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経済環境悪化で郊外白人女性が共和党支持に傾く(2022年米中間選挙):選挙後に米国金融市場は正念場か

2022/11/04

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郊外の白人女性の民主党支持は8月以降27%ポイント低下

11月8日の投開票に向け、米国の2022年中間選挙はいよいよ大詰めを迎えている(コラム「米国中間選挙でインフレが民主党の強い逆風に:選挙後も米国のドル高容認姿勢はしばらく継続」、2022年10月31日)。

ウォールストリート・ジャーナル紙の最新調査(10月22~26日)の結果によると、前回2018年の中間選挙では、有権者全体の約2割を占め、当時の野党・民主党が下院での過半数の議席を奪還する原動力となった郊外の白人女性は、今回の中間選挙の終盤戦では、共和党支持に大きく傾いている。その結果、民主党が少なくとも下院で過半数の議席を失い、ねじれ状態に陥る可能性が高まってきているようだ。

連邦議会選での支持政党に関する質問では、郊外の白人女性の共和党支持が民主党支持を15%ポイント上回った。民主党は前回8月の調査時点から、実に27%ポイントも支持を失ったことになる。

郊外白人女性の支持が一気に共和党へと流れた背景には、インフレや景気悪化への懸念など、経済環境への不満の高まりがある。郊外の白人女性の54%は、米経済がすでにリセッション入りしていると考えており、経済が間違った方向に向かっているとの回答は74%にも達した。前回8月時点での、それぞれ43%、59%から大幅に回答比率が高まったのである。

民主党は、有権者の関心を経済問題から中絶権利の問題に逸らそうとしてきたが、それは上手くいっていない。人工妊娠中絶権利を覆す連邦最高裁判所の判断を受けて、今年夏場には民主党への支持が高まっていたが、有権者は中絶権利の問題への関心を急速に失っているようだ。

ちなみに、2024年の大統領選で民主党のバイデン大統領と共和党のトランプ前大統領が再び一騎打ちになる場合には、郊外の白人女性の41%がバイデン氏、52%がトランプ氏にそれぞれ投票すると回答している。前回8月の調査ではバイデン氏が55%、トランプ氏が39%であったが、最新調査では両者の支持が逆転した。2024年の大統領選でも、バイデン大統領、あるいは民主党に逆風が吹いている。

選挙後の経済情勢は政府、FRBともにより難しい対応を迫る

選挙の行方の鍵を握る郊外の白人女性、あるいは有権者全体は、物価高と景気悪化の双方への懸念を強めている。現状では労働市場は安定しているが、有権者は先行きの景気悪化を警戒しているのである。

仮に中間選挙がもう少し後で行われていれば、米国経済は物価高と景気悪化が併存するスタグフレーションの様相を強めていた可能性がある。その場合には、民主党に対する有権者の支持はもっと低下していたのではないか。

中間選挙後は、政府、米連邦準備制度理事会(FRB)ともに、物価高とともに、景気悪化にも配慮した政策を行うことが求められる。それは現状よりもさらに複雑で難しい政策対応となるはずだ。

中間選挙の結果よりもその後の経済情勢が株式市場の強い逆風に

FRBは物価高が定着することを強く警戒しているため、景気減速の兆候が広がっても、直ぐに金融緩和に転じることはなく、高い金利水準がしばらく維持されるだろう。それが景気悪化懸念をさらに増幅させる。

このように、スタグフレーション的な状態とFRBの高金利政策とが一定期間共存することは、米国の金融市場にとっては強い逆風となる。特に株価は大きく下落しやすいだろう。

中間選挙でねじれ状態が生じれば、政治の不安定化を映して米国金融市場では、ドル安、株安、債券安のトリプル安が生じることが予想される。しかし、現状の議会勢力の下でも、バイデン政権は上院の民主党中道派勢力にキャスティングボートを握られ、綱渡りの議会運営を強いられてきた。そのため、中間選挙でねじれ状態が生じても、政治情勢がにわかに不安定性を増す訳ではなく、金融市場の悪い反応もそれほど深刻なものとはならないだろう。

しかし、中間選挙後に予想されるスタグフレーション的状態とFRBの高金利政策の共存は、米国、そして世界の株式市場にはかなりの逆風となるのではないか。

(参考資料)
"White Suburban Women Swing Toward Backing Republicans for Congress(米中間選挙 「郊外の白人女性」共和支持に傾く)", Wall Street Journal, November 3, 2022
"Republican Election Prospects Rise as Inflation Overshadows Abortion, WSJ Poll Finds(米中間選挙、共和党への支持拡大=WSJ調査)", Wall Street Journal, November 2, 2022

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