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日銀政策決定会合と物価見通しの上方修正

2022/04/28

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物価上昇のメカニズムに質的変化は見られるか

4月27・28日に開かれる日本銀行の金融政策決定会合では、円安阻止に向けたイールドカーブコントロールの運用方針の柔軟化といった、政策修正は見送られると見ておきたい(コラム「日本銀行は政策正常化の絶好のチャンスを逃す」、2022年4月25日、「日銀が決定会合当日まで連続指値オペの延長を発表」、2022年4月26日)。他方、展望レポートでは、2022年度の消費者物価(除く生鮮食品)見通し(政策委員の予測中央値)は、1月の+1.1%から+1%台後半へと上方修正される見通しである。

この物価見通しの上方修正は、単にこの間、原油高、円安が進んだことで、原材料コストが一段と上昇したことの影響を反映したものにとどまるのか、それとも川上での物価上昇が消費者物価に転嫁される、いわゆるパススルーに変化が見られるなど、質的な変化を反映しているのかを見極めることが重要となろう。

前回1月の展望レポート(BOX2 原材料コスト上昇と消費者物価)では、原材料コストなどの消費者物価への転嫁は緩やかなものにとどまる、との見方を日本銀行は確認している。そして、消費者物価への転嫁は食料品価格に偏っている点を指摘した。他方、金属・金属製品の価格などは企業物価を大きく押し上げているものの、消費者物価への影響は小さいと分析している。

さらに、感染症の影響が和らぎ、人流が回復すれば、小売業ではセールの実施など価格競争が再び強まり、価格転嫁はより難しくなるとしている。

企業の中長期物価見通しの上振れをどう評価するか

他方で、価格転嫁を促す要因として、物価上昇に対する企業のセンチメントが高まってきていることが指摘された。「景気ウォッチャー調査」のコメント情報から日本銀行が作成した物価センチメント指数が、足元で急上昇している点を紹介し、このことが、価格転嫁を加速させる可能性に日本銀行は言及している。

別途日本銀行が公表している消費者物価の加重中央値や最頻値は、最新の3月時点においても、それぞれ前年同月比+0.2%、+0.3%と過去と比べて特段上振れてはいない。この点から、足元の物価上昇は、エネルギー関連や飲料・食料品など一部の財・サービスに偏っており、物価上昇は依然として広がりを欠いていると判断できるだろう。このため、日本銀行も原材料コスト上昇の消費者物価への転嫁は加速せず、原材料コスト上昇の一巡とともに、消費者物価上昇率も安定を取り戻すとの見通しを今回の金融政策決定会合及び展望レポートでは再度確認するのではないか。

ただし、前回の決定会合後に公表された日銀短観(3月調査)で、企業(全規模全産業)の5年後の消費者物価見通しが+1.6%まで上方修正されたことは、驚きであった。こうした企業の物価見通しの上方修正、日本銀行が言う物価上昇に対する企業のセンチメントの高まりが、原材料コスト上昇の消費者物価への転嫁を加速させ、持続的な物価上昇率の上振れにつながるリスクが高まっていないのか、28日の日本銀行の説明に注目したい。

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