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3回目の緊急事態宣言発令と国内経済への打撃

2021/04/21

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時短・休業要請の範囲拡大が必要

大阪府は20日に新型コロナウイルス対策本部会議を開いて、改正新型インフルエンザ対策特別措置法に基づく「緊急事態宣言」の発令を政府に要請することを、正式に決定した。また、東京都と兵庫県も週内に政府に対して緊急事態宣言の発令を要請する可能性が高まっている。政府は、大阪府、東京都、兵庫県の3都府県に3回目の緊急事態宣言を発令する方針を固めたとされる。

変異ウイルスの広がりによって、従来型と比べてウイルス感染力が高まり、また重症化のスピードが高まったことが、現在の感染第4波の大きな特徴だ。さらに、一部地域で出されている「まん延防止等重点措置(まん延防止措置)」の効果が見えないことから、政府は3回目の緊急事態宣言の発令を余儀なくされているのである。現在出されているまん延防止措置と緊急事態宣言の法的な影響力には大差なく、そのため、3回目の緊急事態宣言の感染抑制効果についても懐疑的な見方は強い。

しかし市単位でなく都道府県単位が対象区域となる緊急事態宣言のもとで、その対象区域が拡大していけば、まん延防止措置と比べて感染抑制効果は高まり、その一方で経済への打撃はより大きくなるだろう。

感染抑制の観点からは、2回目の緊急事態宣言とそれに続くまん延防止措置では、飲食業に対する時短要請が対策の柱であった点に問題があったのではないか。飲食に限らず、人出が減少していないことが、感染拡大の背景にあると考えられる。

感染抑制にはまず人流を大きく減らすことが必要であり、そのためには飲食業だけでなく、人々の外出を促すより幅広い業種での時短・休業要請を、今度こそ実施すべきだろう。

3回目の緊急事態宣言の経済損失は3都府県合計で1兆1,560億円

現在出されているまん延防止措置による経済損失は、合計で7,750億円(年間GDP比0.14%)と試算できる(コラム「適用地域の拡大が続くまん延防止措置の経済損失」、2021年4月16日)。

これに対して、大阪府に1か月間の緊急事態宣言が発令される場合、2,730億円(年間GDP比0.05%)の経済損失が生じる計算となる。

また、大阪府に加えて、東京都、兵庫県の3都府県に1か月間の緊急事態宣言が発令される場合には、合計で1兆1,560億円(年間GDP比0.21%)の経済損失が生じる計算だ。また、その場合、失業者は4.58万人増加する。

経済損失は関西圏と関東圏の合計で1兆9,320億円

ただし、緊急事態宣言の対象区域はこの先さらに拡大する可能性が高まっている。そこで、大阪府に兵庫県、京都府を加えた関西圏、東京都に神奈川県、千葉県、埼玉県を加えた関東圏について、それぞれ同様の計算をした。

関西圏に1か月間の緊急事態宣言が発令される場合、5,080億円(年間GDP比0.09%)の経済損失が生じる計算となる。また、関東圏に1か月間の緊急事態宣言が発令される場合には、1兆4,240億円(年間GDP比0.26%)の経済損失が生じる計算だ。合計の経済損失は1兆9,320億円となる。また、その場合、失業者は7.66万人増加する。

経済損失額の試算値は、2回目の緊急事態宣言時の試算値6.28兆円の3割程度にまで増加することになる。その結果、国内経済は今年1-3月期の「二番底」に続いて4-6月期には「三番底」とも言えるような厳しい状況となりそうだ。

ただし、変異ウイルスの影響を受けた感染第4波を抑えるには、緊急事態宣言は必要な措置である。さらに、単純に緊急事態宣言を再発令するのではなく、感染抑制により効果的な措置を加えることが欠かせない。時短・休業要請の対象を飲食業から、百貨店、テーマパークなどにもさらに拡大し、人流を一気に抑えこむことが重要だ。規制の対象業種と経済的支援の対象業種を同時に拡大する必要があるだろう。

(図表)3回目の緊急事態宣言発令による経済損失推計

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