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コラム 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight

下がる地銀統合のハードル

2019/03/06

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政府は地方銀行の統合基準を見直し

3月5日付の日本経済新聞は、独占禁止法の審査に例外規定を導入することを政府が検討している、と報じている。地方銀行や乗り合いバスなどの分野では、統合によって地域シェアが高くなったとしても、それによって企業が存続し、地域でのサービスが維持されるのであれば、その統合を認めやすくする方向だ。

独占禁止法の運営にあたるのは公正取引委員会であり、それは、内閣総理大臣の所轄に属するものの、職権行使の独立性が認められている組織だ。今回の例外規定の導入は、企業統合に関する公正取引委員会の判断に対して、政府が大きな影響を与える措置、という点で異例なものだ。

先月、公正取引委員会の杉本和行委員長は、共同通信社のインタビューに答えて、政府が地方銀行や地域バス事業の経営統合基準の緩和を検討していることが、「企業の生き残りに統合が不可欠なら反対しない」と述べている。ただし、安易に認めて競争がなくなれば、地域のニーズにあったサービスが提供できなくなる、とも指摘している。完全には納得していないながらも、政府が決めれば仕方がない、といったニュアンスだろうか。

政府がこうした姿勢を見せている背景には、長崎県の親和銀行を傘下に持つふくおかフィナンシャルグループ(FG)と同県の十八銀行の経営統合を、昨年8月に公正取引委員会が認めるまでに2年以上を要した、ということがあることは間違いない。両行が統合されれば、長崎県内での企業向け貸出シェアが75%まで高まるため、貸出金利の引き上げなどで利用者に不利益が生じることを公正取引委員会は警戒したのである。そのため、両行は貸出債権の一部を他の金融機関に譲る「債権譲渡」という大胆な手法を受け入れることで、公正取引委員会からようやく統合の承認を得た、という経緯がある。これで、収益悪化に苦しむ地方銀行が、支店統合や事業再編などで最も効率化を進めることを可能にする同県内など近隣での統合のハードルが、かなり高まってしまった感がある。

時代にあった統合判断が必要

長崎県での地方銀行の統合を巡っては、公正取引委員会と金融庁が激しく対立した。統合を、地域金融機関の構造改革のための一つの選択肢と考える金融庁は、統合後の貸出シェアという基準に強くこだわる公正取引委員会を批判し、統合という選択肢がなくなると、地方銀行が存続できなくなる、と主張した。今回の政府の検討は、明らかにこの際の金融庁の論点を取り入れたものだ。

統合によって市場の寡占度が高まり、その結果、価格の引き上げなどで利用者に不利益が生じることを避けるというのが、独占禁止法の狙いとするところだ。しかし、統合できないことで企業が存続できなくなり、地域における重要なサービスが停止してしまえば、利用者に大きな不利益が生じてしまうこともまた確かである。この点を鑑みれば、統合の承認は、シェアなど特定基準に基づくだけではなく、柔軟に判断すべきだろう。

競争条件が激しく、貸出金利の引き上げが困難という銀行業界の特性、また、一般に製品価格の引き上げが難しいという現在の経済環境、つまり産業の特性や時代の変化などに合わせて、統合判断の基準を修正していくことは、利用者の利益という観点から必要なのではないか。

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