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コラム 小粥研究理事の視点

資産運用会社の差別化の源泉-プロセスからデータへ-

2018/08/09

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7月末に米国出張した際、米国の資産運用業界の話を聞く機会があった。話題の中心はコスト削減である。全世界的なパッシブ化の動きを背景として資産運用業界の収益環境が依然として厳しいことを反映している。コスト削減に向けて、業務の自動化を推進する動き、そしてアウトソースする対象業務を拡大する動きが見られる。

一部の大手資産運用会社ではRPA(ロボティックス・プロセス・オートメーション)等を活用した各種業務の自動化が進んでいる。RPAの導入自体は数年前から報じられておりそれ自体は新しいことではないけれども、内容的には一段進んだ感がある。これまでは、バックオフィス業務やミドルオフィス業務の一部へRPAを適用する話が多かったが、最近は、「パッシブ運用の業務プロセス全体」のように自動化のターゲットをより大きく設定している点に違いがある。自動化の効果が得られ易い一定の固まりで業務の自動化を追及する、そのようなレベルにまで自動化の実績が積み上がってきているのに違いない。因みに、パッシブ運用については、全体の業務プロセスを自動化する試みが幾つかの資産運用会社で試みられているという話であった。現時点ではパッシブ運用の完全自動化を実現したという事例は存在しないらしいが、そのようなニュースが聞こえてくるのもそれほど遠い将来のことではなさそうだ。

一方、アウトソーシングの対象業務の拡大も進んでいる。もともと比較的規模が小さく投資余力に乏しい企業が多い当業界においては、銀行業界などに比べて業務アウトソースは早くから普及しており、カストディアン銀行によるバックオフィス業務のアウトソースは既に30年以上の歴史を持っている。20年程前からはアウトソースの対象をミドルオフィス業務にまで拡大してきていたが、更にこの数年は、トレーディング業務等のフロントオフィス業務にまでアウトソースの対象が拡大し始めている。

これまでブローカーのサービスは、取引執行サービスと企業分析等の情報サービスが抱き合わされて資産運用会社に提供されていたが、今年から発効したMiFIDⅡの下では、透明性の観点から、これら二種類のサービスの抱き合わせが禁止され、両サービスの独立した値付けが義務付けられた。これを資産運用会社側から見ると、従来は取引執行の実行という目的に加えて、ブローカーから投資情報を取得するという目的を有していたトレーディング業務が、これからは純粋に取引執行のためだけの業務になってしまったことを意味する。トレーディングで特別に超過リターンを狙うような運用ストラテジーを採用していない限りは、規制対応でコスト負荷が高くなっているトレーディング業務自体を、ブローカー等のスペシャリストへアウトソースするという発想も生じ易くなっているのである。因みに、カストディアン銀行大手のステートストリートが7月にOMSベンダーのチャールズ・リバー社を26億ドルもの金額で買収すると報じられたことも、アウトソーサーによるフロント領域へのサービス拡大の一環として市場では受けとめられている。

バックオフィスとミドルオフィスに加えてトレーディング業務までアウトソースが進んでしまうとしたら、最終的に資産運用会社にはどんな業務が残るのであろうか。商品企画関連の業務、ファンドマネージャによる投資アイデアの創出、そして個人や法人顧客向けの営業活動などが思い浮かぶ(他にもあるかもしれないが)。資産運用会社が他社との差別化を図るにはこれらの業務で差異を作り出していかなければならないということだが、その際に重要なものは何かと思いを巡らすと、結局は、マーケティング分析や企業分析、そして顧客分析に必要な「データ」に行き着く。

これまでは業務プロセスの効率化も重要な差別化要素の一つであった。パッシブ運用の自動化の事例に見られるように、未だ、一部の資産運用会社にとっては差別化要素として残り続けるかもしれないが、大きな流れとしては、プロセスでは差別化が難しくなる方向であろう。その代わりに、資産運用会社が保有するデータの量と質に差別化の源泉が絞られていくということを示唆しているように思われる。

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