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誰もが自立して活躍できる社会を目指して
性別、年齢、国籍、そして障がいの有無などに関係なく、誰もが活躍できる社会が世界レベルで期待されています。障がい者の雇用促進を目的として、2015年に設立されたNRIみらいは、障がい者一人ひとりが誇りを持って活躍できる職場や社会の実現に向けて、NRIグループならではのユニークな取り組みを重ねています。
障がい者雇用に関する調査・研究と情報発信
障がい者の雇用に関して、日本の企業はどんな課題を抱え、その解決に向けてどのような努力をしているのか。その実態を把握するため、野村総合研究所の特例子会社
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であるNRIみらいは、NRIと共同で2015年から毎年、上場企業および特例子会社を対象に「障害者雇用に関する実態調査」を実施しています。
これまでの調査結果から、親会社および特例子会社ともに障がい者雇用の重要性は認識しているものの、両者の間で期待する価値に温度差があることが分かりました。両者だけでなく、社会全体の理解を進めていくためには、障がい者雇用の価値を可視化することが重要です。さらには、障がい者の人材確保・育成、指導員の人材確保・育成に課題があることも分かってきました。
一方、NRIみらいは海外の障がい者雇用にも目を向け、2016年は北欧、2017年はドイツをそれぞれ訪問して現地調査を行っています。NRIみらいはそれらの調査から得た知見を、レポートやセミナーなどを通じて世の中に発信し、よりよい未来への模索と提言を行うことを、ミッションの一つにしています。
*1 特例子会社:障がい者の雇用促進のために特別な配慮をし、一定の条件を満たした子会社を指します。国からの認定を受けることで、特例子会社で雇用する障がい者は親会社が雇用しているものとみなされます。
仕事の価値や意味を理解し、能力を引き出す
NRIみらいは、障がい者の自立に向けた実践的な取り組みも行っています。例えば、先の調査結果でも明らかになった、「障がい者の人材育成」に関する課題について、NRIみらい代表取締役社長の足立 興治は次のように話します。
「障がい者は、障がいと関係のないところでは素晴らしい能力を持っている。その能力を引き出し、社会に価値を提供する仕事につなげていくことが、私たちの使命の一つだと考えています。そのための「工夫」と「協力」を大事にしています。」
![マッサージサービスを担当するNRIみらいの社員](/content/900023607.png)
NRIみらいの社員
具体的な例を示しますと、NRIみらいにはマッサージサービスを提供する、視覚障がいがある社員(ヘルスキーパー)が11名勤務しています。2016年には、ヘルスキーパー自身が主体的に取り組んで、自らの業務の見直しや、顧客(マッサージを受ける社員)満足度の向上などをテーマにしたプロジェクトを実施しました。日々、マッサージを行うヘルスキーパーにとって、こうしたプロジェクト運営は初めてのことです。しかし、自分たちで業務を一つひとつ見直し、顧客満足度調査ではアンケートの質問内容を考え、アンケートを実施し、集計結果を分析して、サービス改善につなげました。
「これが、社員の持てる力を最大限に引き出すということだと思っています。視覚に障がいがある点を除けば、彼らは健常者と変わりません。一般の企業で行っている事業活動に、どんどん取り組んでもらう予定です。」と、足立は社員の育成への想いを語ります。
もう一つの例として、知的障がいがある社員の中には、繰り返し行う作業を長時間にわたって取り組むことを得意として、入力文字のチェックや大量の書類を電子化する作業を担っている社員がいます。そのような場合、「単に作業を依頼するのではなく、その作業自体を必要としている人がいることと、全体のプロセスの中でその作業にどんな意味があるかを理解すること」を必ず伝えています。
こうした積み重ねによって、障がい者が仕事の意味を理解し、最終的には自立し、健常者と同様に一般の企業や職場で活躍する――そんな社会の実現を、NRIみらいは目指しています。
AI活用でさらに能力を発揮
![NRIみらい(株)社長 足立 興治](/content/900023606.png)
社長 足立 興治
「そのような理想の社会を実現するために、NRIみらいが取り組んでいる次の試みは、NRIグループならではと言えそうです。」と足立が続けます。
「実は、ITの活用によって実現できる、働き方の改革がたくさんあると思っています。その最たるものがAI(人工知能)です。AIが導入されれば、仕事のやり方にパラダイム変化が起き、障がい者が健常者とともに働ける社会になるものと期待しています。」
器用に何でもこなす人より、何か一つ優れた能力を持つ人の方が、AI時代には力を発揮できる――専門家の間では、こうした見方があります。それなら、AIは障がい者雇用と相性が良いのではないか、例えば、AIが指導員の役割を担いつつ、障がい者の能力を十分に発揮するツールになるのではないか、と足立は考えています。すでにNRIグループ内の有志によるAIチームとともに、実験的な取り組みについて検討を開始。NRIみらいの社員が担うテキストデータのチェック作業やデータ集計の作業などを材料に、AIの導入によって、さらに作業水準を高度化することを目指しています。
NRIは、調査・研究というシンクタンク機能と情報システムの構築・運用というITソリューションの機能によって、社会のさまざまな課題を解決してきました。これら二つのDNAを引き継ぐNRIみらいは、障がい者雇用に関するシンクタンク機能の構築を目指すとともに、障がい者の能力の発揮と自立を促すIT活用の機能によって、彼らが活躍できる未来社会をつくろうとしています。
障がい者が自立して活躍できる社会。それは少子高齢化が進む日本にとって、目指すべき未来像の一つです。その未来をつくるために、NRIみらいはさまざまな実践を重ねています。
「障害者雇用に関する実態調査」や人材のダイバーシティ、「NRIみらい」について興味があり、さらに詳しいことを知りたいと思う方のための情報として、以下を紹介します。
■ レポート
障がい者雇用におけるパフォーマンス向上と価値の見える化
http://www.nri.com/jp/knowledge/report/lst/2016/cc/1226
障がい者雇用におけるパフォーマンス向上と価値の見える化
-パート① 障がい者雇用実態調査報告-
障がい者雇用におけるパフォーマンス向上と価値の見える化
-パート② 事例調査編-
障がい者雇用におけるパフォーマンス向上と価値の見える化
-パート③ 北欧調査報告-
知的資産創造 2016年2月
企業価値を高める障がい者雇用のあり方
「経営実態調査」に見る障がい者雇用のポイント(1.29MB)