基調的な物価2%到達の判断と政策の局面変化
日本銀行は10月29日・30日に開く金融政策決定会合で、政策金利の据え置きを決め、9月の会合に続く連続利上げを実施しない可能性が高い。一方、基調的な物価上昇率が2%の目標水準に到達した、と判断することが見込まれる(コラム「日本銀行は2%の物価目標水準に到達の判断を示すか」、2026年10月21日、「9か月ぶりの2%台となった9月CPIと日銀決定会合」、2026年10月23日)。
9月分全国CPI(消費者物価指数)で、生鮮食品を除くコアCPIは前年同月比+2.1%と8月の+1.7%から上振れ、昨年12月以来9か月ぶりの2%台となったこと、トランプ政権からの働きかけもあり、政府からの利上げへの牽制が弱まったことで、日本銀行はこのタイミングで判断を示すことを選択した可能性がある。
その布石は、既に前回9月の会合で打たれていたとも考えられる。9月の会合後の記者会見で植田総裁は「政策の局面が変化した」と説明したが、それは、金融政策がこれまでの「物価を目標値の2%まで引き上げることを目指す段階」から、「物価を目標値の2%で安定させ、物価目標の達成を目指す段階」へと移ったことを意味するものだろう。
9月分全国CPI(消費者物価指数)で、生鮮食品を除くコアCPIは前年同月比+2.1%と8月の+1.7%から上振れ、昨年12月以来9か月ぶりの2%台となったこと、トランプ政権からの働きかけもあり、政府からの利上げへの牽制が弱まったことで、日本銀行はこのタイミングで判断を示すことを選択した可能性がある。
その布石は、既に前回9月の会合で打たれていたとも考えられる。9月の会合後の記者会見で植田総裁は「政策の局面が変化した」と説明したが、それは、金融政策がこれまでの「物価を目標値の2%まで引き上げることを目指す段階」から、「物価を目標値の2%で安定させ、物価目標の達成を目指す段階」へと移ったことを意味するものだろう。
当面は基調的な物価上昇率が目標値の2%を上回るリスクへの対応
他方、原油価格高騰などの影響により、基調的な物価上昇率が目標値の2%を上回るリスクがあることから、当面の金融政策は、それを回避することに重点が置かれる。それが、「利上げペースの加速」だ。9月には従来よりも短い約3か月の間隔で利上げが実施されたが、12月の決定会合でも0.25%の利上げが実施されるとみられ、「利上げペースの加速」の局面が続くだろう。
基調的な物価上昇率が2%の目標水準に到達したのであれば、本来、政策金利は中立水準に到達しているはずであるが、日本銀行は中立水準の不確実性が高いことから、それについては明確な判断を避けるだろう。
それでも、今後政策金利の引き上げが続くなか、政策金利が中立水準を上回り、金融政策が金融緩和の縮小という正常化局面から金融引き締め局面へと入っていく可能性が高まる。その場合には、政府からは金融引き締めによる景気への懸念が再び示される可能性があるだろう。
基調的な物価上昇率が2%の目標水準に到達したのであれば、本来、政策金利は中立水準に到達しているはずであるが、日本銀行は中立水準の不確実性が高いことから、それについては明確な判断を避けるだろう。
それでも、今後政策金利の引き上げが続くなか、政策金利が中立水準を上回り、金融政策が金融緩和の縮小という正常化局面から金融引き締め局面へと入っていく可能性が高まる。その場合には、政府からは金融引き締めによる景気への懸念が再び示される可能性があるだろう。
物価2%到達も「良い物価上昇」はなお実現せず
日本銀行は2013年1月に2%の物価目標を掲げた。それから約14年の長い時間を経て、ようやく基調的な物価上昇率が2%の目標値に到達したとの判断が示される。しかしながら、約14年前に日本銀行が目指した物価目標の達成は、本当のところでは、なお遠いと言えるだろう。経済の潜在力が向上し、需要が高まるなかで物価上昇率が持続的に高まるという「良い物価上昇」は、依然として見えていない。
過去数年の物価上昇率の上振れは、円安、原油高といった供給要因によるものであり、それは個人消費を抑制し、経済に打撃を与える「悪い物価上昇」である。そのため、持続的ではない。日本銀行は、来年から再来年にかけて1.75%~2.0%まで政策金利を引き上げることが予想されるが、供給要因による持続的でない物価上昇率の上振れは次第に収まり、物価上昇率、インフレ期待は低下していくことが予想される。その場合、日本銀行が政策金利の引き下げに転じる局面も、再来年以降は出てくるのではないか。
過去数年の高い物価上昇率は、日本銀行が目指してきた「良い物価上昇」ではなかった。ただし、それをきっかけに、過度な円安の原因となるなど、様々な潜在的な副作用を生じさせる異例の金融緩和策が、解消方向に修正されたのは、良いことだったと言える。
過去数年の物価上昇率の上振れは、円安、原油高といった供給要因によるものであり、それは個人消費を抑制し、経済に打撃を与える「悪い物価上昇」である。そのため、持続的ではない。日本銀行は、来年から再来年にかけて1.75%~2.0%まで政策金利を引き上げることが予想されるが、供給要因による持続的でない物価上昇率の上振れは次第に収まり、物価上昇率、インフレ期待は低下していくことが予想される。その場合、日本銀行が政策金利の引き下げに転じる局面も、再来年以降は出てくるのではないか。
過去数年の高い物価上昇率は、日本銀行が目指してきた「良い物価上昇」ではなかった。ただし、それをきっかけに、過度な円安の原因となるなど、様々な潜在的な副作用を生じさせる異例の金融緩和策が、解消方向に修正されたのは、良いことだったと言える。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。