&N 未来創発ラボ

野村総合研究所と
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1.自動運転は、いま2つの流れに乗って進んでいる

AIの進歩を追い風に、自動運転技術の進化が加速しています。米国や中国の一部の都市では、運転席に誰もいないロボタクシーがすでに街を走り始めていて、いわゆる「レベル4」の自動運転が現実のものとなっています。日本でも、政府が「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」という枠組みのなかで、実用化に向けた目標時期や技術開発のロードマップを示し、企業の投資や研究を後押ししています。

この加速を支えているのが、2つの技術開発の流れです。1つは「技術そのものの性能をとことん磨く」という流れ、もう1つは「開発や運用のやり方をもっと効率よくする」という流れです。

1つ目は、この記事で「個別機能の高度化」と呼ぶ流れです。これは、周囲の環境を認識したり、状況を判断したり、車を制御したり、といった一つひとつの機能の精度を高めていく技術のことです。レベル4以上の自動運転を実用化しようと思うと、高い安全性が絶対に欠かせません。土砂降りのなかを走ったり、急に歩行者が飛び出してきたり――現実の世界には、事前の想定を超えた「やっかいな場面(エッジケース)」がいくらでもあります。そうした場面に対応するために、個々の機能の高度化が進められています。

2つ目は、「開発・運用プロセスの最適化」という流れです。自動運転AIの開発には、多くの投資が必要ですし、いざ実用化したあとにも「台数を一気に増やせるのか(スケーラビリティ)」というビジネス上の悩みもついてまわります。そこで、開発から運用までの一連の流れ全体を効率化・自動化して、自動運転システムを継続的にアップデートしていく仕組みづくりが進んでいます。

この2つはどちらか片方だけ進めればいいというものではなく、両方を同時に回していくことが、自動運転開発には欠かせません。そこでこの記事では、自動運転に取り組む主要な企業を「伝統的OEM」「新興OEM」「技術供給型IT企業」「サービス提供型企業」の4タイプに分けて、それぞれがこの2つの流れにどう向き合っているのかを、特許の出願データも見ながら紹介していきます。

前回のブログ「自動運転技術の動向と発展のカギ」はこちら

2.2つの流れはどのような技術なのか?

1)機能高度化技術 ― 実用化の壁を越えるための技術

機能高度化技術は、自動運転を支える一つひとつの機能(認識、自己位置推定、経路計画、車両制御)の性能を高めていく技術群のことです。これらの機能には、雨の日でも夜でも、センサーの種類や交通状況が変わっても、いつでも安定して動いてくれることが求められます。それでは、代表的なものを見ていきましょう。

  • センサーフュージョン技術(認識のための技術)
    カメラ、LiDAR1、レーダーなど、機能が異なる複数のセンサーの情報を1つにまとめ上げ、矛盾のないひとつの「全体像」をつくる技術です。悪天候のように、単独のセンサーでは正確に見えない状況でも、それぞれの弱点をお互いに補い合うことで、認識の信頼性を高めてくれます。
  • コンピュータビジョン技術(認識のための技術)
    カメラの映像をAIで解析し、車線や標識、車、歩行者といった周りの環境を識別・理解する技術です。ディープラーニングを使うことで、画像のなかから「これは車」「これは歩行者」と高い精度で見分けられるようになります。LiDARに頼らないシステムを目指す企業にとっては特に重要で、悪天候でも正しく認識できるように、いまも開発が続いています。
  • SLAM技術(自分の位置を知るための技術)
    カメラやLiDARの情報から、車が「いま自分はどこにいるか」を正確に割り出すと同時に、周りの地図をその場で作成する技術です。これまでは高精度な専用地図に頼る方式が主流でしたが、地図の作成・維持にコストがかかったり、そもそも地図がない場所では走れなかったり、といった悩みがありました。SLAMは、そうした地図への依存を減らし、地図が整っていない場所でも安全に走るための技術として注目されています。
  • 計画生成技術(どう走るかを決める技術)
    周辺環境と自分の位置をもとに、障害物を避け、交通ルールを守りながら、目的地までの安全で最適なルートをリアルタイムで生成する技術です。複雑な交差点での右左折、合流のタイミング、歩行者の動きを予測した進路の調整など、人間のドライバーのような自然な判断が求められる状況で威力を発揮します。

2)プロセス最適化技術 ― 効率よく、改善し続けるための技術

プロセス最適化技術は、システムの開発から、実用化したあとの運用・改善まで、一連のプロセス全体を効率よく回し、性能を上げ続けていくための技術群です。これには大きく3つの方向性があります。システム設計そのものを見直す「アーキテクチャーの革新」、開発から運用までの各工程を自動化する「プロセスの革新」、そして車1台を超えて交通システム全体で最適化を図る「協調の革新」です。

【アーキテクチャーの革新】

これまでの自動運転システムは、認識・判断・制御といった機能をそれぞれ別々の部品(モジュール)としてつくり、あとで組み合わせる「モジュール型」が主流でした。ただ、この方式だとモジュール同士のすり合わせに手間がかかり、システム全体を最適にするのが難しいという課題がありました。そこで、設計そのものを見直そうという発想が出てきます。

  • End-to-End自動運転技術(設計思想の革新)
    センサーからの入力から車の制御出力までを、ひとつの巨大なAIモデルでまるごと学習・実行してしまうアプローチです。たとえばカメラ映像などを入力すると、ディープラーニングがそれを統合的に解釈して、アクセルやハンドルの操作量を直接計算する、というイメージです。従来のモジュール型では認識→判断→制御の各段階を個別に開発・調整する必要がありましたが、End-to-Endなら全体をひとつのモデルとして学習するので、すり合わせの手間が減り、実際の走行データから直接学べる、という効率面のメリットがあります。

【開発・運用プロセスの革新】

システムの設計に加えて、開発から運用までの各工程そのものを自動化・効率化する技術も重要です。

  • データ・シナリオ生成技術(検証工程の効率化)
    AIが新しい走行データや、現実ではめったに出会わない危険なシナリオ(急な飛び出し、悪天候の複雑な交差点など)を自動で生成する技術です。これまでは実際に車を走らせてデータを集めたり、人手でテストシナリオを書いたりする必要がありましたが、この技術があればその手間を大きく減らせます。シミュレーションの質も上がり、開発のサイクルを短くしつつ、検証の抜け漏れも減らせます。
  • シミュレーション技術(運用工程の自動化)
    仮想空間のなかで自動運転システムをテスト・検証する技術です。実際の路上での走行実験にかかる膨大なコストやリスクを抑えつつ、めったに起きない危ない場面なども効率よく検証できます。最近は、さきほどのデータ・シナリオ生成技術と組み合わせることで、より現実に近い多様な状況を自動で生成し、大規模に検証できるようになってきました。
  • AI/ML運用技術/MLOps(運用工程の自動化)
    開発したAIモデルを多くの車に展開し、その性能を監視しながら改善し続ける――実用化したあとの運用プロセスを自動化・効率化する技術です。実走行データの収集、モデルの再学習、新バージョンの配信(OTA2更新)、性能監視という一連の流れを自動化することで、開発と運用を切り離さずに、継続的にシステムを改善していけます。データを起点にした開発を、大規模かつ継続的に続けるための土台として、ますます重要になっています。

【協調による交通システムの革新】

  • V2X技術/Vehicle to X(車を超えた協調)
    車が、他の車(V2V)や道路インフラ(V2I)など、あらゆるものと通信する技術です。1台のセンサーだけでは見えない死角の情報や、さらに先の交通状況を共有できるので、それぞれの車が個別に判断する(局所最適)のではなく、交通システム全体として安全性と効率を高める(全体最適)ことができるようになります。

3.プレイヤータイプで異なる「向き合い方」

自動運転に取り組む主要なプレイヤーは、「伝統的OEM」「新興OEM」「技術供給型IT企業」「サービス提供型企業」の4タイプに分けられます。それぞれが自分のビジネスモデルを映すように、まったく違うアプローチをとっています。各プレイヤーが2つの流れにどう向き合っているのかを、特許の出願傾向も見ながら、解説します。

全体像を整理したのが図1です。たとえば伝統的OEMは、車というハードウェアの技術や知見を活かして、個別機能の高度化を軸にしつつ、開発の効率を上げるために「開発・運用プロセスの最適化」も選択的に取り入れています。一方、新興OEMはAI技術という優位性を持つ分野に集中しており、またOTAでの継続的なアップデートを支える運用の土台づくりにも力を入れています。こんなふうに、各社の戦略の違いを念頭に置きながら、1つずつ見ていきましょう。なお、これから出てくる特許の件数は、細かい数字を競うというより、数字の向こうにある「各社らしさ」を感じ取るための手がかりとして眺めていただけたらと思います。

図1 プレイヤータイプ別 2つの流れに対する技術戦略

3-1. 伝統的OEM ― ものづくりの土台に、自動運転を載せていく

Toyota、Ford、Hyundaiといった伝統的OEMは、車をつくって売るのが本業です。だからこそ、ハードウェア技術にソフトウェア技術を融合させて製品の付加価値を高める「統合戦略」をとっています。言いかえると、「モノづくり」で培ってきた思想と強みを土台にして、そこに自動運転という新しい技術をどう組み込み、クルマをどう進化させるかという発想です。技術開発では、車というハードの個別機能を磨くことを中心にしつつ、開発・運用のスピードや効率を高めるプロセス最適化技術にも手を伸ばしているという構図です。

  • 機能高度化技術 ― ハードの強みを活かす
    2020年あたりから、伝統的OEMは車の付加価値を上げるために、一つひとつの部品や機能の性能・精度を高めることに力を入れてきました。いまはレベル2の自動運転車の普及やレベル4の実用化を控え、センサーフュージョンや計画生成といった自律走行まわりの技術、そしてそれを支えるクルマの知能化技術の開発が活発になっています。
    特許の出願データを眺めてみると、2020年を境に件数が増え、その後は波がありながらも毎年コンスタントに出願が続いています。なかでも目を引くのが2024年の急激な伸びです。これだけで断言はできませんが(2025年以降の動きも見てみたいところです)、開発がいよいよ熱を帯びてきているのが想像できます。伝統的OEMの特徴としては、他のタイプに比べて幅広い技術にバランスよく出願しているのが見て取れます。とりわけ2024年に伸びたのが計画生成技術。適切なルートと走り方を判断する技術で、公道での安全な走行をめぐる開発競争の熱がにじんでいるように見えます。
  • プロセス最適化技術 ― 安全性と開発効率に効くところを、選んで使う
    伝統的OEMは、ハードとソフトを融合させたSDV3への移行を見据え、強みであるハードウェア開発のプロセスにソフトウェア開発を取り込み、設計から運用までの流れ全体を高度化・効率化しようとしています。
    特許の件数で見ると、個別機能の技術に比べれば少なめですが、それでも2019年以降はおおむね50~80件ほどが出願されています。なかでも多いのがV2X技術です。高い安全性を実現するには、自分の車1台だけで考えるのではなく、他の車や交通インフラも含めた「交通環境全体」でとらえたほうが、効率よく安全性を高められるという発想です。シミュレーション技術の特許もコンスタントに出ています。かつては実車でのテストが中心でしたが、仮想空間でシミュレートすれば、現実では再現しづらい環境も含めて、あらゆる場面のテストを何度でも手軽に試せます。開発のスピードと効率を上げ、全体のプロセスを最適化できるのが魅力です。

図2 伝統的OEMの特許件数

3-2. 新興OEM ― ソフトを主役に、売ったあとも進化させる

Tesla、NIO、BYDといった新興OEMも、いまのところ車を売るのが主なビジネスである点は伝統的OEMと同じです。しかし、その戦い方は違います。彼らはソフトウェアを中心に車を開発し、OTAで頻繁に機能をアップデートしています。つまり「売って終わり」ではなく、買ったあとも価値が育っていくといった、持続的な価値提供を目指しているのが特徴です。
このソフト中心の姿勢は特許データにもはっきり表れていて、出願の総数では伝統的OEMに及ばないものの、特定のソフトウェア技術に的を絞った「選択と集中」が目立ちます。

  • 機能高度化技術 ― 自動運転の「知能」に一点集中
    新興OEMは、認識や計画といった自動運転の中核機能にリソースを集中させる傾向があります。累計では動きが見えにくいのですが、2024年の単年データを見ると、Teslaが「AIアルゴリズムおよびチップ」分野での出願を増やしているのが確認できます。単年の数字なので大きな流れと言い切るのは早いですが、姿勢の一端がのぞいているようで興味深いところです。これは、LiDARに頼らずカメラ中心でソフトを磨き、必要なハードは自社で設計・最適化する「垂直統合」を重視している姿勢のあらわれ、と読むこともできます。
  • プロセス最適化技術 ― ビジネスモデルを支える運用の土台として
    ソフト中心・OTA前提という彼らのビジネスでは、全体最適型の技術は、認識や計画といった機能を継続的に更新していくための「運用の土台」として位置づけられているように見えます。特許データでは、この分野の件数はいまのところそれほど多くありませんが、他社との差別化を真っ向から狙うというより、ビジネスモデルを下支えする基盤として地道に取り組んでいる、という見方もできそうです。たとえば、前章で紹介したMLOpsは、多くの車から収集したデータをモデル改善につなげ、更新を配信していく開発サイクルの土台になります。これは、彼らのビジネスモデルととても相性のいい取り組みです。
    こうしてみると、新興OEMは伝統的OEMとは異なるアプローチをとっているようです。機能高度化技術では認識・計画といった中核機能に重点を置き、プロセス最適化技術はモデルの更新・配信を支える運用の土台として活かす。中核機能に絞り込みつつ、それを回し続けるための基盤を整えるといった、ソフト中心の組み立て方が見えてきます。

図3 新興OEMの特許件数

3-3. 技術供給型IT企業 ― 自分では車をつくらず、技術を「プラットフォーム」として配る

BaiduやHuaweiといった技術供給型IT企業16社の特許件数をのぞいてみましょう。彼らの特徴は、自社では車をつくらず、開発したコア技術をプラットフォームとして様々な企業に提供することです。特許の傾向も他のプレイヤーとは少し違っていて、どこに目を向けているかに彼ららしさがうかがえます。ここから件数の増減については、集計の範囲や分類のしかたで見え方が変わる部分なので、あくまで「こんな傾向が見えるかも」という温度感で読んでみてください。

  • 機能高度化技術 ― 出願の顔ぶれに変化のきざし
    今回の集計だと、技術供給型IT企業の機能高度化技術の出願は、2021年あたりを境に減り気味に見えます。とはいえ、これは「開発をやめた」という話ではなさそうです。各社の出願戦略の見直しや、集計範囲・分類のクセ、技術が成熟して出願ペースが落ち着いてきたことなど、様々な理由が考えられます。いまのところは「出願の構成が変わってきているのかもしれない」くらいに考えて、これからも見守っていきたいところです。
  • プロセス最適化技術 ― プラットフォームの価値を最大化する投資
    2023年まで増加傾向。2024年は減少していますが、特許公開のタイムラグの可能性もあり、なお見守りたいところです。End-to-End、シミュレーション、MLOpsといった、プラットフォーム運用にかかわる領域の比重が高まっている可能性がうかがえます。たとえばBaiduは、検索エンジンやAI開発で培った「大規模データの扱い」と「モデル運用の実務」を武器に、データを起点にシステム全体を最適化する領域での取り組みが目立ちます。実際、今回の集計範囲では、End-to-End自動運転の出願で上位に顔を出していました。こうした次世代アーキテクチャーへの集中投資や、シミュレーションやMLOpsへの投資は、プラットフォームの信頼性を高め、価値を継続的に向上させていくことに直結します。
    まとめると、技術供給型IT企業は、機能高度化技術とプロセス最適化技術の出願の構成が変わりつつあるように見え、なかでも全体最適型の比重が増しているようです。これはプラットフォーム運用への関心が高まっている、と読めます。伝統的OEMや新興OEMとは目線の重心が違うのが面白いところです。ただし、ここもサンプルが多くはないので、解釈には幅を持たせて、引き続き眺めていきたいところです。

図4 技術供給型IT企業の特許件数

3-4. サービス提供型企業 ― 「実際に走行できること」が、すべての勝負どころ

最後は、Waymo、DiDi、Zooxなど、自動運転サービスそのものを軸にするサービス提供型企業7社です。彼らはロボタクシーや物流サービスで収益を上げるのがビジネスモデルなので、勝負どころは、実際の路上で安全に、効率よく走れる運行能力そのものにあります。

  • 機能高度化技術 ― 自社の運行能力を磨くことに特化
    彼らの特許は、都市部での安全走行に直結する技術が中心です。企業別に見ると、「計画生成技術」ではWaymoやZoox、「SLAM」ではDiDiやZooxが、それぞれ出願数の上位にいます。計画生成は、検知結果と自分の位置をもとに、衝突回避や車間維持、優先判断を満たした走行ルートと速度の組み立てを決める工程で、危険な接近や急ブレーキを減らすことに直結します。SLAMの精度は、レーンのはみ出しや縁石への接触を抑えるなど、基本的な安全マージンの確保に効いてきます。
    このように、運行に直結する領域を深める姿勢は、全体最適型に比重を移している技術供給型IT企業とは方向性が異なります。とはいえ、実運用データの再現検証やモデルの更新・配信は両者の共通の接点で、協業の可能性が高い領域でもあります。たとえば、走行ログを使って交差点の出来事を再現し、計画生成を評価する役割と、MLOpsの基盤で段階的に配信して性能を監視する役割を分担するといった使い分けも想定できます。
  • プロセス最適化技術 ― サービスの質を支える実用的な道具として
    彼らにとって全体最適型の技術は、サービスの質と規模を広げるための、とても実用的な道具です。彼ら最大の財産は「実運用データ」です。これを効率よく価値に変えていくには、前章で紹介した全体最適型の技術が欠かせません。たとえば、MLOpsは、日々集まる膨大な実運用データをAIモデルの継続的な改善につなげるうえで、有効な手段になります。

    こうしてみると、サービス提供型企業は、機能高度化技術では自社の運行能力に直結する計画生成やSLAMに特許を集中させる一方、プロセス最適化技術は「実運用データ」という財産を活かすための実用的な道具として、ビジネスを回すうえで欠かせない役割を担っていると言えそうです。

図5 サービス提供型企業の特許件数

おわりに ― 2つの流れが織りなす、自動運転のこれから

ここまで、機能高度化技術とプロセス最適化技術という2つの流れを軸に、特許データものぞきながら、自動運転開発の現在地を眺めてきました。

見えてきたのは、各プレイヤーがそれぞれのビジネスモデルに合わせて、まったく違う戦略をとっているという「戦略の多様性」でした。伝統的OEMはハードの知見を活かして安全技術を着実に固め、新興OEMは認識・計画といった中核機能を磨きつつ、機能更新までを設計と運用に組み込んでいます。技術供給型ITはEnd-to-End/シミュレーション/MLOpsといったプラットフォーム領域の比重を上げ、サービス提供型は計画生成・SLAMといった運行直結の技術を深め、実運用データの活用で着実に成果を積み上げています。力を入れる場所も、改善の進め方も、プレイヤータイプごとにかなり異なっていることが分かりました。

そして、これから先を考えると、機能高度化技術とプロセス最適化技術を「両輪」として回せるかどうかが、ひとつのカギになりそうです。それは、次のような理由があるからです。

- 個々の機能の精度が上がるほど、シミュレーションやシナリオ生成の妥当性も増して、検証の抜けが減っていく

- データ収集→再学習→OTA配信までの土台が整うほど、改善を回せる回数が増えて、個々の機能の更新も進みやすくなる

- どちらか片方だけだと伸びしろが残りやすく、データ共有・再現検証・配信といった接点をどう設計するかが、かなり効いてくる

とはいえ、両方をやり切るのは簡単ではありません。ハードの統合や安全設計に必要な力と、データ基盤やアジャイルな運用に必要な力では、求められる資産も組織の文化もずいぶん違うからです。すべてを単独で抱え込もうとすると、かなりの負荷になります。だからこそ、これからはどの接点で、誰が何を担うのかをうまく切り分け、現場で起きたことを開発の改善につなげていくことが、自動運転の今後の技術開発や開発プロセス改革の焦点となると考えられます。

  1. 1LiDAR(Light Detection and Ranging): レーザー光を対象物に照射し、その反射光を測定することで、対象物までの正確な距離や形状を3次元で把握するセンサー技術。カメラやレーダーに比べて高精度だが、高価であることが課題とされる。
  2. 2OTA(Over-the-Air): 無線通信を経由して、ソフトウェアのアップデートや新機能の追加を行う技術。
  3. 3SDV(Software-Defined Vehicle):ソフトウェアによって車両の機能や性能が定義され、購入後もアップデートによって価値が向上していく自動車。

プロフィール

  • 田村 優奈のポートレート

    田村 優奈

    TMXコンサルティング部

    2023年NRI入社。自動車業界を中心に業務改革・ITマネジメントのコンサルティングに従事。近年は自動運転AIの開発支援や安全性に関する調査にも取り組む。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。