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米国2月PCE物価指数は予想通りで為替市場は動かず:米国3月雇用統計が次の注目

2024/04/01

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コアPCE物価指数の上昇率はFOMCの年末予測値に近づく

米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ時期を探る観点から金融市場が注目していた、米国3月PCE(個人消費支出)物価指数が3月29日(金)に発表された。これが市場の予想通りの結果となったことで、ドル円レートも1ドル151円台前半で大きな動きはなかった。日本の当局は、この指標を受けてFRBの利下げ観測が後退し、ドル円レートが1ドル152円を超えて円安が進む場合には、ニューヨーク市場でのドル売り円買いの為替介入も辞さない姿勢であったと考えられるが、それは先送りされた。

2月のPCE物価指数は前月比+0.3%と前月の同+0.4%から上昇率が低下した。前年同月比は+2.5%と前月の同+2.4%を上回ったが、事前予想通りだった。FRBが注目するエネルギーと食品を除くコア指数も、事前予想通りに前年同月比+2.8%と、1月の同+2.9%から鈍化した。

3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、参加者は年内3回の利下げ見通しを維持した。そして、その前提でもあるPCEコア指数の年末の予測中央値は+2.6%である。コア指数がこの水準に達するまで、あと0.2%ポイントの低下といった距離感だ。足もとで物価上昇率の低下ペースは鈍ってきてはいるものの、年末にこの予測値に達する可能性は依然として高いのではないか。その場合、FRBは、年内3回の利下げを実施する姿勢を維持するはずだ。

この指標を受けて、パウエル議長は「我々の予想とほぼ一致した」とあえてコメントしている。他方、米経済が好調なことから「利下げを急ぐ必要はない」との考えを示している。これは、5月1日の次回FOMCでの利下げの可能性が低いことを示唆するものである一方、6月12日のFOMCでの利下げの可能性は比較的高い状況と考えられる。ただし、FRB内では早期の利下げに慎重な意見もあることから、全会一致での利下げ決定とはならない可能性がある。

日本政府は1ドル152円台あるいは153円台で為替介入に踏み切るか

FRBの政策姿勢、そして為替動向を占ううえで、次の大きな注目点は、米国3月雇用統計となる。パウエル議長は、前回のFOMC後の記者会見で、失業率が予想外に上昇すれば、利下げに踏み切る可能性があると異例の表明をしている。足もとの物価上昇率が想定したペースで低下していかなくても、労働市場の軟化が確認されれば、長い目で見たインフレリスクは抑えられると判断され、利下げは正当化されるとの考えだろう。

そのため、3月雇用統計が仮に下振れれば、6月利下げの確率がさらに高まることになる。しかし、逆に雇用統計が上振れれば、6月利下げ観測が弱まり、為替市場でドル高・円安の流れを後押しすることになるだろう。

神田財務官は29日に、円安の動きは「反対方向という意味で強い違和感を持っている」と語っている。日本銀行がマイナス金利政策解除に踏み切ったにもかかわらず、為替市場で円安が進んだのは理屈に合わず、それは投機的な動きによるもの、との説明だろう。

これは乱暴な議論とも感じられるが、政府が為替介入に踏み切る時期が近いことを明確に示す発言と解釈できる(コラム「防衛ラインに達した円安:当局は介入が近いことを強く示唆:マイナス金利解除で日銀も円安阻止のより強い手段を手にした」、2024年3月26日、「円は対ドルで約34年ぶりの安値:為替介入実施の可能性が徐々に高まる」、2024年3月27日)。

米国3月雇用統計、あるいはその他の材料で円安が進む場合、政府は1ドル152円台あるいは153円台でドル売り円買いの為替介入に踏み切ると見ておきたい。その結果、少なくとも一時的には、ドル円レートは1ドル150円を下回る水準まで円高が進む可能性が考えられる。

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