上昇は、家計に経済的な負担をもたらす。それは90ドルケースでは年間1.3万円、100ドルケースでは年間2.0万円と試算される。
ただしこの試算結果は、原油価格上昇の影響のみを考慮したものだ。ホルムズ海峡とバベルマンデブ海峡の二重封鎖となれば、企業は再び原油やナフサがいずれ不足することを警戒し、自衛的に減産を進める可能性がある。この場合、石油関連製品の川下の日用品には深刻な品不足が再び生じ、価格が高騰するだろう。
そのような事態となれば、上記の試算値で、実質GDPの押し下げ効果、物価の押し上げ効果、家計負担の増加効果は、それぞれ2倍程度に膨らむことも考えられる。
しかし原油価格が再び90ドル程度、あるいはそれ以上まで上昇する状態となれば、原油価格高騰を受けた物価上昇率の上振れは来年まで続いてしまう。実質賃金の低下が個人消費を悪化させる構図が、より長期化するだろう。
この先の原油価格について、90ドルと100ドルの2つのケースを想定したい。90ドルは、ホルムズ海峡とバベルマンデブ海峡の二重封鎖が数か月続くとの市場の観測を反映したもの、100ドルは半年、あるいはそれ以上続くとの市場の観測を反映したものとする。
以下の表(図表3)は、この2つのケースで、それぞれ実質GDP、物価(個人消費デフレータ)、年間家計負担額(4人世帯)への影響を試算したものだ(コラム「ホルムズ海峡とバベルマンデブ海峡の二重封鎖のリスク:原油100ドル定着で物価は0.45%上昇、年間家計負担は2万円に」、2026年7月27日)。
図表3 原油価格上昇の経済効果


原油価格の上昇は、90ドルケースで実質GDPを0.17%、100ドルケースで0.26%押し下げる計算だ。経済には相応の打撃となる。他方で物価(個人消費デフレータ)は、それぞれ+0.30%、+0.45%押し上げられる。
一方、物価の上昇は、家計に経済的な負担をもたらす。それは90ドルケースでは年間1.3万円、100ドルケースでは年間2.0万円と試算される。
ただしこの試算結果は、原油価格上昇の影響のみを考慮したものだ。ホルムズ海峡とバベルマンデブ海峡の二重封鎖となれば、企業は再び原油やナフサがいずれ不足することを警戒し、自衛的に減産を進める可能性がある。この場合、石油関連製品の川下の日用品には深刻な品不足が再び生じ、価格が高騰するだろう。
そのような事態となれば、上記の試算値で、実質GDPの押し下げ効果、物価の押し上げ効果、家計負担の増加効果は、それぞれ2倍程度に膨らむことも考えられる。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。