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コラム 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight

G20財務相・中銀総裁会議で日本は米国に配慮か

2019/06/06

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米中貿易戦争への対応は素通りか

G20(主要20カ国・地域)財務相・中央銀行総裁会議6月8、9日に福岡市でが開かれる。G20が直面する最大の問題は、多国間の自由貿易制度を揺るがし、また、世界経済の安定を大きく脅かしている米中貿易戦争だ。それへの対応こそが、議長国である日本に、本来、最も強く求められていることだ。

しかし、実際には、多国間ではなく2国間交渉を志向するトランプ政権のもと、米中貿易戦争は2国間での問題となっているのが現状だ。トランプ政権は、これはG20の議題ではないと主張するだろう。また、トランプ政権をここで強く刺激すれば、今後の日米貿易協議やその他日米関係に悪影響が及ぶことを懸念する日本は、この問題を形式的に取り上げるだけで実質的には素通りしてしまうのではないか。

今回の会議で、大きなテーマとなるのは、第1に、暗号資産(仮想通貨)等を通じたマネーロンダリング(資金洗浄)対策、第2に、デジタル課税の国際ルール、第3に、経常収支不均衡問題、となるだろう。

第1の点については、日本が既に適用している、暗号資産(仮想通貨)業者への登録制や免許制の導入といった規制強化策が、正式に合意される見通しだ。さらに、新たな技術を用いてマネーロンダリングやテロ資金供与に利用される可能性がある将来の課題を、2020年に特定し2021年までに立案するよう、G20が関係当局へ要請する見通しだ。金融取引に使うデジタルID(電子版身分証明)の盗用などが、将来の課題に挙げられているという。

第2の点については、新たな国際法人課税の基本方針で合意が得られる見通しだ。最終的には、2020年末までの合意が目指されている。法人税は、企業のオフィスや工場など恒久的な施設(PE)がある国で課税されるというの、国際的なルールだ。しかし、GAFAに代表されるプラットフォーマーは、恒久的な施設を置かなくても、書籍や音楽のネット配信、オンライン広告など、オンライン上で国境を越えたサービスを行い、巨額の利益を上げることができる。他方、本社を税率が低いタックスヘイブンの国に置けば、大きな節税効果を挙げられる。こうした点が、企業間あるいは国の間で不公平感を生じさせてきた。

新たな枠組みでは、企業の本社機能がある国から、デジタルサービスなどの利用者がいる国に、より多くの税収を配分する仕組みが検討されている模様だ。個人データが生み出す収益やブランド力への貢献度を一定の計算式ではじき、それに応じた世界全体での利益が計算される。さらに、国ごとの売上高や利用者数のような指標に基づいて、各国が税収を分け合う仕組みが検討されているという。これは、従来の法人課税のルールを大幅に修正する画期的なものであると言えよう。

経常収支の不均衡への対応を提起へ

第3の点については、G20でサービス、投資を含む経常収支の不均衡の問題を日本が提起し、米国の旺盛な消費を含む国際的な経済構造を幅広く協議することが予想される。

ここには、世界の経常収支の不均衡問題というトランプ政権が強い関心を持つテーマを積極的に取り上げることで、米国への配慮を示すことが意図されているのではないか。他方で、それを日本の利益に繋げていく、という隠された狙いもあるように思われる。

日本は巨額な経常黒字を抱えているが、他方で、貿易収支はほぼ均衡している状態だ。経常黒字の多くは、海外への投資から得られる投資収益収入が生み出している。そこには、米国への直接投資、米国財務省証券の購入なども含まれる。つまり、米国が問題視している日本の経常黒字は、日本が米国経済に貢献している結果という側面があることを、米国側に理解してもらい、日米貿易協議での対日批判をかわす狙いがあるのではないか。

さらに、2国間の貿易・経常不均衡は、双方の貯蓄投資バランスで決まる面があるということを、トランプ大統領にやんわりと認知させる狙いもあるのかもしれない。

トランプ大統領は、米国の貿易赤字は、貿易相手国の不公正な貿易慣行と不当な通貨安誘導策によってもたらされていると思い込んでいる。しかし、実際には、2国間での貿易不均衡は双方の貯蓄投資バランス、いわば需要供給バランスで生じている側面も大きい。

つまり、米国の貿易赤字の拡大は、大型減税やインフラ投資の拡大など米国政府による財政拡張策が超過需要を生み出し、需要が供給を上回り、輸入が増加するから生じている面があること、つまり米国の政策運営にも大きな原因があることを、日本政府は米国側に認識させることを考えているのではないか。また、それを通じて、今後の日米貿易協議で、米国政府からの強い要求をかわす狙いもあるのではないか。

こうした経済関係のテーマは、6月28・29日に大阪で開かれるG20サミット(主要20カ国・地域首脳会議)に引き継がれ、さらに議論が深められる可能性がある。

また、G20サミットで新たに議題に取り上げられる経済問題としては、①新興国に対する「質の高いインフラ投資」を促すための国際ルール作り、②国境を越えるデータ取引の新たな国際ルール作り、などが考えられる。いずれも、米国に配慮しつつ、中国をけん制する意図が込められていよう。

執筆者情報

木内 登英

エグゼクティブ・エコノミスト

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