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NRI トップ ナレッジ・インサイト コラム コラム一覧 「DX相談ルーム」 デジタル新事業企画のタスク:デジタル新事業企画編(1)

「DX相談ルーム」

デジタル新事業企画のタスク:デジタル新事業企画編(1)

2022/09/16

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VUCA(Volatility=変動、Uncertainty=不確実、Complexity=複雑、Ambiguity=曖昧)時代の現在、将来の事業を取り巻く環境は不透明です。しかしそのような時代だからこそ、既存事業だけでなく、あらゆる機会を見出し、新事業に挑戦していくことが重要です。今回の「DX相談ルーム」では、いま求められているデジタル新事業を企画して立ち上げていくまでのタスクや、進めていく際に心がけるべきポイントをお伝えします。

連載「DX相談ルーム」では、DX推進担当者と、NRIのコンサルタントの対話を通じて、DXに関して、多くの方が抱く悩みや疑問にお答えしていきます。
※ DX推進担当者は架空の人物です。

話し手:コンサルタント 栗山 勝宏
1998年大手システムインテグレーターに入社後、2007年1月NRIに入社。
一貫して、業務改善を伴うシステム上流工程(構想、計画、システム調達)、システム開発時のユーザー側活動(要件定義、業務移行、受入テスト)および大規模開発PMOなどのITコンサルティングに従事。
2012年以降、ICTを活用した事業変革・新事業創造、顧客接点高度化(顧客接点改革、CRM/SFA導入、会員制度見直し、顧客情報統合)、業務改革・業務改善などのコンサルティングに従事。
経済産業大臣認定 中小企業診断士。

デジタル新事業を企画する際の心得

DX推進担当者
DX推進担当として、デジタル技術を活用した新事業を企画することになりました。新しいことにチャレンジするのは楽しみですが、どうやってアイデアを見つければいいのか、悩んでいます。成功するデジタル新事業の企画方法というのはあるのでしょうか?

栗山
残念ながら「こうすれば必ず成功するデジタル新事業が企画できる」という方法はありません。しかし、デジタル新事業のアイデアの探し方としては、まずご自身が持ってらっしゃる課題認識や想いを大切にすることが重要です。
例えば、普段生活している中で「これはすごく無駄。もったいないんじゃないか?」と感じることはありませんか。あるいは「A社の課題とB社の課題を結び付けたら、新たなビジネスが生まれるんじゃないか?」とか、「まだ世の中に出ていないこの技術を使ったら、こんないいサービスが生まれるのでは?」と考えることはないでしょうか。

DX推進担当者
想いですか。課題認識はあるもののビジネスモデルとして成り立つのかという意識が先行して、市場分析など根拠を整えることばかり考えていました。

栗山
もちろんビジネスモデルの検証は重要です。ただ、アイディアを出す段階においては、「この無駄をなくしたい」、「こんなWin-Winのビジネスを生み出したい」という強い想いを軸にビジネスを広げていくことが大切です。そういう軸があると、アイデアが出てくるだけでなく、最終の形まで持っていくための情熱が続くというのが、多くのデジタル新事業を見てきて感じます。

デジタル新事業立ち上げまでのプロセス

DX推進担当者
デジタル新事業を企画して、事業立ち上げまで持っていくプロセスを教えていただけませんか?

栗山
デジタル新事業を立ち上げるまでには、この図のようなプロセスがあります。
大きく分けると、「チーム編成」、「初期検討」、ユーザーの声をもとにアイデアを形にしていく「サービスデザイン」、ビジネスと技術の両面から実現性を確認する「本格検証」、そして「市場投入」です。

ただし、従来の、ひとつひとつのプロセスをしっかりと完成させてから次に進むやり方は、デジタル新事業には向きません。デジタル新事業のコツは、「高速でプロセスを繰り返し回す」ことです。

一度のプロセスで完成を目指すのではなく、それぞれのプロセスの間を行ったり来たり、また、プロセス内にある個別タスクでも、高速で回します。

DX推進担当者
なぜ従来のスタイルではダメなのでしょうか?

栗山
新事業は、”デジタル”新事業に関わらず不確実性が高いです。新事業は不確実性が高いので、ひとつひとつプロセスを突き詰めてから進むと、最後に「ユーザーのニーズと合わなかった」など、大きなやり直しが発生する危険性があるからです。
仮説を立てつつ、ユーザーの声を聞いてみてわかったこと、作ってみてわかったこと、触ってもらってわかったことをプロセスの中に組み込み、少しずつ作り上げていく進め方のほうが適しています。
幸い、デジタル新事業では、「モックによるユーザーテスト」や「既存サービス部品を使ったプロトタイプ(試作品)の作成」「ユーザーテストデータの分析」などが安価かつすぐに行うことができます。

DX推進担当者
だから「高速でプロセスを繰り返し回す」のですね。

栗山
そうです。デジタル新事業のアイデアを机上で何か月も検討することにあまり意味はありません。できるだけ早く、サービスの買い手であるユーザーに見せて、ニーズがあるか、それにお金を払ってくれるのかを検証するべきです。つまり、自分の想いがビジネスとして成り立つかどうか、ユーザーに聞きにいくことが、とても大切です。
そして、その意見をもとにアイデアを練り直し、デザインを修正したら、またユーザーの声を聞く……これを繰り返して、企画をブラッシュアップしていきましょう。

今回は、デジタル新事業のアイデアの出し方、そして立ち上げまでのプロセスやタスク、その際の考え方などをご紹介しました。
次回は、「デジタル新事業企画時に陥りがちなPoCの失敗と対策」をお届けします。

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