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日本企業のIT活用とデジタル化 - IT活用実態調査の結果から

第17回 デジタル化に関わる投資の成果と経営層の役割との関係性

2024/11/26

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株式会社野村総合研究所では、2003年より毎年、売上高上位の国内企業約3000社を対象に「ユーザ企業のIT活用実態調査」を実施しています。この連載では、最新の調査から、いくつかの設問をピックアップして集計結果をご紹介します。日本企業のIT活用動向を知るとともに、自社のデジタル化および情報化の戦略を考える一助としてご活用ください。

注目される調査結果のエグゼクティブサマリーはこちら

本調査では、デジタル化の三つの領域(顧客に対する活動のデジタル化、業務プロセスのデジタル化、デジタル化による事業やビジネスモデルの変革)について、それぞれ取り組みを行っている企業に投資の成果が得られているかを尋ねました。(図表1)

図表1 デジタル化に関わる投資の成果

何らかの定量的成果を得られている企業は、顧客に対する活動のデジタル化では54.8%、業務プロセスのデジタル化では63.1%に上ります。一方、デジタル化による事業やビジネスモデルの変革では39.0%にとどまっており、先の二つの領域に比べて投資成果の創出に苦戦している状況が反映された結果となっています。デジタル化を進めるためには、改革や新ビジネスの方向性を明確に定義し、組織横断での一体感のある推進体制を構築する必要があります。そして、これらの実現には、ビジネスの旗振り役の経営層による積極的な関与が重要ではないでしょうか。

本調査では、デジタル化や情報化の領域で経営層がどのような役割を果たしているかを尋ねる問いを設けています。そこで、デジタル化による成果と、経営層の役割との関係を確認してみましょう。図表2の表側は、経営層がデジタル化や情報化の領域で果たしている役割を示しています。表内の数値は、経営層がそれらの役割を果たしている企業において、定量的成果が得られている割合が全体と比べてどの程度高いかを示しています。

図表2 デジタル化による定量的成果と経営層の役割との関係

  • デジタル化に関わる投資の成果を尋ねた設問とデジタル化領域・情報化領域での経営層の役割を尋ねた設問をクロス分析し、リフト値(下記)として算出した数値から1を引くことで、成果の得られやすさがどの程度向上したかを示す割合を算出(小数点を四捨五入)
  • 本分析におけるリフト値=(経営層が該当の役割を持ち、取り組んでいる かつ 成果を得ている企業数 / 経営層が該当の役割を持ち、取り組んでいる企業数)/(取り組んでいる かつ 成果を得ている企業数 / 取り組んでいる企業数)

これを見ると、経営層が「全社単位での戦略について、企画段階から必要性や方向性について指示を出す」という企業は、全体と比べて、顧客に対する活動のデジタル化で29%、業務プロセスのデジタル化で12%、定量的成果が得られている割合が高いことがわかります。同様に、経営層が「全社単位での戦略について、実行・推進の状況を定期的に確認し指示を出す」という企業では、顧客に対する活動のデジタル化で21%、業務プロセスのデジタル化で15%、定量的成果が得られている割合が高いこともわかります。経営層が戦略の方向性を示すことは、各部門が同じ意識をもってデジタル化に取り組むことを促します。組織の利害を越えた協働を実現する上で、経営層の指示は不可欠です。

例えば、ある製造業で、機能別組織の枠組みを超えたサプライチェーンの高度化を実現する場合を想定しましょう。リアルタイムで生産・在庫・物流を管理するために、サプライチェーン上のプロセスを統合することが求められます。しかし、このような場合、各プロセスのオーナーとなる組織が部門内の最適化を優先して考えてしまい、組織間の連携がうまくいかないことがあります。そのような状況では、経営層が全体の最適化によるコスト削減を目的として掲げ、各部門に徹底することが求められます。

図表2を見ると、経営層が「個々のプロジェクトについて、企画段階から必要性や方向性について指示を出す」という企業は、全体と比べて、デジタル化による事業やビジネスモデルの変革において19%、定量的成果が得られている割合が高いこともわかります。この領域は不確実性が高く、当初から全社一丸で取り組むというよりは、むしろ小さな実証実験から始めて試行を繰り返しながらプロジェクトを軌道に乗せ、大きな変革へと繋げていく企業が多いと考えられます。したがって、経営層が個々のプロジェクトに対して当事者意識を抱き、関与していくことが求められます。

今回の分析では、デジタル化のいずれの領域でも、経営層はその内容について確認や決裁を行うだけでなく、自らその方向性を示し指示を出していく必要があることが示唆されました。これが、変革から成果を導く条件の一つであると言えるでしょう。

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執筆者情報

  • 望月 魁

    システムコンサルティング事業本部

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