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コロナ禍で急増する女性の「実質的失業」と「支援からの孤立」

未来創発センター
制度戦略研究室長 梅屋 真一郎
未来価値研究室 武田 佳奈

時事解説

政策提言

2021/02/22

野村総合研究所(NRI)では、全国のパート・アルバイト就業女性55,889人と、そのうち新型コロナウイルス感染拡大の影響でシフトが減少している5,150人を対象に、インターネットアンケート調査を2020年12月に実施しました。
調査で明らかになった「実質的失業者」の実態と、公的支援が行き届かない背景について、調査・分析に関わった未来創発センターの梅屋真一郎と武田佳奈に聞きました。

コロナでシフトが大幅減少する「実質的失業」のパート・アルバイト女性は推計で90万人

調査の結果、2020年12月時点でパート・アルバイト女性の4人に1人がコロナでシフトが減少、そのうち4割がコロナ前と比べて5割以上シフトが減少していることが分かりました。

私たちは、シフトが5割以上減少し、かつ休業手当を受け取っていないパート・アルバイト女性を「実質的失業者」と定義し、2020年12月時点でその数は90万人にのぼると推計しました。「実質的失業者」は、一般的に統計上の「休業者」にも「失業者」にも含まれない「見えない困窮層」であると言えます。

「実質的失業者」であるパート・アルバイト女性の約6割は、コロナの影響を受ける前の世帯年収が400万円未満でした。シフト減のパート・アルバイト女性全体で見ても、5割以上が世帯年収400万円未満の世帯でした。コロナ前、パート・アルバイト先の収入が世帯の家計を支える重要な収入であったことが推察されます。

シフト減のパート・アルバイト女性に届かない、コロナによる収入減世帯向け支援策

シフト減のパート・アルバイト女性の6割近くが「シフト減の場合も休業手当支給の対象」であることを全く認識しておらず、知っているのはわずか2割でした。

また、休業手当を受け取れない方々が自身で申請できる「休業支援金・給付金」を知っているパート・アルバイト女性は1割強に留まり、6割が今回初めて知ったと回答しています。制度を知っている人であっても、9割近くが申請していない状況にあります。

申請しない理由としては、自分が申請対象になるのか分からなかったと回答した人が7割近くと最も多く、申請方法が分からなかった、勤め先に申請を知られることに抵抗感があったなどの理由も挙がっています。

コロナによってシフトが減少して収入減となりながら、休業手当や休業支援金などの制度を活用して経済的支援を受け、生計を維持することがうまくできていない実態がうかがえます。

「暮らし向きが苦しいと感じる」「経済状況を理由に気持ちが落ち込む」女性が増加

シフト減のパート・アルバイト女性の8割近くは世帯収入が減少し、そのうち4人に1人の世帯収入が半減。食費の支出を減らしたり、貯蓄を削ったりして生活の維持を図っています。実際、6割強で世帯の貯蓄総額が減少、うち3割では貯蓄が半減しています。

「実質的失業者」であるパート・アルバイト女性に限定してみてみると、8割以上で世帯収入が減少し、うち5割近くで世帯収入が半減、7割以上で世帯の貯蓄総額が減少し、うち4割以上では貯蓄が半減していました。

こうした現実は心理面にも大きな影響を与えています。コロナ前と比べて、「暮らし向きが苦しいと感じることが増えた」と回答した人が5割以上、「将来の家計への不安を感じることが増えた」が7割強、「経済状況を理由とした気持ちの落ち込みを感じることが増えた」が6割強でした。「金銭的理由で、この先生きていくのが難しいと感じる」ことが増えている人も5割強に及んでいます。

こうした現実は、結婚や子育てへの意識にも影響をもたらしています。シフト減のパート・アルバイト女性で配偶者のいない20代・30代の2人に1人近くが「今の経済状況では、結婚することが難しいと感じる」こと、またシフト減のパート・アルバイト女性で20代・30代の2人に1人近くが「今の経済状況では、希望する人数の子どもを持つことが難しいと感じる」ことが増えたとしています。

経済的な理由が結婚の大きなハードルであることは、かねて指摘されていましたが、今回は一段と深刻になっています。出生数の減少などについても報告・報道されていますが、そのような減少が続く可能性が浮かび上がりました。

国・自治体は「社会・行政が寄り添い、支える」とのメッセージの発信を

コロナ禍で女性の実質的失業が急増し、その多くが支援から孤立している現状においてまず求められるのは、政府広報やメディア等経由で「非正規労働者やシフトが部分的に減少した人であっても、休業手当や休業支援金を受け取れる」ということの広い周知です。

また、コロナ禍を機にパート・アルバイト先からの収入が減少したことで生活が困窮している層を対象とした相談窓口の設置が必要です。これまでも既存の相談窓口が多数あり、大きな役割を担ってきましたが、コロナ禍で一気に困窮し初めて支援が必要となった方々にとっては、適切な窓口に出向くことが難しいため、この層を対象とした専用の相談窓口を設置してそれを周知し、そこから既存の窓口につなげることが効果的と考えられます。

さらに、実質的失業者が存在する実態に鑑み、緊急を要する生活・生命維持という意味合いも含め、この方々も対象となる貸し付け給付を拡充・実施することも必要です。

また、シフト減などで失業に近い状態にある方々の中には、他職種であっても仕事を再開し、収入を得て生計を維持していきたいと希望する方が少なくありません。こういった方々が、人手を必要としている職種に就き、仕事を再開できるような移動支援が、短期的にも長期的にも有効であろうと考えます。

いずれにしても、国・自治体が実質的失業者の実態を正しく認識し、社会・行政で寄り添って支えるというメッセージをしっかりと発信することが非常に重要です。

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株式会社野村総合研究所
コーポレートコミュニケーション部
E-mail: kouhou@nri.co.jp

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