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感染第6波で国内景気の持ち直しは早くも一服へ

2022/01/06

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感染拡大、FRBの金融引き締め懸念で株価は大幅下落

年初の大発会こそ大幅高で始まった日経平均株価は、6日には早くも800円を超える大幅安を記録した。5日に公表された米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録で、米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げ(政策金利引き上げ)と保有資産の圧縮を早めに実施するとの観測が広がったこと、国内で感染の急拡大が生じていることが背景だ。感染拡大、FRBの金融引き締めは、2022年を通じた世界経済と金融市場にとっての2大リスクと言える。双方と深く関わる物価高を加えて、3大リスクとなるだろう。

新型コロナウイルスの感染が急拡大している沖縄県、広島県は6日に、政府にまん延防止等重点措置の適用を要請すると決めた。山口県も要請に向け手続きを進めている。政府は7日にこれらの地域に「まん延防止等重点措置」の適用を決める可能性が高い。適用されれば、飲食店などに時短営業、酒類提供制限などの要請が行われる。

コロナ感染「第6波」に入ったか

感染は東京都、大阪府など大都市部を含む広い地域に広がっており、既にコロナ感染の「第6波」に入ったと言っても良い状況である。しばらく抑制されていた新規感染が急増するきっかけとなったのは、年末年始に人々が会食、外出、移動する機会が増えたことだろう。1年前にも年末から新規感染者数は急増した。年末年始に人々が感染リスクを高める行動をするのは、他国と比べて日本でより顕著な現象と言えるだろう。

日本国内での新規感染拡大の主流は、まだ従来型のデルタ株であるが、今後は他国でも見られているように新型変異株のオミクロン型の影響が強まることで、感染拡大はさらに急加速する可能性が否定できないところだ。その場合、1月中にもほぼ全国ベースで「緊急事態宣言」が再発令される事態となってもおかしくないのではないか。

消費者センチメントには既に変調が

国内での消費活動は、新規感染リスクの低下を映して昨年9月から持ち直しに転じ、全国ベースの緊急事態宣言の解除を受けて10月からは持ち直し傾向をさらに強めた。しかし、コロナ感染の「第6波」を受けて、年初からは再び個人消費は抑制傾向を強めるだろう。個人消費の順調な持ち直しは、短期間でいったん途切れることになる。

海外でのオミクロン株の発生を受けて、昨年11月分の景気ウォッチャー調査では、景気の先行き判断DIが大きく下落した。また12月分の消費者態度指数は4か月ぶりに下落しており、消費者センチメントの再悪化の兆しは、既に昨年末には見られていたのである。

成長率は2022年後半に緩やかに持ち直しか

ESPフォーキャスト調査(2021年12月)によると、2021年10-12月期の実質GDPの年率換算成長率の予測平均値は+6.4%、2021年1-3月期は同+5.1%、4-6月期は同+3.5%、7-9月期は同+1.9%、10-12月期は同+1.6%となっている。成長率は2021年10-12月期にピークを付けた形となっているが、実際にそうなる可能性は高そうだ。

他方、コロナ感染の「第6波」の影響を踏まえると、2021年1-3月期の成長率はこの見通しよりも下振れる可能性が高い。その後も、成長率はこの見通しと比べて下振れるリスクが大きいと考えられる。

感染リスク以外にも個人消費には、昨年来のエネルギー・食品価格の上昇が引き続き逆風となる。また、物価高騰や中国不動産不況が世界経済に悪影響を与え、それが輸出を通じて日本経済の回復を抑える。そうした要因が作用することで、2021年10-12月期にピークを付けた成長率は、2022年前半にはかなり下振れる形となる可能性が見込まれる。

それでも、国内景気が昨年、1昨年ほど悪化することはないのではないか。2020年には、コロナ問題を受けて成長率は歴史的なマイナスとなった。2021年には四半期成長率はプラスとマイナスを繰り返し、均せばほぼゼロ成長だった。2022年は四半期の成長率がマイナスとなる事態は何とか回避されるのではないか。そして、年前半の「踊り場」を経て、年後半には緩やかに持ち直す方向を見ておきたい。

物価高騰とFRBの金融政策の正常化が大きなリスク

オミクロン株に続いて今後も新たな変異株が今後も生じ、そのたびに新規感染が拡大するリスクがあるだろう。新型コロナウイルス問題は、当初に考えられたよりもかなり長期化するリスクが高まっていることは明らかだ。そのため、経済への悪影響も長引くことになる。

それでも、ワクチンや飲み薬の開発などで、新規感染リスク、重症化リスクは抑えられる。新型コロナウイルス問題による経済への悪影響は、今後も紆余曲折を繰り返しつつも、長い目で見れば低下する傾向にあると考えられる。この点が、2022年の後半には、経済情勢が緩やかに改善する見通しの前提にある。

内外経済にとってのより大きな下振れリスクは、感染問題よりも物価高騰とFRBの金融政策の正常化にあるのではないか。米国での物価高騰が予想外に長引き、FRBが利上げをさらに加速していけば、急激な金融引き締めが経済を悪化させ、また不均衡を抱えてきた金融市場に大きな調整をもたらす可能性が出てくるだろう。それが2022年から2023年にかけての、世界経済、日本経済の最大のリスクとなるのではないか。そうしたリスクが決して小さくはないことを、6日の金融市場は示唆しているようにも見える。

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