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ロシアで大規模テロが発生:イスラム国(ISIS)が犯行声明

2024/03/25

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イスラム国(ISIS)が犯行声明:ウクライナは関与を否定

22日(金)に、ロシアの首都モスクワ郊外のコンサートホールで銃乱射事件が発生した。24日時点で、市民133人以上が死亡したと報じられている。プーチン大統領が6期目に選出されてから1週間も経たないタイミングで起きたテロ事件だ。

22日には過激派組織イスラム国(ISIS)が、通信アプリ「テレグラム」に犯行声明を投稿している。そこでは、「多くのキリスト教徒」が集まっている場所を攻撃し、「数百人を殺傷して大規模な破壊を引き起こした」と主張した。しかし、犯行の証拠は示していない。

ISISは、シリア内戦などの混乱に乗じて台頭したイスラム教スンニ派の過激派組織だ。米軍などの軍事作戦によって2019年までに弱体化したが、その後も各地でIS系の組織がテロ活動を続けている。

事件発生直後に、国連や欧米各国から非難や哀悼が相次ぎ示された。国連のグテレス事務総長は「テロ攻撃を最も強い言葉で非難する」との声明を出した。フランスのマクロン大統領、イタリアのメローニ首相、在ロシア米国大使館はそれぞれ、犠牲者に哀悼の意を表した。2022年のロシアによるウクライナ侵攻以来、欧米諸国がロシアに対して批判的でないコメントを揃って発したのは初めてのことだ。

ウクライナのポドリャク大統領府長官顧問は22日に、この銃撃事件について「ウクライナは事件に関与していない」との声明を通信アプリ「テレグラム」に出した。米ホワイトハウスのカービー大統領補佐官も「現時点ではウクライナの関与を示す情報はない」と述べた。

米国が事前にテロの情報を入手しロシアに伝えていた

ところで、米国がこのテロ事件に関わる可能性があるテロの情報を、事前に入手していたことが明らかとなっており、注目を集めている。モスクワにある在ロシア米国大使館は3月7日に、ロシア国内の米国民に対して、コンサート会場に近づかないよう、不可解な警告を発していた。ホワイトハウス国家安全保障会議のエイドリアン・ワトソン報道官は、コンサートを含む大規模な集会をターゲットにした可能性のあるモスクワでのテロ攻撃計画に関する情報を米国が入手し、国務省が勧告を出したと述べた。さらに、「米国政府は、長年にわたる『警告義務政策(duty to warn policy)』に従って、この情報をロシア当局とも共有していた」と同氏は述べていた。

ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、米国当局者は、この警告は「ISISがロシア国内を攻撃しようとしている」という、昨年11月以来得られた信頼できる一連の情報に基づいたものだと述べた。

一方ロシア国営タス通信は、プーチン大統領がテロ攻撃の可能性に関する米国の警告を「あからさまな脅迫と社会を脅迫し不安定化させる意図」に似た「挑発的な」発言だ、と述べたと伝えた。ロシア政府は、米国が事前に伝えていたテロ事件の情報を、テロの防止に有効に活用できなかった可能性も考えられる。

いずれにせよ、今回のテロ事件は、ウクライナ戦争とは関係のない過激派組織ISによって起こされたものである可能性が高く、ウクライナ戦争の行方には直接的な影響を与えないだろう。

(参考資料)
"U.S. Warned Russia Before Moscow Attack That Killed at Least 60", Wall Street Journal, March 22, 2024
「国連や欧米「テロ攻撃を非難」 モスクワ郊外の銃乱射で」、2024年3月23日、日本経済新聞電子版
「ロシアのコンサートホール襲撃、ISが犯行声明「数百人を殺傷」」、2024年3月23日、毎日新聞速報ニュース

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