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米国景気対策議論は選挙の前哨戦の様相に

2020/03/25

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景気対策成立期待で米国株は大幅高

米国時間3月24日の米国金融市場で、ダウ平均株価は2,000ドルを超える大幅高となった。大規模景気対策を巡って民主・共和両党が合意に近づいているとする報道がそのきっかけとなった。

米国では、新型コロナウイルス対策のための大規模景気対策が、民主・共和両党間の対立によってなかなかまとまらない状態が続いてきた。その背景には、11月の選挙を睨んで、両党がそれぞれの主張を容易には譲歩することができない、という事情がある。景気対策を巡る議論が、あたかも選挙の前哨戦であるかのような様相となっている。

上院民主党は、上院共和党が提案した2兆ドル規模の景気対策の法案の成立を、採決で既に2回阻んでいる。共和党案では、750億ドルが打撃を受けた企業の支援に使われる。それは観光関連や生活に欠かせないインフラ関連であるが、その対象には大手の航空会社も含まれる。

これに対して民主党は、共和党案は大企業を支援するものであり、失業や所得減少のリスクに直面している個人に十分な助けとはならない点をそれに反対する理由に挙げている。

議員の感染も上院での法案成立を阻む

民主党は、失業保険給付を4か月間に拡大させることや、病院の支援を要求している。他方で、共和党案が航空業界など大手企業を支援することを強く批判している。大統領候補者だったエリザベス・ウォーレン議員は、「共和党案は大企業優遇であり、その他の企業や個人を置き去りにしている」、と民主党大統領候補者選びの延長線のような批判をしている。

他方、下院民主党は、2兆5,000ドル規模の独自の景気対策法案の準備をしている。報道によると、退職者や個人への給付金は1,500ドルと、上院案の1,200ドルを上回る。さらに、レイオフの対象者やフリーランスに週600ドルを支給する計画だ。

上院共和党にとって逆風となっているのは、まさに新型コロナウイルスの感染の拡大だ。上院共和党のランド・ポール氏は、議員の中で初めて新型コロナウイルスの感染が確認され、自宅療養を強いられている。また、症状のある他の2名の共和党議員が新型コロナウイルスの検査を受け、その結果が出るまで自宅に待機している。その分、景気対策の上院案への賛成票が減ってしまっているのである。

さらなる市場の調整が景気対策成立の原動力となる可能性も

報道されている与野党の合意が、上院だけのものか、あるいは上下両院のものであるかは不明である。ただしそれ次第で、状況は大きく異なるのである。

上院共和党が上院民主党に歩み寄り法案を修正することで景気対策が上院で早期に可決されても、下院民主党主導で可決されることが見込まれる上記の下院案との間には大きな開きがある。このように、上院と下院がそれぞれ大きく異なる法案を成立させる場合には、その一本化には相当の時間が掛かってしまう可能性がある。

景気対策がなかなかまとまらない状態は、金融市場を不安定にさせるだろう。その結果、再び株価が大きく下落すれば、議員達は危機感を強め、それが景気対策法可決の大きな原動力となるのではないか。いわば、市場が景気対策を強く催促する形である。

これは、株価の大幅下落に促される形で、銀行支援策の法案が可決された、2008年のリーマン・ショック時の米国議会を再び見るようでもある。市場の力を借りて、ようやく政策が前に進むという形である。

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