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民主党躍進でブルーウェイブの様相に

米国時間3日に投票が行われた中間選挙の開票が進み、日本時間4日には民主党が下院と上院の双方で過半数を奪回することがほぼ確実となった。民主党が大きく躍進する「ブルーウェイブ」の様相が強まっている。

トランプ大統領は選挙結果を受け入れる姿勢を示した。トランプ大統領が選挙結果を受け入れずに政治混乱が長引く事態は回避される方向だ。

民主党の勝利は日本経済にプラスも短期的にはリスク

民主党が下院あるいは上院で過半数を獲得すれば、トランプ政権による政策の推進力は削がれるだろう。そのため、政権が関税政策や対イラン強硬政策をさらにエスカレートさせることは制約を受けることが予想される。
 
もっとも、議会が民主党主導になったとしても、法律によって大統領の政策を完全に抑えることができるわけではない。それでも、大統領権限による関税の不当性を訴え、調査などを行うことは可能だ。また、議会が戦費を賄うための追加予算の成立を阻むことで、戦争継続能力を低下させることができる。
 
関税政策や対イラン強硬政策が一定程度制約を受ければ、日本からの対米輸出環境の悪化を食い止め、また、原油価格の安定が物価の安定をもたらして国民生活にはプラスとなる。これが基本観である。
 
ただし、共和党が中間選挙で敗れれば、トランプ政権は制約を受けやすい内政から制約を受けにくい対外政策へと政策の重点を移す可能性がある。トランプ大統領は、もはや国民の評価を気にせずに、レガシー作りのために、関税策、対イラン攻撃をエスカレートさせる可能性が短期的にはあるだろう。そうしたことは、来年1月3日に新議会が開かれるまでの短期のリスクと考える(コラム「米国中間選挙が日本に与える影響:民主党勝利で円安・物価高、AIへの逆風のリスクも」、2026年10月29日)。
 
トランプ政権が日本に対する関税率を、15%を超えて引き上げる可能性は限られるが、関税率引き下げと引き換えに日本が受けいれた5,500億ドルの対米投資計画については、米国側の都合の良い案件を受け入れるよう、圧力をかけてくる可能性がある。関税政策は米国内での物価高をもたらし、今回の共和党敗北の要因の一つとなった。他方、トランプ大統領は関税政策の副産物とも言える投資計画を自らの政策の成果としてアピールし、レガシー(遺産)とする考えだろう。

AI規制強化への警戒から円高・株安が進む

選挙結果が日本の経済や国民生活にどのような影響を及ぼすかは、金融市場がどう反応するかよっても大きく左右する。民主党が下院を制すると、共和党・トランプ政権が進める積極財政政策が阻まれ、財政リスクが低下することで「良いドル高」が生じやすい。また、民主党が上院を制する場合には、FRB人事に対する大統領の影響力を一定程度制約する可能性がある。その結果、FRBとドルの信認が高まり、「良いドル高」が一層強まりやすい(コラム「2026年米国中間選挙展望:シナリオ別の経済政策と金融市場への影響」、2026年10月8日)。

ドル高・円安は、日本では物価上昇圧力を生じさせやすいため、やや懸念されるところだ。他方、民主党が勝利すると、AI規制が強化されるとの観測が強まる(コラム「AI関連株の急落と米中間選挙」、2026年11月2日)。これは株価を押し下げ、それがリスク回避の円買いを後押しするため、円高が進む。

中間選挙の結果が円安をもたらすのか、円高をもたらすのかは、AI規制強化の観測がどの程度強まるのかに依存するだろう。4日の東京市場では、日経平均株価は一時3000円を超える大幅安となった。またドル円レートは1ドル157円台前半まで円高が進んだ。円高と株安の強い連鎖が生じている。それは、ブルーウェイブによってAI規制強化への懸念がより大きく意識されたためだ。

中間選挙の結果が金融市場に与える影響は複雑であるが、AI関連の巨額の投資資金が回収できるかどうかへの疑念を持ち始めている金融市場にとっては、中間選挙結果への関心が、選挙後のAI規制の動きに現在のところは集中している可能性がある。

プロフィール

  • 木内 登英のポートレート

    木内 登英

    金融ITイノベーション事業本部

    エグゼクティブ・エコノミスト

    

    1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。