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GAFA分割議論も米大統領選挙の争点に

2019/06/14

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反トラスト法違反容疑でGAFAを捜査へ

米国では、反トラスト法(日本の独占禁止法)による当局のGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)取り締まりに向けた動きが、急速に強まっている。6月3日には、反トラスト法の執行権限を共有している米司法省と米連邦取引委員会(FTC)が、GAFAに対する捜査の管轄で合意した。具体的には、司法省はグーグルとアップル、FTCはフェイスブックとアマゾンの反トラスト法違反の疑いについて、それぞれ捜査する権限を得たのである。

さらに、同日には米下院の司法委員会も、GAFAに対して、反トラスト法違反がないか調査を始めることを超党派で決めている。下院司法委員会の反トラスト小委員会で民主党リーダーのシシリン議員は、「デジタル分野での(GAFAの)市場支配力が大きなリスク要因になっている」としている。

GAFAへの規制では、欧州連合(EU)が先行してきた。これは主に、GAFAにEU域内の個人情報を独占されることや、それによって、情報流出のリスクが高まることへの警戒からだ。そうした規制強化の流れの中に、2018年5月に成立したGDPR(欧州一般データ保護規則)もある。

米国でも、GAFAを反トラスト法で取り締まることは以前から議論されてきたが、議論がなかなか進まなかった。その背景には、反トラスト法は、独占状態下で不当に高い価格を消費者に押し付け、不利益を生じさせている企業を取り締まることを目的にしてきたからだ。ところが、GAFAの提供するサービスは、無料あるいは低価格のものが多いことから、従来の法解釈のもとでは、GAFAの独占を違法とすることは難しかったのである。これに対して米司法省は、新たな解釈を用いて、現行の反トラスト法を適用してGAFAを取り締まる方向に動き始めた。

反トラスト法の新たな解釈で買収も規制へ

米司法省は11日、反トラスト法の新たな解釈を公表した。「消費者の不利益」の概念を従来よりも幅広くとらえて、競合相手を買収することで革新的な製品やサービスが市場に出回らなくなり、また、企業が個人データを独占することで、プライバシー保護の取り組みがおろそかになるような事態も、ライバル不在の「低い質の競争」状態の結果生じる「消費者の不利益」とみなす。例えば、フェイスブックは、ライバルとして浮上してきた写真共有アプリの「インスタグラム」や対話アプリの「ワッツアップ」を買収したが、こうしたことに反トラスト法を適用することが検討されているのである。

米司法省のデルラヒム反トラスト局長も、違法な買収によって企業が市場から引き揚げられるようなケースにも反トラスト法は適用されるべき、と説明している。同氏は、1974年に司法省が反トラスト法で訴えた通信大手のAT&Tと、1998年に同様の訴えを当局が起こしたマイクロソフトの例もひきあいに出した。消費者、利用者への不利益を拡大解釈することで、GAFAを既存の独占禁止法で取り締まることが検討されている日本と、似た動きだ。

さらに、民主党の大統領候補、エリザベス・ウォーレン上院議員は、3月にGAFA分割論を提唱し、マイクロソフトと同様の行動が必要だ、と訴えている。ミズーリ州選出のジョシュ・ホーリー上院議員など、共和党議員もプラットフォーマー批判の急先鋒として台頭している。

米司法省のデルラヒム反トラスト局長も、参考例として1911年に米最高裁の命令で34社に解体された石油大手スタンダード・オイルの例をあげており、GAFAの分割も選択肢から除外しない可能性も示唆している。

こうした反トラスト法によるGAFA取り締まりの動きは、米国のITセクターの競争政策が放任から規制へと大きく転換するきっかけとなる可能性がある。さらに、GAFAの分割も含め、GAFAへの規制強化は、2020年米大統領選挙での争点の一つとして浮上してきたのである。

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