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フェイスブックの過去の買収が当局の調査対象に

2019/08/07

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始まったフェイスブックへの反トラスト法違反の調査

米フェイスブックは7月の決算発表時に、米司法省とともに反トラスト法(独占禁止法)を共同所管する連邦取引委員会(FTC)が、同社のソーシャルメディアサービス、デジタル広告およびモバイルないしはオンラインアプリケーションの領域を調査していると述べていた。そしてその後、FTCが、フェイスブックの過去の買収案件について、潜在的な競合他社が脅威になる前に取得する戦略の一環だったかを調べていることが、報道により明らかにされた。

FTCは、通常は反トラスト法に照らして買収の妥当性を事前に審査する役割を担っているが、過去の買収案件を調査するのは異例なことである。

フェイスブックの過去の買収が、潜在的な競争相手の芽を事前に摘む意図でなされたことが証明できる場合、こうした戦略が将来の競争や技術革新を阻害するものだとし、反トラスト法違反とすることを視野に入れている。過去の買収が競争を阻害する意図でなされたと判断されれば、買収の取り消しができるとの専門家の見解もある。仮にそうなった場合、それはフェイスブックの解体へとつながっていく可能性もあるのではないか。

S&Pグローバルが集計したデータによると、フェイスブックは過去15年ほどの間に約90社を買収している。買収した企業には画像共有アプリのインスタグラムやメッセージアプリのワッツアップなどがある。フェイスブックはワッツアップの買収により、ソーシャルメディアおよびメッセージングサービスでの支配的地位を強化した。

日本のプラットフォーマー規制にも影響

フェイスブックの幹部は7月に行われた米下院の反トラスト小委員会での証言の中で、買収によって技術革新が加速し、相互補完的な強みを持つ企業同士が統合されている、と説明している。他方、フェイスブックが今年、10代の若者に人気のグループビデオチャットアプリ「ハウスパーティー」の買収に関する話を拒否したのは、買収を巡る外部からの批判に配慮したからだと言われている。

さらに、フェイスブックは、インスタグラムやワッツアップなどに、自社名を加えて、インスタグラム・フロム・フェイスブック、ワッツアップ・フロム・フェイスブックとする計画だ。名称変更を通じて、過去に買収した事業が、フェイスブックの中で統合され、新たな価値を生んでいることを対外的にアピールし、潜在的な競争相手の芽を事前に摘む意図で買収がなされたことを否定する意図があるのかもしれない。

反トラスト法は、市場独占・寡占の環境下で不当に高い価格が設定され、利用者に不利益を生じさせることを防ぐ目的で適用されるのが一般的だ。しかし、フェイスブックなどプラットフォーマーは、多くのサービスを無料で提供していることから、従来のような形では反トラスト法の適用が難しい。

そこで、突破口として米司法省やFTCが狙いを定めたのが、買収の正当性だ。同様の理由から、日本の公正取引委員会も、プラットフォーマーの買収の妥当性に注目している。米司法省、FTCによる今後の調査の進展は、日本におけるプラットフォーマー規制にも、大きな影響を与えそうだ。

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