次回12月の会合で0.25%利上げの可能性
日本銀行は、10月30日に開いた金融政策決定会合で政策金利の据え置きを決め(賛成8反対1)、9月の会合に続く連続利上げを見送った。決定は事前予想通りだった。金融市場が大きく動揺しない限り、次回12月の会合で0.25%の利上げが実施される可能性が高いと思われる。
他方、事前に報じられていたように、展望レポートで「基調的な物価上昇率が2%の『物価安定の目標』と概ね整合的な水準となるなか」と記述され、基調的な物価上昇率が2%に到達したとの判断が示された(コラム「日本銀行は2%の物価目標水準に到達の判断を示すか」、2026年10月21日、「9か月ぶりの2%台となった9月CPIと日銀決定会合」、2026年10月23日、「日銀は基調的な物価が2%の目標水準に到達と判断も、約14年前に目指した良い物価上昇はなお実現されず」、2026年10月29日)。
展望レポートでは、2027年度の消費者物価上昇率見通しの中央値が+2.6%と前回から+0.2%ポイント引き上げられた一方、実質GDP成長率の見通しの中央値は、+0.7%と前回から0.1%ポイント引き下げられた。
他方、事前に報じられていたように、展望レポートで「基調的な物価上昇率が2%の『物価安定の目標』と概ね整合的な水準となるなか」と記述され、基調的な物価上昇率が2%に到達したとの判断が示された(コラム「日本銀行は2%の物価目標水準に到達の判断を示すか」、2026年10月21日、「9か月ぶりの2%台となった9月CPIと日銀決定会合」、2026年10月23日、「日銀は基調的な物価が2%の目標水準に到達と判断も、約14年前に目指した良い物価上昇はなお実現されず」、2026年10月29日)。
展望レポートでは、2027年度の消費者物価上昇率見通しの中央値が+2.6%と前回から+0.2%ポイント引き上げられた一方、実質GDP成長率の見通しの中央値は、+0.7%と前回から0.1%ポイント引き下げられた。
ETFの売却ペースを加速
会合ではETFの売却ペースの見直しも決めた。今年の1月からは簿価で年間3,300億円程度のペースでのETF売却を進めてきたが、これを2027年1月からは8,600億円程度に増加させる。市場全体の売買代金に占める年間売却額(時価)でみると0.05%程度から0.1%程度と2倍になる。それでも、売却額の規模はなお小さく、株価への直接的な影響は限られるだろう。
ただし、今回の見直しで日本銀行は政治的なリスクを負った可能性がある。従来の売却額は、日本銀行がかつて銀行から買い入れた株式を売却した際のペースに相当するものだ。その際には、売却額の根拠も示された。さらに、その売却が市場を混乱させなかったという長い経験も蓄積されている。
しかし今回の見直しでは、増額された規模の妥当性を示す定量的な根拠は示されていない。それでも規模が小さいことに変わりないが、仮に何らかの理由で株価が大幅に下落するような局面では、それが日本銀行のETF売却によるものだ、と根拠のない批判を浴びる可能性もある。
また、株価が下落に転じると、政権への悪影響を懸念する政府が、日本銀行のETF売却の減額や停止を水面下で要請するなど、政治介入を強めるきっかけとなってしまう可能性もあるだろう。
今回の見直しによっても、日本銀行のETF売却完了にかかる年数は約43年となる。現在の約112年よりは縮小するが、依然として現実的な出口のスキームとは言えない。売却額を今後さらに増加させる可能性はあるが、市場への影響や上記の政治的なリスクを踏まえれば、市場売却を通じて日本銀行が保有するETFをオフバランス化することは現実的ではないだろう。
いずれかの時点で、保有するETFを一気に外部の受け皿機関に移管するような「出口戦略の最終形」を日本銀行は示すのではないか。それは植田総裁の任期中である可能性もあるだろう。
ただし、今回の見直しで日本銀行は政治的なリスクを負った可能性がある。従来の売却額は、日本銀行がかつて銀行から買い入れた株式を売却した際のペースに相当するものだ。その際には、売却額の根拠も示された。さらに、その売却が市場を混乱させなかったという長い経験も蓄積されている。
しかし今回の見直しでは、増額された規模の妥当性を示す定量的な根拠は示されていない。それでも規模が小さいことに変わりないが、仮に何らかの理由で株価が大幅に下落するような局面では、それが日本銀行のETF売却によるものだ、と根拠のない批判を浴びる可能性もある。
また、株価が下落に転じると、政権への悪影響を懸念する政府が、日本銀行のETF売却の減額や停止を水面下で要請するなど、政治介入を強めるきっかけとなってしまう可能性もあるだろう。
今回の見直しによっても、日本銀行のETF売却完了にかかる年数は約43年となる。現在の約112年よりは縮小するが、依然として現実的な出口のスキームとは言えない。売却額を今後さらに増加させる可能性はあるが、市場への影響や上記の政治的なリスクを踏まえれば、市場売却を通じて日本銀行が保有するETFをオフバランス化することは現実的ではないだろう。
いずれかの時点で、保有するETFを一気に外部の受け皿機関に移管するような「出口戦略の最終形」を日本銀行は示すのではないか。それは植田総裁の任期中である可能性もあるだろう。
基調的な物価2%到達の判断と政策の局面変化
今回日本銀行が、基調的な物価上昇率が2%に到達したとの判断を示したのは、予想されていたことだ。9月分全国CPI(消費者物価指数)で、生鮮食品を除くコアCPIは前年同月比+2.1%と8月の+1.7%から上振れ、昨年12月以来9か月ぶりの2%台となったこと、トランプ政権からの働きかけもあり、政府からの利上げへの牽制が弱まったことで、日本銀行はこのタイミングで判断を示すことを選択した可能性があるだろう。
またその布石は、前回9月の会合で既に打たれていたとも考えられる。植田総裁は9月の会合後の記者会見で、「政策の局面が変化した」と説明したが、それは、金融政策がこれまでの「物価を目標値の2%まで引き上げることを目指す段階」から、「物価を目標値の2%で安定させ、物価目標の持続的な達成を目指す段階」へと移ったことを意味するものだっただろう。
またその布石は、前回9月の会合で既に打たれていたとも考えられる。植田総裁は9月の会合後の記者会見で、「政策の局面が変化した」と説明したが、それは、金融政策がこれまでの「物価を目標値の2%まで引き上げることを目指す段階」から、「物価を目標値の2%で安定させ、物価目標の持続的な達成を目指す段階」へと移ったことを意味するものだっただろう。
当面は基調的な物価上昇率が目標値の2%を上回るリスクへの対応
展望レポートでも示されたように、原油価格高騰などの影響により、基調的な物価上昇率が目標値の2%を上回るリスクがあることから、当面の金融政策は、それを回避することに重点が置かれる。それが、「利上げペースの加速」だ。
9月には従来よりも短い約3か月の間隔で利上げが実施されたが、12月の決定会合でも0.25%の利上げが実施されるとみられ、「利上げペースの加速」の局面が続くだろう。
基調的な物価上昇率が2%の目標水準に到達したのであれば、本来、政策金利は中立水準に到達しているはずであるが、日本銀行は中立水準の不確実性が高いことから、それについては明確な判断を避けるだろう。
それでも、今後政策金利の引き上げが続くなか、政策金利が中立水準を上回り、金融政策が金融緩和の縮小という正常化局面から金融引き締め局面へと入っていく可能性が高まる。その場合には、政府からは金融引き締めによる景気への懸念が再び示される可能性がある。
9月には従来よりも短い約3か月の間隔で利上げが実施されたが、12月の決定会合でも0.25%の利上げが実施されるとみられ、「利上げペースの加速」の局面が続くだろう。
基調的な物価上昇率が2%の目標水準に到達したのであれば、本来、政策金利は中立水準に到達しているはずであるが、日本銀行は中立水準の不確実性が高いことから、それについては明確な判断を避けるだろう。
それでも、今後政策金利の引き上げが続くなか、政策金利が中立水準を上回り、金融政策が金融緩和の縮小という正常化局面から金融引き締め局面へと入っていく可能性が高まる。その場合には、政府からは金融引き締めによる景気への懸念が再び示される可能性がある。
物価2%到達も「良い物価上昇」はなお実現せず
日本銀行は2013年1月に2%の物価目標を掲げた。それから約14年の長い時間を経て、ようやく基調的な物価上昇率が2%の目標値に到達したとの判断が示されたことになる。
しかしながら、日本銀行が約14年前に目指した物価目標の達成は、本当のところでは、なお遠いと言えるだろう。経済の潜在力が向上し、需要が高まるなかで物価上昇率が持続的に高まるという「良い物価上昇」は、依然として見えていない。
過去数年の物価上昇率の上振れは、円安、原油高といった供給要因によるものであり、それは個人消費を抑制し、経済に打撃を与える「悪い物価上昇」である。そのため、持続的ではない。
日本銀行は、来年から再来年にかけて1.75%~2.0%まで政策金利を引き上げることが予想されるが、供給要因による持続的でない物価上昇率の上振れは次第に収まり、物価上昇率、インフレ期待は低下していくことが予想される。その場合、日本銀行が政策金利の引き下げに転じる局面も、再来年以降は出てくるのではないか。
過去数年の高い物価上昇率は、日本銀行が目指してきた「良い物価上昇」ではなかった。ただし、それをきっかけに、過度な円安の原因となるなど、様々な潜在的な副作用を生じさせる異例の金融緩和策が、解消方向で修正されてきたのは、良いことだった。
しかしながら、日本銀行が約14年前に目指した物価目標の達成は、本当のところでは、なお遠いと言えるだろう。経済の潜在力が向上し、需要が高まるなかで物価上昇率が持続的に高まるという「良い物価上昇」は、依然として見えていない。
過去数年の物価上昇率の上振れは、円安、原油高といった供給要因によるものであり、それは個人消費を抑制し、経済に打撃を与える「悪い物価上昇」である。そのため、持続的ではない。
日本銀行は、来年から再来年にかけて1.75%~2.0%まで政策金利を引き上げることが予想されるが、供給要因による持続的でない物価上昇率の上振れは次第に収まり、物価上昇率、インフレ期待は低下していくことが予想される。その場合、日本銀行が政策金利の引き下げに転じる局面も、再来年以降は出てくるのではないか。
過去数年の高い物価上昇率は、日本銀行が目指してきた「良い物価上昇」ではなかった。ただし、それをきっかけに、過度な円安の原因となるなど、様々な潜在的な副作用を生じさせる異例の金融緩和策が、解消方向で修正されてきたのは、良いことだった。
プロフィール
-
木内 登英のポートレート 木内 登英
金融ITイノベーション事業本部
エグゼクティブ・エコノミスト
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
※組織名、職名は現在と異なる場合があります。