電気・ガス料金補助金とガソリン補助金の予算確保のために補正予算編成を検討
高市首相は18日の政府与党連絡会議で、2026年度補正予算案編成も含めて、対応を検討するよう片山財務相らに指示したことを明らかにした。一方で、自民、日本維新の会両党の政調会長に対し、7~9月の電気・ガス料金が昨年夏の水準を下回る支援策を実施するよう指示したという。
2025年夏(2025年7~9月使用分)の電気・ガス料金補助の予算総額は約2,881億円だった。今回は、それと同等かあるいは上回る規模の予算の確保が検討されるとみられる。昨年夏よりも原油・LNGの価格が高騰している中で、家計の負担を昨年夏の水準以下まで抑えるためには、相応の予算規模が必要となる。一部で報道されているように、5,000億円規模となる可能性もあるだろう。その場合、2026年度予算の予備費1兆円の半分を使ってしまうことになる。
一方で、3月19日に導入したガソリン補助金は、現在のペースで実施を続ければ6月29日に予算を使い果たす計算だ(コラム「ガソリン補助金の予算枯渇シミュレーション:残り1か月半」、5月13日)。予算の枯渇とともに補助金が打ち切られるとの観測を浮上させないためには、前倒しで予算を確保する必要があると政府は考えているだろう。政府はそれを5月中にも実施するのではないか。
このように、電気・ガス料金の補助金導入のための予算確保とガソリン補助金の追加財源の確保が重なり、補正予算編成を通じた予算確保が避けられない情勢となってきた。ガソリン補助金は5月18日までの1か月間で4,700億円程度の予算が使われたと試算される。仮に2か月以上の予算を確保するためには、1兆円規模の予算を確保する必要がある。電気・ガス料金補助の予算を合わせれば、1.5兆円規模となる計算だ。そのうち5,000億円程度を本予算の予備費から賄うとすると、原油高対策に限る場合の補正予算の規模は、1兆円程度が一つの目途となるのではないか。
2025年夏(2025年7~9月使用分)の電気・ガス料金補助の予算総額は約2,881億円だった。今回は、それと同等かあるいは上回る規模の予算の確保が検討されるとみられる。昨年夏よりも原油・LNGの価格が高騰している中で、家計の負担を昨年夏の水準以下まで抑えるためには、相応の予算規模が必要となる。一部で報道されているように、5,000億円規模となる可能性もあるだろう。その場合、2026年度予算の予備費1兆円の半分を使ってしまうことになる。
一方で、3月19日に導入したガソリン補助金は、現在のペースで実施を続ければ6月29日に予算を使い果たす計算だ(コラム「ガソリン補助金の予算枯渇シミュレーション:残り1か月半」、5月13日)。予算の枯渇とともに補助金が打ち切られるとの観測を浮上させないためには、前倒しで予算を確保する必要があると政府は考えているだろう。政府はそれを5月中にも実施するのではないか。
このように、電気・ガス料金の補助金導入のための予算確保とガソリン補助金の追加財源の確保が重なり、補正予算編成を通じた予算確保が避けられない情勢となってきた。ガソリン補助金は5月18日までの1か月間で4,700億円程度の予算が使われたと試算される。仮に2か月以上の予算を確保するためには、1兆円規模の予算を確保する必要がある。電気・ガス料金補助の予算を合わせれば、1.5兆円規模となる計算だ。そのうち5,000億円程度を本予算の予備費から賄うとすると、原油高対策に限る場合の補正予算の規模は、1兆円程度が一つの目途となるのではないか。
長期金利上昇に配慮して財政政策全体は規律重視を
一方、足もとでは長期金利が急騰を続けており、18日には10年国債の金利が一時2.8%台に達した。それが、経済や株式市場など金融市場の安定性、金融機関の財務環境への悪影響が懸念される状況となっている。長期金利上昇の最大の要因は、原油価格上昇を受けた世界的なインフレリスクの上昇である。
それに加えて日本では、補正予算編成のように、原油高対策で財政環境はさらに悪化する財政リスクの上昇も、長期金利を押し上げている。この点から、原油高対策に必要な予算を補正予算で手当てするとしても、その規模をできる限り抑制する、あるいは財政政策全体では積極財政姿勢を後退することが求められる。
具体的には、補正予算編成においては、以下の3点に配慮すべきだ(コラム「政府は補正予算編成を検討:ガソリン補助金の見直しや低所得者向け給付金も選択肢に」、2026年5月15日)。
第1に、すべての家庭に対して一律に補助をする現在の制度は、予算をかなり圧迫してしまう点が問題だ。対象を低所得層に絞り込めば、低所得者対策としてより有効性が高まる一方、予算規模を抑えることも可能となる。所得制限を付けた補助金制度が技術的に難しいのであれば、一律のガソリン補助金、電気・ガス補助金をかなり限定された規模に抑え、他方で、低所得層には別途給付金を支給しても良いだろう。
第2に、中東情勢の緊迫化、原油価格高騰への対応が財政環境を一段と悪化させ、市場の財政に対する信頼の低下から円安や長期金利の上昇を招かないように、他の財政政策では財政規律に一段と配慮することが重要だ。それは例えば、年5兆円の財源確保の目途が立っていない食料品の消費税率引き下げを見送ることや、来年度予算では「危機管理投資」など、高市政権の目玉の積極財政姿勢を見直すことなどが求められる。
それに加えて日本では、補正予算編成のように、原油高対策で財政環境はさらに悪化する財政リスクの上昇も、長期金利を押し上げている。この点から、原油高対策に必要な予算を補正予算で手当てするとしても、その規模をできる限り抑制する、あるいは財政政策全体では積極財政姿勢を後退することが求められる。
具体的には、補正予算編成においては、以下の3点に配慮すべきだ(コラム「政府は補正予算編成を検討:ガソリン補助金の見直しや低所得者向け給付金も選択肢に」、2026年5月15日)。
第1に、すべての家庭に対して一律に補助をする現在の制度は、予算をかなり圧迫してしまう点が問題だ。対象を低所得層に絞り込めば、低所得者対策としてより有効性が高まる一方、予算規模を抑えることも可能となる。所得制限を付けた補助金制度が技術的に難しいのであれば、一律のガソリン補助金、電気・ガス補助金をかなり限定された規模に抑え、他方で、低所得層には別途給付金を支給しても良いだろう。
第2に、中東情勢の緊迫化、原油価格高騰への対応が財政環境を一段と悪化させ、市場の財政に対する信頼の低下から円安や長期金利の上昇を招かないように、他の財政政策では財政規律に一段と配慮することが重要だ。それは例えば、年5兆円の財源確保の目途が立っていない食料品の消費税率引き下げを見送ることや、来年度予算では「危機管理投資」など、高市政権の目玉の積極財政姿勢を見直すことなどが求められる。
緩やかな需要抑制策も始めるべき
第3に、家計を支援するだけではなく、緩やかな需要抑制策も始めるべきだ。高市首相は、原油・ガソリンの供給不足のリスクは小さいとして、企業や家計に電気、ガソリンなどの消費を節約するように呼びかけることに否定的だ。しかし、石油備蓄の放出や代替ルートでの原油・ナフサの調達にはその持続性に不安がある。それが、企業が原油関連の原材料や製品の減産を続け、各種製品の品不足や価格高騰を生じさせる原因ともなっていると思われる(コラム「原油・ナフサの代替ルートでの調達を進めても、供給不足と価格高騰のリスクは高まっていく(1~3月期GDP統計の見通し)」、2026年5月14日)。
政府が企業や家計に電気、ガソリンなどの需要を節約するように呼び掛ける需要抑制策を、石油備蓄の放出や代替ルートでの原油・ナフサの調達といった供給側の政策と併せて実施すれば、企業の不安は緩和され、減産の動きも弱まるのではないか。
その際に、ガソリン補助金、電気・ガス補助金で家計の負担を相殺すれば、消費者の節約のインセンティブを損ねてしまう。電気、ガソリンなどの需要を節約するように呼びかける需要抑制策と矛盾してしまうのである。
この点から、既に述べたように、一律のガソリン補助金、電気・ガス補助金の規模を抑えて一定程度のガソリン価格、電気・ガス料金の上昇を家計に受け入れてもらう一方、低所得者の生活については、別途、給付金制度で支援することなどが選択肢となるだろう。ちなみに、迅速な物価高対策として、給付金は食料品の消費税率の2年間ゼロ化などよりも実効性は高いと言える(コラム「迅速な物価高対策として給付金は選択肢」、2026年5月8日)。補正予算編成を検討する中、政府は原油高対策の全体を検討し直すべきだろう。
政府が企業や家計に電気、ガソリンなどの需要を節約するように呼び掛ける需要抑制策を、石油備蓄の放出や代替ルートでの原油・ナフサの調達といった供給側の政策と併せて実施すれば、企業の不安は緩和され、減産の動きも弱まるのではないか。
その際に、ガソリン補助金、電気・ガス補助金で家計の負担を相殺すれば、消費者の節約のインセンティブを損ねてしまう。電気、ガソリンなどの需要を節約するように呼びかける需要抑制策と矛盾してしまうのである。
この点から、既に述べたように、一律のガソリン補助金、電気・ガス補助金の規模を抑えて一定程度のガソリン価格、電気・ガス料金の上昇を家計に受け入れてもらう一方、低所得者の生活については、別途、給付金制度で支援することなどが選択肢となるだろう。ちなみに、迅速な物価高対策として、給付金は食料品の消費税率の2年間ゼロ化などよりも実効性は高いと言える(コラム「迅速な物価高対策として給付金は選択肢」、2026年5月8日)。補正予算編成を検討する中、政府は原油高対策の全体を検討し直すべきだろう。
プロフィール
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木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。