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SXコラム サステナビリティ経営時代のSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)

-SX銘柄を通じた価値協創や日本の投資環境の展望-

2024/02/21

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概要

CSRの時代からサステナビリティ経営の時代へ。企業は持続可能な成長を目指し、事業そのものを変革するサステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)を求められている。経済産業省では、企業の持続的成長・価値創出、そして稼ぐ力の強化を企図し、伊藤レポートや価値協創ガイダンスで企業のSXを推進してきた。そして来る2024年、経済産業省は「SX銘柄2024」事業において、SX銘柄の選定とSX銘柄レポートを発信する予定であり、本事業の事務局は弊社野村総合研究所が務め、本事業を通じてSXの更なる促進と日本株のプレゼンス向上を経済産業省と目指していく。日本企業のSXは緒に着いたばかりである。

CSRからサステナビリティ経営の時代へ

企業が求められる経営スタイルは、ステークホルダーの要請や外部環境の変化を受け、ここ30年で大きく変化している。つまり、「選ばれつづけ、稼ぎ続ける」ために、企業は変化への対応に追われていると言えよう。
1990年代頃までは経済価値中心の経営が主であり、環境・社会価値を創出する活動は「CSR活動」として整理されていた。多くの企業において、環境・社会価値の創出はあくまで「企業の社会的責任」として活動し、経済価値創出とは別の軸で取り組むものであった。
2000年代に入ると、環境・社会価値がCSRの時代よりも意識されるようになり、2010年代前半には経済価値と環境・社会価値を両立させる「CSV経営」がマイケル・ポーター氏によって提唱され、企業において環境・社会価値創出がビジネス活動の前提として意識されるようになった。
2010年代後半には、経済・環境・社会価値それぞれが共存・同期し、持続可能なビジネスを通じたステークホルダーへの価値提供を通じて、企業がロングスパンで持続的に成長し続け、「稼ぐ力」の向上と、更なる価値創出へとつなげていくサステナビリティ経営を実現するために、自社の経営や事業をトランスフォームさせることが求められている。

〈図1.経済価値中心の経営からサステナビリティ経営・SXへの変遷〉

出所|野村総合研究所作成

SXの実現には、ステークホルダーと価値創造ストーリーを磨き上げることが必要

企業にSXが求められる状況の下、日本においては、経済産業省がSXの実現に向けた検討を実施。企業が将来的に持続的な成長を実現するための指針を具体的に示した報告書、「伊藤レポート」を取りまとめている。中でも「伊藤レポート3.0(SX版伊藤レポート)」では、先述のように、企業の長期的・持続的な価値創造のために、SXの重要性を強調している。加えて、SXを実現するためには企業活動におけるトランスフォーメーションのみでは達成されない、と述べられている。
本レポートによると、「『SX』の実現のためには、企業、投資家、取引先など、インベストメントチェーンに関わる様々なプレイヤーが、持続可能な社会の構築に対する要請を踏まえ、長期の時間軸における企業経営の在り方について建設的・実質的な対話を行い、それを磨き上げていくことが必要」とされている。また、「気候変動や生物多様性、人権等のサステナビリティ課題の多様化や、ルール環境の変動、サイバーセキュリティ等の経済安全保障関連課題の顕在化など、複雑化する事業環境の中で持続的な競争優位を確保していくため、SXの実現に向けた強靱な価値創造ストーリーの協創と、その実装が期待される」と整理されている。

〈図2.SXの実現させるビジネスの実装と価値創造ストーリーの共創〉

出所|経済産業省「伊藤レポート3.0(SX版伊藤レポート)」より野村総合研究所作成

また、経済産業省は伊藤レポート3.0(SX版伊藤レポート)に加え、価値協創ガイダンスを作成している。本ガイダンスは、伊藤レポートで発信しているSXを経営への実装や市場プレイヤーとの対話に落とし込んでいくための具体的なフレームワークを提示し、企業が市場プレイヤーに発信するべき情報(図3)を体系的・統合的に整理し、情報開⽰や投資家との対話の質を高める⼿引として位置付けており、企業のSX促進を目指している。

〈図3.価値協創ガイダンス SX実現のためのフレームワーク〉

出所|経済産業省「価値協創ガイダンス2.0」より引用

日本企業のSXの更なる促進に向けて「SX銘柄2024」事業を実施

経済産業省は、これまで紹介した伊藤レポート3.0(SX版伊藤レポート)で、SXの実現に向けて長期経営に求められる内容や、そのための企業と投資家等の建設的・実質的な対話の具体的な在り方を、価値協創ガイダンス2.0では、SX実施に向けた具体的なフレームワークを提示し、日本企業のSXの促進を図ってきた。
更なる日本企業のSX促進を狙い、同省では東京証券取引所と連携し、SX銘柄を選定する事業を2024年に実施する。本事業では、これまで伊藤レポートシリーズや価値協創ガイダンスで発信してきた内容を具体的に実践し、SXを通じて持続的に稼ぐ力を強化し、企業価値向上を実現している先進的な企業群を、 「SX銘柄 2024」として選定・表彰する。また、「SX銘柄レポート」として企業事例を発信することを通じて、 SXを日本企業全体に促していく。また、SX銘柄選定企業を「価値創造経営を進める日本企業の象徴」 として示すことで、日本企業に対する国内外の投資家による再評価を促す契機とすることも企図する。
本事業を契機として、日本企業へSXが浸透し、企業の取り組みが加速し、日本株が国内外の投資家から再評価されることが期待される。

〈図4.SX銘柄選定・レポート公表までの流れ〉

出所|SX銘柄評価委員会事務局「『SX銘柄2024』募集要領」より野村総合研究所作成

SXの取り組みは緒に就いたばかり。継続的な見直しや、ブラッシュアップが必要

SX銘柄2024が選定された後も、市場や国際機関等からの要請は続き、企業は引き続きサステナビリティイシュー対応が求められることが予想され、現時点でもIFRS「S1、S2」や自然資本に関するTNFDフレームワークへの対応、更に先には不平等に関する枠組みであるTIFDへの対応等が求められるだろう。企業は自社の取り組みやサステナビリティイシューを見直し、市場プレイヤーとの継続的な対話を通じて、自社のビジネスや価値創造ストーリーを磨き上げ続けることが求められる。SXの取り組みは加速していくが、まだ緒に就いたばかりである。

野村総合研究所では、SX銘柄2024の事務局を務めており、銘柄選定の支援を行っている。本事業を通じて、伊藤レポート及び価値協創ガイダンスやSXを推進する上でのポイントやSXを推進しているベストプラクティスについて深く理解をし、知見を蓄積している。また、弊社はコンサルティング事業において、企業のサステナビリティ経営・SXの推進支援を行う一方で、プライム市場上場企業として、サステナビリティ経営及びSXを具体的に実践している企業でもあり、コンサルティングと事業者側の視点、双方を兼ね備えており、双方の視点から具体的なSXの伴走支援が可能である。サステナビリティ経営・SX推進・強化にご関心や課題感がある企業ご担当者様はお気軽にご連絡ください。

執筆者情報

  • 大向 望

    金融コンサルティング部

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株式会社野村総合研究所 コンサルティング事業本部
E-mail:consulting_inquiry@nri.co.jp

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