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今年は円が跳ねるか:年初に129円台まで円高が進行

2023/01/04

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海外勢が円買いを仕掛ける

1月3日のアジア市場で、ドル円レートは一時1ドル129円台を付けた。これは、2022年6月以来、7か月振りの円高水準だ。年末年初は、取引が薄い中で為替は大きく変動しやすいのが通例である。

昨年12月20日に日本銀行が長期国債利回りの上昇を容認する政策修正を行ったことの影響が、為替市場ではなお続いている。その際に、既に年末年始の休暇に入っていた海外勢は、日本銀行の政策修正による円高急進の流れに乗れていない。そこで、彼らが年初に市場に復帰したタイミングで、日本銀行の追加の政策修正を材料にして円買いを仕掛けた、とも考えられる。

2022年3月の1ドル115円程度から10月に151円台まで進んだ円安は、比較的短期間で6割程度巻き戻されたことになる。

日本の国力低下などといった構造問題は、1990年代以降、継続的に円安要因になってきたと考えられるが、昨年3月以降の急速な円安ドル高の背景は、米連邦準備制度理事会(FRB)の急速な利上げとそれを受けた米国長期金利の上昇、あるいは日米金利差拡大観測であることは疑いがないところだ。

そのFRBが昨年12月には利上げ幅をそれ以前の0.75%から0.5%へと縮小させ、利上げ姿勢を変化させ始めたことが、昨年末にかけての円安修正をもたらした。さらに、昨年末には日本銀行が政策修正を行ったことで、まさに日米双方から金利差縮小観測が強まり、年初の円高進行につながっているのである。

円高が進みやすい環境に

実際にFRBがこの先どのタイミングで利上げ姿勢を一段と修正するかは、米国の経済・物価動向次第であり、なお不確実性がある。米国経済の底堅さと物価高騰の構図が変わらなければ、FRBが利上げを打ち止めし、また利下げに転じるタイミングは後ずれするだろう。その結果、円安ドル高修正のペースは鈍化することも考えられるところだ。

ただしそのような状況の下では、日本銀行のさらなる政策修正の観測が強まり、その面から、今度は、円安ドル高修正が進む可能性があるだろう。FRBの利下げ観測が広がる中では、円高が急速に進むことを恐れて、日本銀行はマイナス金利解除などの正常化を進めることに慎重になるとの見方が広がりやすい。

しかし、FRBの利下げ観測が高まらない中では、日本銀行の追加の政策修正への観測が市場で高まりやすいためだ。 このように、かぎを握る米国の経済・物価環境が強弱どちらに振れても、日米金利差の縮小観測から2023年は円高ドル安の流れとなりやすいのではないか。そして、米国並びに世界経済が減速し、金融市場が不安定化すれば、リスク回避の円買いが復活するだろう。

年末1ドル120円までの円高を見込む

日本銀行が1月の次回金融政策決定会合で示す展望レポートでは、2024年度の消費者物価見通しが+2%に近づくとの報道が、追加的な政策修正、あるいは正常化観測と円高圧力を為替市場で強めている。

実際には、2024年度の消費者物価見通しの上振れは、2023年の政府の物価抑制策の反動が、その主な理由である。従って、日本銀行が2023年中に2%の物価目標達成を見通せるとして、マイナス金利解除などの正常化策に踏み切る可能性は高くないだろう。実際の正常化策は、内外経済が安定を取り戻し、円高圧力が後退し、またFRBの利下げが一巡する2024年半ば以降とみておきたい。

ただし、2023年中にも日本銀行は、2%の物価目標を中長期の目標にするなどの位置づけの修正を行う可能性はある。その結果、正常化観測は大きく後退することなく、年を通じて金融市場で燻り続けるだろう。

ドル円レートの均衡水準は1ドル112円程度と考えられる。2023年中にその水準まで一気に円高は進まないとしても、2023年末には1ドル120円程度まで円高が進むと見ておきたい。一時的には年内に110円台後半まで円が跳ねる可能性もあるのではないか。

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