為替介入なく5円近く円安修正が進むという異例の展開に
7月末の日米協調介入の効果が薄れる形で、為替市場では1ドル160円程度まで円安が進んでいたが、9月2日から3日にかけては、円安の修正が大きく進んだ。3日の米国市場では、1ドル155円台前半に達した。この間の円安修正の幅は5円程度に及んだ。
この間、日本あるいは米国が為替介入を実施した形跡は見られない。為替介入で為替レートが動く場合、例えば日本政府が10兆円規模でドル売り円買い介入を行う場合には、1~2時間など短時間のうちにドル円レートは5円近く円高に振れるような動きがみられる。しかし足元の円安修正は、もっとゆっくり進行しつつも、その幅は為替介入実施時と同程度にまで達している。こうした為替市場の動きはかなり異例なものに映る。
足もとで円安修正のきっかけとなった要因は複数考えられる。第1は、9月2日に、タカ派とされる高田日銀審議委員が「(0.25%ポイントの利上げ幅が)必ず決まっているというものではない」「結果として連続利上げということも、もしかしたらあり得る」などと発言し、日本銀行の利上げ観測が一段と高まったことだ。
高田委員が利上げに前向きな発言を行うことは、事前に予想されていたものの、想定以上に前向きであったことから、9月の利上げ幅が0.25%ではなく0.5%になる、連続利上げになる、などの観測が浮上し、それが円安修正のきっかけになったと考えられる。
第2は、9月3日に、GPIFが基本ポートフォリオを見直し、国内資産の割合を高めるとの観測が生じたことだ。それが、海外から国内への資金回帰が円高圧力をもたらすとの見方につながった。
第3は、当局の為替介入への警戒感が強まったことだ。
第4は、高市首相が近く行う内閣改造、自民党役員人事で鈴木幹事長、麻生副総裁を続投させるとの見方が広がったことだ(コラム「内閣改造と自民党役員人事と金融市場の注目点:政策への影響はあるか」、2026年9月3日)。消費税率引き下げなど積極財政には本来慎重とされる両者を政権安定の観点から続投させることで、高市政権の積極財政姿勢がさらに加速するとの見方がやや後退した。
第5は、米国の8月ADP雇用統計が市場予想に反して7月から伸びが鈍化したほか、ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁がインフレは緩やかな鈍化基調にあり、金利は「良い位置にある」と発言したことから、米国での利上げ観測がやや後退し、長期金利が低下したことだ。
この間、日本あるいは米国が為替介入を実施した形跡は見られない。為替介入で為替レートが動く場合、例えば日本政府が10兆円規模でドル売り円買い介入を行う場合には、1~2時間など短時間のうちにドル円レートは5円近く円高に振れるような動きがみられる。しかし足元の円安修正は、もっとゆっくり進行しつつも、その幅は為替介入実施時と同程度にまで達している。こうした為替市場の動きはかなり異例なものに映る。
足もとで円安修正のきっかけとなった要因は複数考えられる。第1は、9月2日に、タカ派とされる高田日銀審議委員が「(0.25%ポイントの利上げ幅が)必ず決まっているというものではない」「結果として連続利上げということも、もしかしたらあり得る」などと発言し、日本銀行の利上げ観測が一段と高まったことだ。
高田委員が利上げに前向きな発言を行うことは、事前に予想されていたものの、想定以上に前向きであったことから、9月の利上げ幅が0.25%ではなく0.5%になる、連続利上げになる、などの観測が浮上し、それが円安修正のきっかけになったと考えられる。
第2は、9月3日に、GPIFが基本ポートフォリオを見直し、国内資産の割合を高めるとの観測が生じたことだ。それが、海外から国内への資金回帰が円高圧力をもたらすとの見方につながった。
第3は、当局の為替介入への警戒感が強まったことだ。
第4は、高市首相が近く行う内閣改造、自民党役員人事で鈴木幹事長、麻生副総裁を続投させるとの見方が広がったことだ(コラム「内閣改造と自民党役員人事と金融市場の注目点:政策への影響はあるか」、2026年9月3日)。消費税率引き下げなど積極財政には本来慎重とされる両者を政権安定の観点から続投させることで、高市政権の積極財政姿勢がさらに加速するとの見方がやや後退した。
第5は、米国の8月ADP雇用統計が市場予想に反して7月から伸びが鈍化したほか、ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁がインフレは緩やかな鈍化基調にあり、金利は「良い位置にある」と発言したことから、米国での利上げ観測がやや後退し、長期金利が低下したことだ。
強まるトランプ政権の日本の経済政策についての修正要請
ただし、為替介入によらずに、円安修正が大きく進んだ最大の理由は、上記の要因とも関わるが、トランプ政権から日本の経済政策の修正を求める圧力だろう。
G20財務相・中央銀行総裁会議の場でも、ベッセント財務長官が植田日銀総裁に利上げへの期待を表明し、それを米財務省が公表した(コラム「米財務省がベッセント財務長官と植田総裁の会談内容を公表」、2026年9月2日)。これは、日本銀行に対する明確な利上げ要請に近いものであり、同時に、高市政権に対しては、日本銀行の利上げを妨げないように釘を刺すものであったと考えられる。
さらに、ベッセント財務長官は「日本に(財政拡張と金融緩和に前向きな)リフレ政策をやめるべきだと伝えた」との報道が流れたことが、金融市場に大きな影響を与えたとみられる。
7月末の日米協調介入で日本に大きな貸しを作ったと考えるトランプ政権は、日本の経済政策への圧力をより強めた。また、ドル円レートが再び1ドル160円台に戻ったことや、その影響も受けて10年国債利回りが3%に乗せたことで、ドル高・円安や長期金利の上昇が米国及び世界経済に与える悪影響への警戒を改めて強めたトランプ政権が、日本に対する政策修正の圧力を一段と強めたように見える。このことが、足もとの円安修正をもたらしている面が大きいのではないか。
G20財務相・中央銀行総裁会議の場でも、ベッセント財務長官が植田日銀総裁に利上げへの期待を表明し、それを米財務省が公表した(コラム「米財務省がベッセント財務長官と植田総裁の会談内容を公表」、2026年9月2日)。これは、日本銀行に対する明確な利上げ要請に近いものであり、同時に、高市政権に対しては、日本銀行の利上げを妨げないように釘を刺すものであったと考えられる。
さらに、ベッセント財務長官は「日本に(財政拡張と金融緩和に前向きな)リフレ政策をやめるべきだと伝えた」との報道が流れたことが、金融市場に大きな影響を与えたとみられる。
7月末の日米協調介入で日本に大きな貸しを作ったと考えるトランプ政権は、日本の経済政策への圧力をより強めた。また、ドル円レートが再び1ドル160円台に戻ったことや、その影響も受けて10年国債利回りが3%に乗せたことで、ドル高・円安や長期金利の上昇が米国及び世界経済に与える悪影響への警戒を改めて強めたトランプ政権が、日本に対する政策修正の圧力を一段と強めたように見える。このことが、足もとの円安修正をもたらしている面が大きいのではないか。
トランプ政権の圧力で日本の経済政策が変わるとの期待は市場に持続的な影響
為替介入の効果は一時的なものに終わりやすいが、トランプ政権からの圧力によって日本銀行の利上げが進む、高市政権の積極財政政策が修正されるとの期待が市場に強まれば、それは政策変更という経済ファンダメンタルズの変化への期待であることから、一時的ではなく持続的な影響を金融市場にもたらすだろう。
このように考えると、日米協調介入は、トランプ政権が日本の経済政策に本格的に介入する機会を与えることになり、それが円安・債券安に歯止めをかけ得るという点で、金融市場の大きな転換点になったと言えるのではないか。
このように考えると、日米協調介入は、トランプ政権が日本の経済政策に本格的に介入する機会を与えることになり、それが円安・債券安に歯止めをかけ得るという点で、金融市場の大きな転換点になったと言えるのではないか。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。