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コラム 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight

米政府が企業の5G投資を支援

2019/04/15

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欧州で行き詰まる米政府による中国製品締め出し

トランプ米大統領は4月12日に、5G(第5世代移動体通信)規格や地方でのブロードバンド・インターネットの普及拡大に関して、連邦通信委員会(FCC)のパイ委員長とともに、ホワイトハウスでイベントを開催した。その場でトランプ大統領は、「5Gは米国が勝たなくてはいけない競争だ」、「われわれは5Gのリーダーでありたい」と強調し、米政府が民間企業の投資を後押しする姿勢を突如打ち出した。

具体的には、5G基地局設置などへの政府補助金拡大を想定しているとみられる。実際、FCCは、地方の5G整備に補助金を支給するため204億ドルの基金を設置し、民間投資の呼び水とする方針を打ち出した。

一般に、民間活動への介入をできるだけ避ける傾向が強い米国政府が、こうした決定を突如打ち出したのはやや意外だが、その背景には、5Gで中国に出遅れたとの強い危機感があるだろう。例えば、5G基地局数を見ると、中国では1万人当たり14.1基であるのに対して、米国では4.7基と中国の3分の1にとどまっている(デロイトトーマツ調査、2018年8月時点)。

米政府は、5G関連の機器を巡り、情報漏れの危険があるとして、友好国に中国製品を採用しないよう迫り、国際市場から中国製品を締め出そうとしてきた。その背景には、5G分野での中国に対する米国の劣勢を挽回する狙いもある、と指摘されている。米国政府の主張に対して、中国通信機器大手ファーウェイ(華為技術)は、自社の通信機器はどこよりも安全だとし、それに強く反論している。

ところが、こうした米国の戦略は欧州で行き詰まりを見せている。英国やドイツなど一部の同盟国が同調せず、中国に対する包囲網の構築は思うように進んでいないのである。これを受けた次の戦略として、米政府が米国企業の5G投資を後押しすることを決めたという側面があるのではないか。

政府補助金では5G分野での挽回は難しいか

ただし、トランプ大統領は、5Gの国有化には反対する考えを示している。「米国のやり方は民間主導に尽きる。政府が多額の出費をすることはない。政府が主導すると良さや速さが損われてしまう」と語っている。政府が民間経済活動にできるだけ介入すべきではないという、米国での伝統的な考え方を受けた発言だ。通信網の整備は民間企業主導でなされるべきであり、政府の補助金はその呼び水に過ぎないとの考えだろう。しかし、基地局の設置を中心に、米国では5G関連投資に2,750億ドル(約30兆円)が必要といわれている。この規模に比べて、FCCが今回打ち出した基金の204億ドルはかなり小さく、果たして呼び水の役割を果たすことができるかどうか疑問だ。

中国企業がかなり以前から、5G関連の特許取得で世界を席捲し、また基地局などの投資を拡大してきたことを踏まえると、こうした米国政府の戦略だけで、5G分野での中国に対する出遅れを一気に挽回することは難しそうだ。

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