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「DX相談ルーム」

デジタル新事業をやり抜くために:デジタル新事業企画編(4)

2022/10/07

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日本企業では、成果が見えやすい既存事業が評価されやすく、新たにデジタル事業を企画、立ち上げるのは容易ではありません。どうすれば途中で心折れることなく、最後までやり抜けるのか、そのための工夫や考え方などをお届けします。

連載「DX相談ルーム」では、DX推進担当者と、NRIのコンサルタントの対話を通じて、DXに関して、多くの方が抱く悩みや疑問にお答えしていきます。
※ DX推進担当者は架空の人物です。

話し手:コンサルタント 栗山 勝宏
1998年大手システムインテグレーターに入社後、2007年1月NRIに入社。
一貫して、業務改善を伴うシステム上流工程(構想、計画、システム調達)、システム開発時のユーザー側活動(要件定義、業務移行、受入テスト)および大規模開発PMOなどのITコンサルティングに従事。
2012年以降、ICTを活用した事業変革・新事業創造、顧客接点高度化(顧客接点改革、CRM/SFA導入、会員制度見直し、顧客情報統合)、業務改革・業務改善などのコンサルティングに従事。
経済産業大臣認定 中小企業診断士。

逆風に立ち向かい、最後までやり抜くマインド

DX推進担当者
先日、デジタル新事業を立ち上げた先輩と会ったら、「これからが大変だぞ。新事業に対する社内の風当たりは強いからな」と脅されました。

栗山
「新事業の成功確率は千三つ、つまり1000回試して3回しか成功しない」と言われています。多くの失敗を乗り越えた先に新事業が生まれるのです。にもかかわらず、社内からは「失敗ばかりじゃないか」と非難されることがあります。また、検証を重ねるなかで企画内容や計画はどんどん変わっていくものなのに、「迷走している」と言われたりします。事業の立ち上げ当初はユーザーが少なかったり利益が少なかったりするのは計画に織り込み済みなのに、「期待したほどじゃなかった」と判断されてしまうこともあります。

DX推進担当者
なかなか厳しそうですね。そういう現実がある中で、諦めずにやり抜くために必要なものは何でしょうか?

栗山
大事なのは、絶対にやり抜くんだというマインドと、その事業が成功するという確信を持つことです。逆にそれが持てないなら、手を出さないほうがいい領域と言ってもいいでしょう。
いま育てているデジタル新事業の企画に対して、確信はお持ちでしょうか?

DX推進担当者
「この事業企画はいける」という自信はあります。でも、まだ漠然とした部分もあって、疑念を持っている相手を説得できるだけの確信を持てていないかもしれません。確信をより強固にするためにはどうすれば良いのでしょうか?

栗山
まず、ユーザーの声を聴いたり、社会の課題をリサーチしたりすることです。そして、「まだ、皆が気づいていないだけで、いずれこの事業は社会に求められる」とか、「この事業で、困っている人を助けられる」と、自分の中の確信を積み上げていくとよいと思います。
そして、事業企画がどんどん変化し、進化していったとしても、自分が事業を通じて実現したいことを信念として持ち続けることです。

見極める力と人的ネットワークがカギ

DX推進担当者
デジタル新事業をやっていくうえで、マインドのほかにどのようなスキルが必要でしょうか?

栗山
1つ目は、見極める力をつけるということですね。

デジタル新事業は、いろいろな人に批判されたり、注文をつけられたりすることもあるでしょう。たとえば、PoCに予算をとれば、「どうせコストをかけるなら、ついでにあれもこれも検証して欲しい」と要求されたり、ターゲットユーザーの興味関心も知らないのに、個人的な価値観でダメ出しされたり……。それらを全部、真っ正直に受けていたら、成功するものも成功しません。どの意見を取り入れ、どの意見を切り捨てるかを、見極めることが必要です。

DX推進担当者
新事業の進め方を理解していない人もまだ多いですから。事業のためになるかならないかを考えて、ときには聞き流したり、やり過ごしたりしながら、信念を持って、日々挑戦し続けたいと思います。

栗山
2つ目は、他人を巻き込む力です。
以前に仕事で組んだ相手や同期など、自分の想いを理解してくれそうな人を仲間にしましょう。自分だけでやれることは、たかが知れています。理解者の輪を広げ、自分だけでは思いつかなかったことを教えてもらったり、やれないことをサポートしてもらったりしましょう。
たとえばPoCの価値検証というと、ユーザーインタビューなど、本格検証ばかり考えがちですが、初期検討の段階で、お付き合いのあるお客様に「こういう事業があったら、御社のこの課題を解決できますか?」などと軽く聞いてみることも大事です。

DX推進担当者
社外連携というと、会社対会社の本格的なプロジェクトを組むようなイメージでしたが、ちょっとした相談ができる知り合いをたくさん持っておくことも、デジタル新事業をやっていくうえで、大事なことかもしれませんね。

栗山
ざっくばらんなやりとりから始まって、本格的な協業になることも多いと思います。複数の会社の協業でなければできないことも多いですし、デジタル新事業はスピードが重要なので外部の力は欠かせません。競合企業と共創することもありますから、個人的な仲間や、他社を巻き込んだビジネスパートナーを構築することは大切です。

DX推進担当者
デジタル新事業でも、日ごろの人間関係が大事なんですね。

栗山
デジタル新事業は、デジタルを使いますが、企画を進めていく作業の8割、9割はアナログです。たくさんの人と会って、話したり、聞いたり、説得したり、様々な人間関係を通じて事業は育っていくのです。事業に懸ける強い想いは、アナログのほうが伝わります。
デジタルといえども、アナログな人と人との関係の大切さは不変です。その人的ネットワークがデジタル新事業を成功させるために今後ますます重要になるでしょう。

デジタル新事業企画編の最後である今回は、デジタル新事業をやり抜くためのマインドや必要なスキルをご紹介しました。事業を立ち上げるまでには様々な障害に直面しますが、強い確信をもって、何が大切かを見極めるとよいでしょう。仲間と協力することで、事業化への道が拓けると思います。

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