タスク処理領域におけるサーバーレスの仕組み構築ニーズに応える

デジタル化が加速し、新しいビジネスモデルの迅速な展開や、産業構造を根本から揺るがす変化への追随が即座に求められる昨今、時刻やイベントなどを起点とするジョブシステムの構築においても、設計から運用まで一貫してサポートできるサーバーレスの仕組みが求められています。しかしこれまで、ジョブシステムの構築には、順序性を担保した複数の処理を協調して実行するワークフロー機能⁴が欠かせないため、重厚な仕組みを用意しなければなりませんでした。

企業が安心して利用できるセキュアなジョブシステムを手軽にクラウドで構築するために、具体的には、「複数環境の構築」「開発・検証・本番での差異の無い環境構築」「定常運用におけるバックアップやリリースなどの仕組み構築」「障害対応の仕組み構築」などの実現が課題となっていました。
NRIデジタルは、「API Atelier」で培ったノウハウを「Job Atelier」に適用することで、上述の課題をすべて解決し、タスク処理領域においても、手軽にサーバーレスでシステムを構築できる製品を開発しました。

主な機能は、以下のとおりです（図1）。

図1：「Job Atelier」の提供機能

1. アプリケーションフレームワーク：AWS Step Functions（ワークフロー機能）、AWS Glue（タスク処理機能⁵）、AWS Lambda（同左） の構成に合わせた機能
2. AWS環境自動構築・複数環境対応：AWS CDKを採用した高い汎用性を実現
3. CI/CD⁶：環境単位でCI/CD環境を用意することで、さまざまなリリース方式に対応可能
4. テスト支援：CI内でアプリとデータを結合したテスト実施を支援する機能
5. システム運用・監視：非業務系の仕組みについてもサーバーレスな構成で構築

サーバーレスの仕組みは、必要な時だけコンピュータのリソースを使用し、待機電力等を削減できることから、コスト低減、ひいてはCO₂削減など社会全体のリソースの最適化にもつながります。NRIデジタルは、「Job Atelier」の提供を通じて、企業の情報システムのサーバーレス化を促進し、最適社会の共創を実現していきます。

• ¹  

  サーバーを管理することなくシステムを構築するための技術の総称。提供者の用意した仕組みの中でシステムを構築することで、利用者はOSや物理機器などの管理を提供者に任せ、その上で動くアプリケーションなどの開発へ集中することができます。利用した分だけ課金されるサービスも多いため、うまく利用することで運用負荷の削減やコスト最適化などの便益を受けることができます。一方で、サービスごとに制約もあるため、制約を理解しつつ、特性をうまく活用してシステムを構築する必要があります。

• ²  

  API（Application Programing Interface）とは、プログラムから利用できるインタフェースのことです。インタフェース、つまりどのように利用できるかという利用方法には様々な形態がありますが、WebAPIはその中でもインターネット越しに利用することができるものを指します。HTTPSなど、一般的な仕様のプロトコルを通じて利用します。

• ³  

  API Atelierの詳細は、https://www.nri-digital.jp/news/20210921-6166/をご参照ください。

• ⁴  

  複数の処理を、決められた順序に従い実行する仕組みのことです。他処理の待ち合わせ、並行処理、失敗時の後処理、承認待ちなど、処理の中身とは独立して考えるべきことも多く、処理主体から独立した仕組みとして構築されることも多いです。

• ⁵  

  特定の処理をまとめて行うような仕組みを、本文ではタスク処理機能と呼んでいます。ジョブなどと呼ばれることもあります。前述のワークフロー機能の中に組み込むことで、複数の処理を順番に処理していく仕組みを構築することが可能です。

• ⁶  

  継続的インテグレーション/継続的デリバリー。テストやリリースのプロセスを自動的に行う仕組みです。