フリーワード検索


タグ検索

注目キーワード
業種
目的・課題
専門家
国・地域

NRI トップ コラム コラム一覧 長期国債利回りの急上昇と日銀の政策対応

コラム 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight

長期国債利回りの急上昇と日銀の政策対応

2019/09/18

  • Facebook
  • Twitter
  • LinkedIn

10年国債利回りは変動許容レンジの下限を上回る

イールドカーブ・コントロールのもとで日本銀行が目標としている、10年国債利回りの急速な上昇が続いている。8月上旬以降、利回りは変動許容レンジの下限である-0.2%を下回って推移し、一時は-0.3%にまで達していた。しかし、先週末には-0.2%を上回る水準にまで上昇し、8月以降の下落分を一気に取り戻している。

こうした長期金利の激しい動きは、日本銀行の国債買入れオペなど、金融調節の変更によって生じているものではない。主に海外における国債利回りの変動によって生じているものだ。

5月初めから9月初めにかけて、米国10年国債利回りはちょうど1.0%程度下落し、その後、足もとまで0.4%程度上昇した。同じ時期に日本の10年国債利回りは-0.3%程度下落し、0.2%程度上昇している。米国10年国債利回りの変動幅に対する日本の10年国債利回りの変動幅の割合、つまり弾性値を詳細に計算してみると、それぞれ約23%、約33%となる。

歴史的に見て、日本の10年国債利回りは、米国10年国債利回りの変動幅の2割~3割程度の幅で変動する傾向があったと考えられる。足もとの動きも、そうした歴史的な関係と概ね一致している。このことは、イールドカーブ・コントロールのもとでも、日本銀行の長期国債利回りのコントロール力は限られ、長期国債利回りの変動のかなりの部分は、米国及び世界の長期国債利回りの変動によって決まる傾向があることを示していよう。

10年国債利回りの下振れに苦悩した日本銀行

つまり、海外の長期国債利回りが大きく変動すれば、仮に日本銀行が国債買入れオペの額を増減しても、日本の10年国債利回りを目標値近傍、あるいは変動許容レンジ内に納めることは難しくなる。実際には、日本銀行は長期国債利回りを強くコントロールする力はなく、イールドカーブ・コントロールという枠組みはもともと脆弱なものであることが、足もとでは露呈してしまったと言えるのではないか。

しかし、イールドカーブのフラット化、長期・超長期の利回りの大幅低下がもたらす副作用にも配慮してイールドカーブ・コントロールを導入した、と当初日本銀行は説明をしていた。この点から日本銀行は、今年8月以降の変動許容レンジの下限を下回る状態を黙認し続けることはできなかっただろう。

一方で、長期国債の長めのゾーンを中心に買入れ額を大幅に縮小しても、長期国債利回りの下落を食い止めることはできない可能性が相応にあった。実際、そうなれば、イールドカーブ・コントロールという枠組みの信頼性が大きく低下してしまう可能性があっただろう。こうして、日本銀行は大きなジレンマに直面していたのである。

そこで、いわば次善の策として、9月18、19日の金融政策決定会合で、日本銀行は変動許容レンジを大幅に拡大し、コミットメント違反の状態を解消するとの見通しが、金融市場の一部には広がっていた。筆者は、変動許容レンジを撤廃し、イールドカーブ・コントロールを事実上放棄する可能性がある、と考えていた。

こうした措置は、市場に一種の緩和措置と捉えられる可能性があり、日本銀行が敢えてそれを狙う、という側面も考えられた。

次回決定会合ではイールドカーブ・コントロール修正も追加緩和もない

しかし、足もとでの10年国債利回りの上昇を受け、こうした措置を講じる必要は低下した。為替市場では1ドル108円台と、クリティカルな水準と考えられる1ドル100円までに相応の距離ができ、また、株価は高水準にあり、さらに、国内経済が比較的安定しているこの環境の下で、日本銀行が9月18、19日の金融政策決定会合で、明確な金融緩和策を実施する可能性は低い。10月からの消費増税の影響を見極める前に日本銀行が動くというのも、考えにくいところだ。

9月18、19日の金融政策決定会合で採用される可能性があるとすれば、「少なくとも来年の春頃まで極めて低い金利を維持する」というフォワードガイダンス(政策方針)を、「少なくとも来年の秋頃まで」あるいは「少なくとも来年の後半頃まで」へと修正する、いわゆる時間軸延長だろう。こうした時間稼ぎ、市場へのリップサービス的な施策でさえも、現在の金融環境を踏まえれば、実施される可能性は半分程度ではないか。

足もとでの円安・株高傾向が、仮に日本銀行の早期緩和期待に主導されたものである場合には、市場の期待を裏切って市場の混乱が生じることを避ける観点から、日本銀行が追加緩和措置を講じるとの選択もあり得るだろう。しかし、足もとの円安・株高はグローバルな要因に主導されたものであり、この点は当たらない。

景気情勢の悪化と円高進行のもと、政府が大規模な景気対策の実施を閣議決定しているといった状況を前提に、日本銀行は今年12月の金融政策決定会合で政策金利の0.1%引き下げを実施する可能性を現時点では予想したい。筆者はあらゆる追加緩和措置の実施に反対ではあるが。

執筆者情報

木内 登英

エグゼクティブ・エコノミスト

  • Facebook
  • Twitter
  • LinkedIn

新着コンテンツ