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デジタル化と企業経営

執行役員 中島 久雄

2018/02/19

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デジタル化への対応が日本企業にとって大きな経営課題となっている。特に自動車産業においては、コネクテッド(デジタル化により自動車が外部環境とつながって生み出す新たなサービス)や自動運転の変化の波にいかに対応するかは、企業の生き残りにもかかわる重要な課題である。

 

デジタル化でスマートに「進化」する消費者のニーズ

 

まずは、顧客の視点からデジタル化を見てみたい。デジタル化は、消費者の「保有」から「利用」へのニーズの移行を大きく加速する。野村総合研究所(NRI)が実施している「生活者1 万人インターネット調査(2017年8 月)」においても、自動車をシェアリングでもよいという層の比率は20%にまで達した。もちろん、都市部における駐車場確保難や購入および維持管理のコストがかかるといった要因は大きい。しかし、スマートフォンの普及とデジタル化により、カーシェアリングなどのサービスが安価で非常に使いやすくなったことも影響している。日本の自動車の平均稼働率は1.9〜2.6%( 1日あたり28〜37分稼働)でしかない。デジタル化は、世の中にある不稼働資産をシェアリングによってリーズナブルに提供することで、消費者を「利用」に大きく導く力があるのだ。

 

さて、デジタル化がさらに進展すれば、「利用」の先にある消費者ニーズのキーワードは何になるのか。それは「進化」ではないかと思う。先日お会いした中国のある電気自動車メーカーの社長は、「電話はフィーチャーフォンからスマートフォンへと大きく変化した。これからは、自動車もスマートカーに変化していく」と力説していた。彼の意図は、消費者は多くのサービスやフィーチャー(機能)があらかじめ搭載された製品を購入前にあれこれ選ぶよりも、買った後でサービスや機能を増やし、自分好みにカスタマイズしていくことを求めている、というところにある。すなわち、消費者の次のニーズは「スマート(自分に合わせて進化する賢さ)」である。この中国メーカーは、今まさに「スマートカー(進化する車)」をコンセプトに自動車開発を進めている。

 

企業は販売後もサービスを「進化」させることが重要に

 

では、企業は、このデジタル化の流れとそれに伴う消費者の変化にどう対応すべきか。「モノづくり」から「サービス」への転換は必須であり、既に現実化している。特に自動車メーカーは、デジタル化と同時期に起こっている電気自動車化がこのまま進展すると、これまでのように「モノづくり」の領域で付加価値を得ることがますます困難になる。しかも前述の「保有」から「利用」が本格化すると販売台数も伸びない。まさに待ったなしの状況である。

メーカーは、モノを販売した後も引き続き顧客との接点を維持・深耕して、そこでのサービスで収益を得ることがますます重要になる。これまでも自動車メーカーは、メンテナンス、ファイナンス、保険などの自動車の周辺に関する「サービス」を充実させてきた。カーナビなど自動車固有のメディアを通じたプッシュ広告や音楽配信などの新たなサービスについても挑戦してきた。

 

デジタル化は、その顧客接点をより密なものにする強力なツールとなる。「いつ、どこで、誰が、どんな運転をしたか」の膨大なデータを蓄積し、そのデータ分析に基づき、消費者に新たな価値を提供してくことが可能となる。たとえば、運転履歴や自動車の状況により故障を予測して、タイムリーに事前メンテナンスを提供するプリメンテナンスサービスや、事故率を予測してその人に応じた自動車保険サービスを提供するテレマティックス保険。今後は、きちんと安全に運転すれば、車検代や自動車保険も安くなる。まさに消費者自身の行動に合わせて「進化」するサービスとなる。

 

「データ・アセット」の共創が戦略の鍵になる

 

今後は企業にとって、どれだけ有益で差別化された「データ・アセット(企業が独自で収集することのできるデータ資産)」を持つかが、競争上、大変重要になってくる。前述の運転履歴と事故との関係のデータ・アセットは、損害保険会社にとっては喉から手が出るほど欲しい情報であろう。このデータ・アセットそのものを提供して対価を得る企業も出てくると考えられる。

このような優位性のあるデータ・アセットは、企業1 社で作り得るのであろうか。また、その膨大なデータを分析し、消費者を魅了するような新しいサービスの開発は、大企業の閉じられた環境で次々と起こり得るのであろうか。米国や欧州を見る限りは、戦略的な提携グループを作り、その中でデータをうまく「共有」するだけでなく、そこでの新サービス開発も、オープンイノベーション環境を活用して、うまく「共創」している企業が多い。

 

デジタル化がグローバルの現象である以上、日本企業は、これまで必ずしも上手でなかったデータ規格を国際標準化するための取り組みや、企業を超えたイノベーション活動を戦略的に行っていく必要があるだろう。日本企業にとって、大きなチャレンジである。

 

(知的資産創造12月号 MESSAGE)

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