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コラム 井上哲也のReview on Central Banking

9月FOMCのMinutes-Evolving implication

2019/10/10

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はじめに

9月のFOMCでは輸出、生産、設備投資の弱さが明確化したとの理解が共有され、従って、9月の利下げは7月とは若干異なる意味合いを有する可能性を示唆しているようだ。

景気の判断

執行部は、設備投資が足許で減速しているとの認識を示し、センチメントの悪化、企業収益見通しの低下、貿易摩擦の不透明性などを挙げて、当面の回復は難しいとの見方を示した。鉱工業生産も、若干の改善はみられたが水準は低位であり、改善の兆しが見られない点を認めた。

FOMCメンバーも同様な議論を展開し、貿易摩擦や海外経済、地政学リスクの不透明性が企業活動を抑制しているとの認識を示したほか、負債の大きさも含めて農業セクターへの影響の大きさを指摘する向きもみられた。

一方、家計に対する前向きな見方も幅広く維持された。執行部は、消費が第2四半期より減速する可能性を指摘しつつ、雇用と所得の強さや純資産の堅調な拡大、良好なセンチメントといった基盤に変化がないし、FOMCメンバーからも異論はなかった。また、執行部からは住宅建設に回復の兆しが見られるとの指摘もあった。

これらをもとに執行部とFOMCメンバーとも、景気見通しは前回(7月)と概ね不変との理解を示した。もっとも、そうした見通しがそもそも若干の減速を予測していたことに加え、FOMCメンバーは利下げの効果も織り込んでいたことに注意する必要がある。しかも、FOMCメンバーは先行きのリスクに関して不透明性が高まったとし、引続き下方リスクが大きいとの判断を維持した。

物価の判断

執行部は、総合インフレが引続き原油価格に影響されている点を指摘するとともに、基調的インフレは、本年前半の弱さが一時的であったとして、上下双方に大きな変化はないとの認識を示した。インフレ期待も、市場ベースとサーベイベースともに横這いとした。

FOMCメンバーは、賃金上昇が物価に波及しにくい点を再度取り上げ、企業による職業訓練や賃金外報酬の供与、価格決定力の低下といった点を指摘したほか、現状の賃金上昇率が生産性上昇率と概ね整合的であるとの見方も示した。

その上で執行部は、物価見通しを統計改定の影響により若干引き下げたが、実質的に不変とした。FOMCメンバーも中期的に目標へ収斂するとの見方では一致したが、足許に関しては、海外経済の弱さや国内景気の不透明性のために下方リスクを重視する意見と、基調的インフレの弱さは一時的であり、現時点でも目標の近傍にある点を強調する意見に分かれた。

FOMCメンバーはインフレ期待に関しては執行部より慎重な見方を示し、多くの(many)メンバーが市場ベースやサーベイベースの期待が歴史的な低水準であることを確認したほか、数名(some)のメンバーは長期のインフレ期待もインフレ目標と整合的でなくなった可能性を指摘した。

政策判断

まず、FOMCメンバーの大勢(most)は、前回(7月)の利下げの適切さを確認し、その理由として、景気見通しの不透明化、(それに対する)リスクマネジメントの観点、インフレ期待のアンカーの必要性といった点を挙げた。また、上記のように9月FOMCの時点の経済見通しは概ね不変とし、企業の弱さが雇用の抑制等を通じて家計に波及する可能性はメインシナリオではない点を確認した。もっとも、2名(a couple of)のメンバーは、その理由が適切な金融緩和を併せて仮定しているからであると指摘し、数名(several)のメンバーも、政策効果の発現には時間を要するだけに、現時点で利下げを行うべきとの議論を展開した。

その上で、25bp利下げを支持する立場からは、①貿易摩擦や地政学リスクに伴う不透明性の上昇に対し、リスクマネジメントの観点が重要、②中立金利との整合性を調整することは、ELBに直面するリスクを軽減、③長期のインフレ期待の低下に対応することが重要、といった根拠が示された。

これに対し現状維持を支持する立場からは、①景気見通しを不変とする以上、利下げの合理性が少ない、②足許の不透明性によって景気拡大自体が崩れるリスクは小さい、③利下げによって過大な「保険」をかけると、必要な際の対応余地が減少する、といった反論が示された。

一方、50bpの利下げを主張する立場からは、下方リスクの削減に繋がるとの指摘がなされたほか、強力なフォワードガイダンスを活用することで、米国経済が低インフレ・低成長とゼロ金利の組み合わせに陥るリスクを抑制すべきとの意見が示された。

結果としては、賛成多数で25bpの利下げが決定された訳であるが、先行きにつては予断をもたず(no preset course)、今後の情報が景気見通しに対して持つ意味合いに即して政策を運営することで合意が得られた。

ただし、コミュニケーションに関しては、市場の期待をFOMCメンバーの見方とより整合的にすることの必要性も指摘され、数名(several)のメンバーからは、貿易摩擦の不透明性に対する政策金利の調整は終了した可能性が高い点を声明文に示すべきとの意見も示された。

この意見は現状維持派から示された可能性があり、その意味でコンセンサスではないとみられる。その一方で本稿でみてきたように、9月FOMCの利下げは企業活動の弱さの明確化に対応した面もあり、7月のような「保険」とは違う意味合いも感じられる。つまり、硬軟双方の立場にとって一時的な調整は一巡という認識が示唆されている。

金融政策運営の見直し

議事要旨の冒頭に記載されているように、9月のFOMCでもこのテーマに関する議論が行われた。今回は元々の意味での「時間軸」政策(FOMCはmake-upと称している)を議論し、執行部はインフレ期待の安定に関する分析結果を示したが、FOMCメンバーからは分析モデルへの依存性や、コミュニケーションの難しさ、コミットメントに関する柔軟性の問題といった点が挙げられ、慎重論が多かったようだ。

一方で、インフレ目標のレンジ化とともに、バンドの非対称化といった興味深い提案もなされており、今後も慎重で丁寧かつ忍耐強く議論する方針が確認された。

執筆者情報

井上 哲也

金融ITイノベーション研究部

主席研究員

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