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デジタルによって変わるモノの運ばれ方

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新型コロナウイルス感染症の影響で、EC(電子商取引)やフードデリバリーの利用が伸び、家にモノを届けるサービスの取り扱い個数が大きく増加しています。
その一方で、モノを運ぶ現場は、ここ数年来「宅配クライシス」と呼ばれるなど人手不足によるオペレーション上の制約が深刻です。もともとアナログで非効率な面も多かった業界のため、ここにきてオペレーションの効率化が急務となってきています。物流業界においても、デジタル技術を活用した業務改革が待ったなしの状況と言えるでしょう。
それでは、この先を展望すると、物流業界にはどのような変化が訪れるのでしょうか。5年~10年後には、一体モノがどのように運ばれるようになるでしょうか。

いつでもどこでも荷物を受け取れる

技術の進展に伴い、自動運転車、ロボット、ドローンを用いた無人配送が浸透すると、ドライバーの人数や勤務時間によるオペレーションの制約をなくすことができます。また、そうなると、荷物をまとめて一度に運ばずに、荷物を受け取る人の都合に合わせて1つ1つ運ぶことができるようになる可能性があります。もちろんコスト面での課題はありますが、宅配ニーズの大きい都市部を中心に、ほしい時に、ほしい場所に届けてもらうことができるようになるでしょう。

人口減少の進む地方部では、モノもヒトもサービスも一緒に運ぶ

一方、配達個数が少なく今後さらに人口が減少していく地方部では、無人配送が実現したとしても、サービス水準の向上よりもいかに配送サービスを維持するかが大きな課題になります。既に一部地域では、ヒトとモノを一緒に運ぶ「貨客混載」の取り組みが始まっています。この流れは今後も進み、ヒトやモノの移動が一緒になって提供されるエリアは拡大していく可能性があります。さらに、地方の輸送インフラの維持に向けて、現在は個別に提供されている移動販売、新聞配達、訪問家電修理のような移動を伴うサービスも、全て一緒に提供されるようになることが考えられます。

より環境負荷の少ない運び方が選ばれる

政府が2050年のカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを宣言するなど、社会全体で環境負荷低減が大きな課題となっています。そのため、モノの配送にも環境負荷低減の要請は一層強くなることが想定されます。より速く、決められた時間にモノを届けてほしいという従来のニーズだけでなく、より環境にやさしくモノを届けてほしいというニーズが高まると、例えば、早く届くがCO2排出量が多い配送、届くまでに時間がかかるがCO2排出量は少ない配送のような選択ができるようになるかもしれません。

データを駆使することで変わる物流の世界

このような世の中を実現していくためには、物流業界の姿も大きく変革させていかなくてはなりません。いつでもどこにでもモノを届けるためには、多数の配送ロボットや自動運転車をコントロールする能力が必要になります。また、地方部でヒトもモノもサービスも運ぶようになるためには、日々変わる届け先の情報をもとに素早く最適な配送計画を立てる力が求められます。さらに、環境負荷のより小さい配送を提供するには、より配送距離を短くすることやCO2排出量の少ない輸送モードの選択が必要であり、ここでも配送計画を立てる力が重要になると考えます。物流業界は、よりデータを駆使してロボット等の輸送機器をコントロールする姿へと変革が求められるでしょう。

執筆者


小林 一幸

小林 一幸

グローバルインフラコンサルティング部


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