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金利上昇がAIブームの逆風に

10月15日の東京市場で、日経平均株価は一時3,000円を超える大幅下落となった。そのきっかけとなったのは、前日の米ナスダック市場での株価の大幅下落だ。
 
米労働省が発表した9月消費者物価指数が予想以上に上振れたことをきっかけに、後退していた10月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ観測が再浮上したことが、ナスダック市場でのAI・半導体関連の株価を下落させた。また韓国株も日本以上に急落しており、株価の下落はアジア市場全体に広がっている。
 
この株価下落は、金利上昇に弱いというハイテク株の特徴が大きく現れた形であるが、それは9月以来見られていた現象でもある。9月に日本では10年国債利回りが3%台に乗った。米国でも9月以降10年国債利回りの上昇が目立ち、一時は5.3%台に達していた。
 
2026年にはハイパースケーラー5社の設備投資が営業キャッシュフローを超える、節目を迎えると考えられる。その結果、AI関連投資は外部資金への依存度を強めている(コラム「米国AI投資ブームの持続性と金融リスク」、2026年10月1日、「AI関連需要の経済効果の各国比較と金融リスク」、2026年10月14日)。このことは、AI関連投資が金融市場の環境に大きな影響を受けやすくなっていることを意味するだろう。長期国債利回りが上昇すれば、AI関連株は調整し、ハイパースケーラーは株式及び社債での資金調達が難しくなる。こうして、金融市場の変調はAI関連投資を鈍化させる。

株安・円高・債券高のリスクオフ相場に

一方、米国経済や物価はAI関連需要に大きく依存していることから、それが鈍化すれば、成長率の下振れとインフレリスクの後退につながりやすい。その結果、長期国債利回りやドルは一転して低下しやすくなる。このようにAIブームは経済を介して金融市場と相互に強く連動している構図だ。
 
15日の東京市場では、株価の大幅下落とともに、長期国債利回りが大幅に下落しており、10年国債利回りは一気に2.9%台に入った。他方、ドル円レートは1ドル157円台と前日の一時159円近くからドル安円高に振れた。
 
株価下落とともに債券高、円高が進む構図は、典型的な「リスクオフ」モードだ。AI・半導体関連株の下落を契機に、金融市場は「リスクオフ」モードを強めている。

米中間選挙後のAI規制の動きにも注目

既述のように、AIブームの大きな逆風となるのは、長期利回りの上昇をきっかけとする金融市場環境の変調だ。株式市場でのAI相場が本格的な調整局面に入ったかどうかはまだ判断できないが、日本の10年国債利回りで3%台、米国の10年国債利回りで5%台という水準は、経済ファンダメンタルズに照らせば高すぎ、それがAIブームの逆風になっていることは考えられる。
 
もう一点、AIブームの大きな逆風となる可能性があるのが、その是非は別として、規制強化の動きである。この点から、11月3日の米国中間選挙は大いに注目される(コラム「2026年米国中間選挙展望:シナリオ別の経済政策と金融市場への影響」、2026年10月8日)。
 
民主党が下院あるいは両院を制すれば、トランプ政権と共和党議会が進めようとするAI推進に力点を置いた法整備の動きは妨げられ、民主党の影響力が大きい州で、AI規制強化の動きがさらに加速する可能性が出てくる。

プロフィール

  • 木内 登英のポートレート

    木内 登英

    金融ITイノベーション事業本部

    エグゼクティブ・エコノミスト

    

    1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。