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コラム 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight

中国が米中貿易協議についての白書を公表

2019/06/04

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合意失敗の原因は米国にあると主張

中国政府は6月2日に、「中米貿易協議に関する中国の立場」と題して、米中貿易摩擦に関する新たな白書を発表した。中国政府は1日に対米報復関税を発動したが、その正当性を主張する狙いもあり、このタイミングでの発表になったと考えられる。

ここでは、「中国は核心的利益にかかわる原則問題では絶対に譲歩しない」などと、米国への対決姿勢を改めて鮮明にしている。また、5月に米中貿易協議が合意直前に事実上決裂した背景について、中国側の立場を初めて正式に説明した点が注目される。

白書では、米中貿易協議について、4月段階ではほとんどの問題で合意に達していたが、最終段階で米国が不当に高い要求をしてきた、と指摘し、交渉が滞った責任は完全に米国側にある、としている。「米政府が理不尽な注文をつけ、追加関税の撤回を拒否し、中国の主権にかかわる要求を協定文に書き込むことに固執したため」と、米国側の対応に非があったと強調している。

この点から、中国が容認できなかった米国政府の姿勢としては、第1に、合意と同時に今まで米国が中国に課してきた追加関税を撤廃することに、米国政府が同意しなかったことが考えられる。米国は中国政府に多くの要求を受け入れさせた後にも、それが着実に執行されていくかについて懐疑的であったのだろう。しかし、中国側が相応に譲歩することで合意が成立した上で、なお、米国が追加関税を維持し、段階的にしかそれを解除しないのは、中国政府のメンツを損ねる不当な取引、と中国側は考えたのだろう。

第2は、貿易を歪める形ではなく、純粋に国内景気対策などで実施される補助金も含めて、補助金制度について強く制限を受けるのは、まさに「内政干渉」であり「国家主権の侵害」だと中国側は考えているのだろう。さらに、企業誘致や景気対策として地方政府に裁量が与えられている地方政府の補助金についても強く制約され、またそれを国内法に反映させることを米国は要求したと言われている。これは、中国側としては受け入れ難かったと見られる。

中国も企業リストを作成へ

他方、中国政府は5月31日に、中国企業の利益を損ねる「信頼できない」外国企業や団体、個人のリストを作成する方針を明らかにした。これは、米国が中国通信機器大手ファーウェイ(華為技術)を制裁の対象リストに加えたことに対抗する措置であることは明らかだ。市場のルールや契約の精神に従わない者、非商業上の理由で中国企業への供給を阻害する者、中国企業の「正当な権利と利益を深刻に侵害する」者がリストの対象になると説明されている(注)。

ただし、海外企業がこのリストに過剰に反応しないように、貿易戦争の報復手段として外国企業を標的とするために用いられるものではなく、中国は法律の枠内で業務を展開する外国企業を歓迎する、と説明を加えている。

白書では、米中貿易協議の中断について米国に全責任があるとして、今後のいかなる議論も誠実さと相互尊重、平等に基礎を置く必要がある、と強調した。また同白書は、米中貿易合意の前提条件として、①米国のすべての追加関税撤廃、②中国による米国製品の購入を現実的なものとすること、③合意のテキストで適切なバランスを保つこと、を挙げている。

白書では、「協力は中米両国にとって唯一の正しい選択だ」とも訴え、交渉を通じて事態を収拾する意思もあわせて示している。しかし、米国に対する姿勢は全体的に極めて厳しいものだ。現状は、米中共に譲歩しない姿勢を強くアピールし、いわば拳を振り上げた状態にある。

金融市場では、6月末のG20でのタイミングに合わせて米中首脳会談が開かれ、貿易協議で妥結することを期待する向きがある。しかし、現在の状況下では、月内に両国が合意に達するとはとても思えない。米中首脳会談が開かれるだけでも、両国に歩み寄りの余地がある証拠として、金融市場では好感されるだろう。しかし、現状では、6月末に米中首脳会談が開かれることを期待することさえも、かなり楽観的なのではないか。

(注)「中国、『信頼できない』外国企業・個人のブラックリスト公開へ」、ChinaWave 経済・産業ニュース、2019年6月3日

執筆者情報

木内 登英

エグゼクティブ・エコノミスト

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