フリーワード検索


タグ検索

注目キーワード
業種
目的・課題
専門家
国・地域

NRI トップ NRI JOURNAL もう一つのIoTセキュリティ ―― Industry4.0をサイバー攻撃から守る

NRI JOURNAL

未来へのヒントが見つかるイノベーションマガジン

もう一つのIoTセキュリティ ―― Industry4.0をサイバー攻撃から守る

NRIセキュアテクノロジーズ 勝原 達也

2018/06/21

  • Facebook
  • Twitter
  • LinkedIn

近年、サイバー攻撃により工場や発電所などの大型プラントに影響がでる事例が多発しています。2015年12月と2016年12月、ウクライナでは変電所に対するサイバー攻撃を原因とする停電が発生して大騒ぎとなりました。IoT(Internet of Things)が当たり前の時代を迎えた今、このようなOT(Operational Technology)の領域におけるセキュリティをどのように考えるべきかについて、NRIセキュアテクノロジーズ(以下、NRIセキュア)の上級セキュリティコンサルタントである勝原達也に聞きました。

 

IoTの浸透で生まれた、新たなサイバー攻撃のリスク

 

あらゆる“モノ”をインターネットにつなぐ「IoT」(Internet of Things)の技術は、すでにさまざまな領域で利用され始めています。身近なところでは、フィットネスバンドや腕時計の形をしたウェアラブルデバイス、ネットワーク経由の操作やデータを取得することができる家電製品、などが挙げられます。車両の状態や周囲の道路状況などさまざまなデータをセンサーにより取得し、ネットワークを介して集積・分析することのできるコネクテッドカーもIoTの一つでしょう。

 

このように私たちの身近に存在するIoTがある一方、普段の生活では目にすることがない、もう一つのIoTの世界もあります。工場や発電所などの大型プラントで使われるIoTです。特に製造業では、このIoTのテクノロジーを活用した新たな取り組みを「Industry 4.0」(第4次産業革命)と呼んでいます。勝原は、工場などの産業・製造・インフラ設備などでIoTを利用するメリットを次のように説明します。

 

 

「IoTの技術を使い、機器の故障を事前に予知することができれば、故障する前に部品を交換するといったことが可能となり、工場のラインが止まる影響などを最小限にとどめられます。また、設備の利用を効率化して生産性を極限まで高める、あるいはIoTで取得したデータを分析して新たな価値を生み出すといった活動も考えられます」

 

さらに現在では、工場などに配備するIoTデバイス、あるいは制御システムをインターネットにつなぎ、クラウドサービスなどとして提供されている豊富なコンピューティングリソースを利用して新たなメリットを生み出すといった取り組みも進められています。勝原は、ここで意識すべきはセキュリティだと提言します。

 

「従来、工場などの制御システムは外部ネットワークとは切り離して運用することでセキュリティが確保されていると考えられてきました。一方、現実的には設定ミスや運用の都合で外部ネットワークと『うっかり』繋がってしまい、その経路からマルウェアやランサムウェアの脅威にさらされるといったセキュリティ事故事例も少なくありません。更にIoTを活用した効率化や高付加価値化を実現するために、制御システムの一部がインターネット等の外部ネットワークに接続されるケースが増えつつあります。そのため、制御システムが、設定ミスやぜい弱性を狙うサイバー攻撃にさらされるリスクが高まってきています。」

 

ITとは異なる考え方が求められるOT領域のセキュリティ

 

制御システムなどを管理・運用する技術のことをOT(Operational Technology)と呼びますが、このOTにおけるセキュリティはITのそれと大きく異なると勝原は指摘します。

 

「ITの世界は、金融資産など多く個人情報を扱うこともあり、機密性が重視されることが多いですが、OTでは可用性が重視されます。電気や水道のような社会インフラにかかわる事例も多く、システムを止めない、正常に動作し続けることが最も重視されます。もう1つ重要な観点は安全性です。OTにかかわる方々は数十年単位で安全性を突き詰めてきました。可用性、安全性を軽視してOTのセキュリティを考えることはできません」

 

このような背景から、ITとOTではセキュリティに対する取り組み方が大きく異なります。分かりやすい例として、システムのアップデートやウィルス対策ソフトの導入が挙げられます。制御システムは稼働期間が10~20年と極めて長く、そのためWindows XPなど古いOSも使われています。ITの世界であれば、古いOSはセキュリティ上のリスクにつながる恐れがあることから、早急に新しいOSへアップデートすべきだと言われます。しかし、OTの場合OSをアップデートすれば機器の制御などのために使われているソフトウェアが動作しなくなる恐れがあるため、簡単にアップデートすることはできないのです。また、マルウェアに対応するためにウィルス対策ソフトを制御システムのOSにインストールすると、誤動作だけでなく処理遅延を引き起こす可能性があります。機器同士が「ミリ秒」レベルのリアルタイム連携をしているような環境では、僅かな処理遅延が正常稼働を妨げる原因になる可能性があります。セキュリティ対策により可用性が失われるようでは本末転倒です。

 

このようなOTに対するセキュリティについて、勝原は「セキュリティの原則に基づいて考えれば、ITと同様に機器のOSアップデートやウィルス対策ソフトの導入が一番です。ただ、それが難しい現実もあるため、実効性のあるセキュリティ対策を多層的に講じてリスクをコントロールすることが必要です。一言でOT領域と言っても、業界によって特性が大きくことなりますので、それも考慮することが大切です。このようにITとは異なる考えでセキュリティ対策に取り組むことが求められます。」と語りました。

 

事実、NRIセキュアにはマルウェアが感染して生産ラインが停止した、あるいはマルウェアを使った不正アクセスを観測したといった相談がすでにいくつも寄せられています。工場などでIoTに取り組むのであれば、サイバー攻撃を防ぐセキュリティ対策についても同時に検討していくことで、安心してIoTを活用して得られるメリットを追求していけるのではないでしょうか。

 

 

 

  • Facebook
  • Twitter
  • LinkedIn
NRIジャーナルの更新情報はFacebookページでもお知らせしています

お問い合わせ

株式会社野村総合研究所
コーポレートコミュニケーション部
E-mail: kouhou@nri.co.jp

ACCESS RANKING